生きる力

tchaikovsky_prokofiev_mravinsky.jpg「人間力」とは、「生きる力」と置き換えてもいいかもしれない。

これだけ「情報過多」の時代において、誰しも溢れる情報に左右され、何でも知っているかのような錯覚に陥る。しかし、それは所詮はフィルターを通したデータに過ぎない。その情報をもとに、具体的に行動し、体感することが重要になる。それが成功体験であれ、失敗体験であれ、自分で経験してみて、血となり肉となるのである。「知識」とは「情報」と「体感」がバランスよく融合したものなり。

そして、得たその「知識」を分かち合うこと、すなわち人と触れ合い、コミュニケーションし、そこから「感動」や「共感」が生まれることで、「生きる力」がより一層増幅される。

「ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けないように、人は人でしか磨けない」という。人は互いに支え合い、刺激し合い、生きている。お互いに生かし合っているのである。そういう意味では「生きる力」は自家発電できるものではなく、人の存在を介してのものである。やっぱり「関係性」が極めて大きなポイントなのである。

千葉の某大学で模擬面接個別相談の授業を受け持った。学生諸君は、インターネットで情報を得、会社説明会に出向き、志望する会社にまつわるデータをしっかり集めている。しかしながら、誰一人としてOB訪問をしていないことに少々驚いた。直接会い、話を聴いたという人がいない。そういう限られた情報の中で「志望動機」を書こうとしているのである。それではまったくもって良いエントリーシートは書けないし、面接でしっかりと語れるはずがない。とにかく一人でも多くの「人」と直接に交わることだ。

愛知とし子「ロシアン・ファンタジー」がいよいよ1週間後に迫っている(まだお買い求めになっていない方はお急ぎください!)。ピアニスト本人も最後の大詰めに入っている。今回のリサイタルで採り上げられる音楽を聴いた。それもムラヴィンスキーで。

彼がレニングラード・フィルとの50年にも及ぶ主従関係を維持できたのはなぜなんだろう?もちろん当時のソビエト連邦という特殊な国家環境も大きな理由だろう。しかし、そういうことを仮に差し引いたとしても、何度もしつこいように繰り返される訓練や厳しいリハーサルにも関わらず、オーケストラの団員は神様ムラヴィンスキーを尊敬し続けたのだという。まさに、互いに支え合い、刺激し合い、最高のものを生み出すという姿勢がそこには存在した。それゆえの一糸乱れぬアンサンブル、そしてエネルギーに満ちた最高の音楽。

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71(抜粋)
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲第2番作品64b
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1981Live)

かつてメロディア・レーベルで復刻されたCD、特にBMGの海外版はいかんせん音質が貧しい。どうしてこんなにも曇ったような音しか出ないのか。国内盤はもう少し改善されているとのことだが、僕は所有していないので聴き比べる術がない。

「くるみ割り」は有名な組曲版でなく、ムラヴィンスキー自身が抜粋したものだが、選曲がなかなか渋い。それにプロコに関しては、日がなピアノで繰り返されているので、僕の身体にも相当染みついてしまったようで(笑)、久しぶりにムラヴィンスキーの指揮で聴いて心が震えた。本当に良い曲だ。

音楽、特にクラシック音楽はともかく繰り返し何度も聴いて身体に憶えこませることが大切だとあらためて思った。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>それゆえの一糸乱れぬアンサンブル、そしてエネルギーに満ちた最高の音楽。
ムラヴィンスキーはレパートリーを限定しましたよね。C・クライバーやピアノのアルゲリッチと同じく。それが得意な曲での解釈の深化につながったのでしょう。仕事を選ぶということは大切ですね。
久しぶりに岡本さんの「早わかりクラシック音楽講座」で、私が出席させていただいた回を思い出し、ショスタコの5番でムラヴィンスキーとバーンスタインの聴き比べをYouTubeでしてみたくなりました。
ムラヴィンスキー
http://www.youtube.com/watch#v=4R8QWcTtb3g&feature=related
バーンスタイン
http://www.youtube.com/watch#v=ogJFXqYEYd8&feature=related
演奏家によって、同じ曲でも全く違う世界が広がりますね。噺家と落語の演目の関係みたいに・・・。
愛知とし子さんは、プロコフィエフ等で、どんな世界を描くのでしょうね。聴きに行ける人が羨ましいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
仕事を選ぶことと同時に、「できること」、「得意なこと」を深化させることが重要だともいえると思います。
>ショスタコの5番でムラヴィンスキーとバーンスタインの聴き比べをYouTubeでしてみたくなりました。
こういう聴き比べはほんとに面白いですよね。僕はコーダの解釈はムラヴィンスキーのほうに真実味を感じるのですが、久しぶりにバーンスタインを聴いて、これはこれでまたいいなと思いました。
YouTubeでは発見できなかったんですが、1950年代後半にバーンスタインがモスクワで公演した映像が残っています(終演後ショスタコーヴィチと抱擁するシーンも映っています)。このときの超快速のコーダにはやっぱり違和感が残るのですが、79年のほうはややテンポが遅めになっていることがそう感じさせるのかもしれません。
愛知とし子の公演についてはまたご報告します。

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