山本譲二とレオノーレ

furtwangler_orchestra_works.JPG藤田まことさんが亡くなった。
藤田さんといえば時代劇「必殺仕事人」シリーズで有名だが、年配の方々は彼の出世作になった「てなもんや三度笠」に一層懐かしさを覚えるのじゃないだろうか。僕の場合、いまだ物心つかない乳飲み子あたりの時代だからオンタイムの記憶は完全に欠けているが、その後のテレビの特番などで何度も観ることで、「当たり前田のクラッカー」など当時流行ったといわれるギャグなどが頭の中にしっかり残っている。
「てなもんや三度笠」では、珍念役の白木みのるさんが幼いながら印象的だった。てっきり子どもだとも思っていたし。
僕はその白木さんに一度だけ(いや2度だったか?)お会いしたことがある。以前から書くように、イベント・プロデュース業に携わっている頃の仕事は多岐に渡っていた。もともとクラシック・コンサートに関わりたいと思って入った会社だったが、当然クラシック音楽専属とはいかず、歌謡ショーに始まり、ジャズ・コンサート、ボサノヴァ、タンゴ、ロック音楽など様々なジャンルの音楽イベントに関わらせてもらった。もちろん博覧会や絵画展、あるいは地方都市の式典、講演会などいわゆるイベントと名のつく大抵のものが仕事になったのだが。

ある時、山本譲二さんの歌謡ショーで、当時北島三郎ショーの常連ゲストだった白木さんが飛び入りで登場することになった。何の曲だったか、何曲歌われたのか、すっかり記憶の外だが、その風貌と声は忘れもしないあの「てなもんや三度笠」の珍念の声だったことで、何とも可笑しくて、終演後、若気の至りでほんの少しばかりお話しさせていただいたことがとても懐かしい(間近で見ると意外に(?)皺が多く、やっぱりお年を召された方なんだなぁと思ったことを思い出した)。

ちなみに、山本譲二さんの歌では「みちのくひとり旅」が圧倒的に有名だが、その時の絶唱も忘れ難い良い思い出である。

たとえどんなに 恨んでいても
たとえどんなに 灯りがほしくても
お前が俺には 最後の女
俺にはお前が 最後の女
たとえどんなに つめたく別れても
お前が俺には 最後の女
たとえどんなに 流れていても
お前が俺には 最後の女

男は未練がましい。逆に女はとても強い。

ベートーヴェン:
・ 「レオノーレ」序曲第2番作品72
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1954.4.4-5、ベルリン高等音楽院)
・ 「レオノーレ」序曲第3番作品72a
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1953.10.16、楽友協会大ホール)

主人公レオノーレはフィデリオという男に変装し、投獄中の夫フロレスタンを救出するために勇敢に立ち上がる。ベートーヴェン唯一のオペラだが、何度も推敲を重ねた結果、いくつもの序曲が存在する。フルトヴェングラーが指揮した「レオノーレ」序曲はほかにも実況録音が存在するが、あえて晩年にスタジオで録音した音盤。決して明瞭とはいえない古びた音像の中から、巨匠らしい触れたら火傷しそうなほどの灼熱の音楽が浮かび上がる。

ところで、序曲第2番が録音されていたその同じ日、大西洋を隔てたニューヨークではトスカニーニが最後の演奏会で指揮をとっていた。例の、途中で記憶を失くして指揮をするのを止めてしまったといういわくつきのコンサートである。Altusから発売されたその時の模様をステレオ録音した音盤についてはまた別の機会に採り上げることにする。

ここのところ随分冷え込んだ。都心の今朝は薄らと積雪があった。本当に寒い。ずーっと曇り空だったので、午後、燦々と降り注ぐ太陽の光で生き返るような爽快感を感じた。お日様の「光と熱」って人間にとってとても大切なものなんだとあらためて感じた。ありがとう。


6 COMMENTS

雅之

こんばんは。
藤田まことさん、残念ですね。
私は藤田さんといえば、何といっても「必殺仕事人」でした。
アマ・オケの練習の休憩時間、トランペットの人達は、みんな「必殺」のテーマを吹きたがるんですよ(笑)。カッコいいですものね。
http://www.youtube.com/watch?v=8sASlADkDRo&feature=related
ところで、「レオノーレ」序曲の第2番や第3番も、展開部途中のトランペットの印象的なファンファーレが有名ですよね。
http://www.youtube.com/watch?v=Dn8UG3ZNpWE&NR=1
昔、アマオケで、第3番の演奏に参加した時のトランペット奏者の友人の顔が目に浮かびます。彼もご多分にもれず練習の休憩のとき、「必殺」のテーマを吹くのが好きでした(笑)。
藤田まことさんの、ご冥福をお祈りいたします。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
「必殺仕事人」のテーマ、トランペット吹きが好きそうですよね。確かにかっこいいです。しかし、これを聴くと「アランフェス協奏曲」を思い出します。似てません??
あと、「レオノーレ」のファンファーレ、あの場面いいですよね。
なるほど、偶然ですが「必殺シリーズ」と「レオノーレ」はつながってましたね・・・(笑)。

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雅之

確かに「必殺」のテーマ(作曲:平尾昌晃)は「アランフェス協奏曲」ですね(笑)。
故意か偶然か、音楽ではこういう「他人の空似」って多いですよね。
サイモン&ガーファンクルによってカバー(1970年)されて有名になったアンデスのフォルクローレ曲「コンドルは飛んでいく(El Cóndor Pasa)」
http://www.youtube.com/watch#v=M_gSydN_BYM&feature=related
と、山口百恵、初期の大ヒット曲「ひと夏の経験」(作曲:都倉俊一 1974年)
http://www.youtube.com/watch#v=FYqnCMC9R_c&feature=related
なんかも、中学生のころから、「出だし、同じじゃん!」と思い続けていますが、意外と世間では話題になりません(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>故意か偶然か、音楽ではこういう「他人の空似」って多いですよね。
故意でも偶然でもどっちでもいいですが、それにしてもそっくりです(笑)。
「コンドルは飛んでいく」と「ひと夏の経験」もそうですね。
ところで、昔、もう20年以上前なのですが、ラジオで山口百恵のあるアルバムのB面だか何かが、まるっきりピンク・フロイドのエコーズのパクリだという話をDJがしていたのを聴いたことがあります。うろ覚えで確かじゃないんですが、その後確認できていません。雅之さんはご存じじゃないですよね?山口百恵の話が出てきて、急に思い出し、気になって仕方がありません(笑)。

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雅之

こんばんは。
「ピンク・フロイドのエコーズのパクリだ」といわれた山口百恵の曲、大学生のころ友人がそのことを話題にしていたのを憶えているのですが、彼女の17枚目のアルバム『A Face in a Vision』(1979年)の中の1曲目「マホガニー・モーニング」( 作詞: 阿木燿子、作曲: 芳野藤丸、編曲: 大谷和夫 )のことではないでしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=bWr-gG9fujQ
※参考 「Echoes」 Pink Floyd
http://www.youtube.com/watch?v=h6iwrBlb1Bo
求ている効果は、なるほど似ているといえば似ていますね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
ご丁寧にありがとうございます。
これは笑っちゃいますね。
まぁ、編曲者はピンク・フロイドファンだったんでしょね。

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