ロストロポーヴィチのドン・キホーテ

strauss_don_quixote_karajan_meneses.JPG所蔵のVTRテープをDVD化する作業をしていることは前にも書いた。録り貯めた200本を超すテープをひとつずつ確認しながらのダビング作業は相当の根気が要る。とはいえ、これまでちきんと観ていなかったものだから、時に映像に釘付けになりながら鑑賞する作品はそれぞれ興味深い。

いつ録画したのか記憶は定かでないが、映像に出てくるロストロポーヴィチが75歳だから2002年ごろのものだろう、確かNHKで放映された「わが人生はドン・キホーテ~巨匠ロストロポーヴィチ『最後』のリハーサル」を観た。

ロストロと小澤征爾によるリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」を軸に、リハーサル風景とインタビューをもとにした深い内容をもつ番組である。セルバンテスの「ドン・キホーテ」はラ・マンチャの村に住む妄想癖の男を主人公にした騎士物語であり、シュトラウスは従者サンチョ・パンサとの喧嘩や空想の恋人ドルネシアとの逢瀬を見事に音楽化している。

映像の中でロストロポーヴィチは言う。
「私は音楽の世界で、ドン・キホーテと同じように理想を追い続けました。音楽家は作曲家の楽譜を正しく読み、それを正確に再現するのが仕事です。でも、技術的な正確さだけでは全く不十分です。一番大切なことは、音楽を通じ作曲家の感情を伝えることです。その曲を作ったとき、悲しかったのか、楽しかったのか、もしかすると作曲家の希望が隠されているかもしれない、落胆かもしれない。この感情を伝える仕事は誰にでもできるわけではありません。それができるのは、ドン・キホーテの心を持つ人だけです。原則的に想像力を持っている人、そして理想を追い求める心を持っている人です。」

ドン・キホーテの心は、一般的にいう「妄想」ではない。「空想」なのである。イメージを飛翔させることが人間の可能性を拡げる大切なポイントなんだと僕は思う。

R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」作品35
アントニオ・メネセス(チェロ)
ヴォルフラム・クリスト(ヴィオラ)
レオン・シュピーラー(ヴァイオリン)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ロストロとのそれを採り上げるべきか迷ったが、あえてロストロではないメネセスとの共演盤を取り出した。ロストロポーヴィチとのものは火花散る両者互角の至芸。一方、若きメネセスはカラヤンの手中で自らを自由に表現する。指揮者自身が完全にイニシアティブをとっている分安定感があると言えば語弊があるだろうか。

本日は聖バレンタイン・イヴである。妻がお手製のブラウニーをプレゼントしてくれた。なるほど、美味しい。こういう日を持てることに感謝である。

ちなみに、明日は旧正月で、しかも新月、さらに本格的に水瓶座に移行する大事な日なのだという。確実に変化が訪れることになるから静かに過ごしなさいというお達しがあった。素直に聴いてみよう。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介のロストロの番組は貴重ですよね。私はロストロのチェロと指揮で、何回かとても貴重な体験を持つ機会がありましたので、彼のことは一生忘れられません。もし彼が今も存命であったなら、ハイチでの犠牲者を追悼し、また感動的なバッハを弾いたことでしょう。彼は、被災地のことだって見て見ぬふりをせず、イメージを飛翔させることができる人だったと思います。
ご紹介の交響詩「ドン・キホーテ」の盤、アントニオ・メネシスのチェロも良いですが、ヴォルフラム・クリストのヴィオラも好きです。この人は当時ベルリン・フィルの確か首席奏者でしたが、私のイメージするヴィオラの理想の音を出せる人でした。まあしかし、おっしゃるように、良くも悪くもカラヤンの管理下での美しい演奏ではありましたね。
>明日は旧正月で、しかも新月、さらに本格的に水瓶座に移行する大事な日
旧正月は、いつも新月なのではないですか?(笑) 水瓶座(1/20-2/18) 新月は、確か昨年もそうでしたよね。
※マドモアゼル・愛さんの2009年1月28日 (水)付ブログより↓
http://mademoiselleai.nifty.com/madeailog/2009/01/post-ecc9.html
とにもかくにも、祝、特別な日! お幸せに!
http://www.youtube.com/watch?v=XP-oGwt8ng0&feature=related

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>彼は、被災地のことだって見て見ぬふりをせず、イメージを飛翔させることができる人だったと思います。
おっしゃるとおりですね。
彼の無伴奏はとても美しかったですね。
クリストのヴィオラ、いいですね。ヴィオラ弾きの雅之さんにはこの曲のおススメ盤をご教示いただきたいです。
>旧正月は、いつも新月なのではないですか?
確かに!!失礼しました(笑)。

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