マーティン・ジョーンズのシマノフスキ初期ピアノ作品を聴いて思ふ

szymanowski_piano_martin_jonesこの内燃するパッションはスクリャービンのそれに近い。そして、表面に燃え盛る甘美なメロディと超絶テクニック(指使い)はラフマニノフのそれだ。カロル・シマノフスキは1899年、17歳の時に栄えある作品1の番号を授ける「9つの前奏曲」を生み出した。
この人の場合も、作曲家を志すきっかけになったのがワーグナーということ。12歳の時に「ローエングリン」の舞台に釘付けになり、心震える想いをし、決意したのだと。同時代に、そして後世に多大な影響を与えたという意味で、リヒャルト・ワーグナーに優る者はいまい。

再び「コジマの日記2」(東海大学出版会)をひもとく。

昨夜、リヒターは「ローエングリン」を弾いたが、こうした作品を生み出した国に帰属したいと思ったことがわたしのその後の人生を決定したことを、あらためて痛感した。
1870年8月27日土曜日
P128

昨日、ヘルベック楽長より来信。「ローエングリン」がウィーンで再演され、すさまじい反響を呼んだという。
1870年10月10日月曜日
P185

ベルリンから印税が入る。「ローエングリン」が最も実入りのよいリヒャルトの作品であることが実証されたわけだ。
1871年1月14日土曜日
P302

夜はワーグナーの音楽。「ローエングリン」の「祈り」に母は涙を浮かべる。
1871年3月30日木曜日
P392

「ローエングリン」への称賛の言葉は数限りない。
マーティン・ジョーンズ演奏のピアノ作品全集から1枚を。

シマノフスキ:
・9つの前奏曲作品1
・変奏曲変ロ短調作品3
・4つの練習曲作品4
・ピアノ・ソナタ第1番ハ短調作品8
マーティン・ジョーンズ(ピアノ)(1992.6.15-16録音)

変奏曲作品3の、仄暗い主題に、世紀末の影と新しい世紀の絢爛が錯綜する。12の変奏は、いずれも強靭で美しい。そして時に柔らかく哀しい。
4つの練習曲作品4には確信に満ちた自信が横たわる。とても20歳前後の青年の創造した音楽とは思えない大人の味わいとでも表現しようか・・・。
そして、ハ短調のピアノ・ソナタはほとんどショパンとラフマニノフとスクリャービンの三位一体のよう。特に、アダージョ楽章のショパンの「前奏曲」を思わせるような音調に僕は心ときめく。第3楽章テンポ・ディ・メヌエットの可愛らしさ。終楽章の3声のフーガにまた「天才」を観る。ここには、後期ロマン派的保守的なスタイルを保ちながらさすがにわずか12歳でワーグナーに感銘を受けた感性を持つだけある青年が生み出した、ベートーヴェンの(ハンマークラヴィーア・ソナタ終楽章の)ような革新的響きが顕著。

 

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