Morrison Hotel

doors_morrison_hotel.jpg「人間力」とは、自分以外の他者を真に思い遣れる力のことだと実感した。ひとりひとりに本来のそういう力が蘇れば世の中は本当に変えられるかもしれない。

朝から缶詰になって人と対峙し、丸一日過ごすというのは考えようによっては相当なエネルギーを消耗するが、その分吃驚するようなプレゼントをいただけるのだから講師冥利に尽きる。もう何年もそういう生活をしてきたが、あらためて感動した。2010年がようやくスタートする。

人が一箇所に集まる時そこには何かの共通性が必ず見出される。「類は友を呼ぶ」という諺通り、似た者が集うことになる。人はそれぞれ個性を持って生まれてくるが、長い人生という迷路の中で環境の影響をもろに受け、良いにせよ悪いにせよ「金太郎飴」のような没個性的な「人」と化してしまう。特に一律化した教育のしくみに根本的な問題があるように思う。何しろ「ものさし」が一つなのである。お勉強ができれば、あるいは抜群の運動神経を誇れば周囲から評価を受け、良しとされる。一方、そういう「ものさし」に収まり切らない人は下手をすれば一切の評価を受けることなく闇に葬られてしまう。

ひとりひとりが「自分らしく」、そして「等身大」で生きられるようなシステムにならないものなんだろうか。無理をするのではなく、互いに相手を尊重し、相手を想えるような関係作りを心がけるだけで随分楽になるだろうし、組織は大きく変わると思うのだけど。

ここのところ、短いスパンでセミナーを開催しているが、毎回新しい発見、気づきがある。同じ実習をしていても「感度」の高いオーディエンスがいるだけで、場そのもののエネルギーが見事に高くなる。そういう人たちが世間一般で言うところの「評価を受けてきた」輩でないことも得てして多い。実績は大切だ。もちろん学歴も重要だ。ただし、それがあるからといって(大袈裟だが)彼らが地球規模の革命を起こせるほどの力量をあわせもっているかといえば決してそうでない。埋もれた中に隠れた才能が潜んでいるのかもしれないと思うと残念でならない。

ジム・モリスンが宇宙や自然にまつわる詩を歌ったとき、ドアーズの音楽は突如として神懸かる。有名なLight My FireやThe Endも屈指の名作ではあるが、真に心に響く音楽は「宇宙・自然賛歌」。わずか6枚のオリジナル・アルバムを遺したに過ぎない彼らだが、そのどれもが金字塔である。中でも「モリスン・ホテル」は別格だ。時折ハスキーになるゾクゾクするような妖艶な歌声。

The Doors:Morrison Hotel

Personnel
Jim Morrison(Vocal)
Robbie Krieger(Guitar)
Ray Manzarek(Piano & Organ)
John Densmore(Drums)
Ray Neopoliatan(Bass)

わずか3年強の活動期間しか持たないドアーズの円熟期の傑作。月光仮面じゃないが、疾風のように現れ、疾風のように去っていったジム・モリスンとは一体誰だったのか?

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。毎回素晴らしい内容のセミナー、お疲れさまです。
>ひとりひとりが「自分らしく」、そして「等身大」で生きられるようなシステムにならないものなんだろうか。
そのヒントは、ピアニストの世界ではなくオーケストラの世界にあると思っています。
「僕はヴァイオリンは弾けないけれど、ティンパニの名人だよ!」
「私はティンパニは叩けないけれど、オーボエが上手です!」
「自分はオーボエは吹けないけど、ホルンで皆をシビれさせられますよ!」
「俺はホルンは吹けないけれど、トランペットなら任せて!」
「我々は、トランペットみたいにカッコよく目立たないけれど、内声部を渋く支えるヴィオラが命です!」
つまりは、ピアノが上手いか下手かという「ものさし」が一つの世界ではなく、いろいろな楽器の「ものさし」で評価できる社会が理想だということを言いたいのです。
そして、交響曲全曲をほとんど休む暇もなく弾き続ける第1ヴァンオリンの奏者も、数小節吹くだけのチューバ奏者も、たった1回シンバルを叩くだけの打楽器奏者も、お互いその存在価値を認め合い、出番の少ない奏者には、他の曲ではもっと活躍してもらう機会を与える社会・組織でなくてはいけません。
ドアーズについては、残念ながら、自分の視点で語れるほど詳しくはありません。
でも、当時のロックと昨今の若い人のロック、野生の狼と飼い慣らされた座敷犬くらいの差はありますね。座敷犬は怖くありません(笑)。
もちろん、若い人を座敷犬にしかさせない社会構造に問題があります。
悪いのは、そうした社会構造を作った我々大人です。それは「罪」です。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
なるほど、確かにオーケストラの世界にヒントがありますね。
見事です。
そう考えると、やはり今回の事業仕分けによる予算縮減の問題は、果ては日本人の「人間力」低下にもつながる大問題ですね。
>当時のロックと昨今の若い人のロック、野生の狼と飼い慣らされた座敷犬くらいの差はありますね。
おっしゃるとおりです。あまりに優等生的です(昨今のロックはほとんど知らないのでいい加減なことは言えませんが)。
>悪いのは、そうした社会構造を作った我々大人です。それは「罪」です。
同感です。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む