もともと酒に弱い体質ゆえ、連日のように宴会が続くと途端に身体が悲鳴を上げる。といっても、ビールをいつもより多少多く摂取するに過ぎないのだが。先日の岐阜、滋賀県方面の旅では、久しぶりに家族親戚が揃ったことで、毎日のように宴が続いた。一昨日帰京してからはその反動でか、一滴も飲んでいない。よって極めて調子が良い。いずれにせよ、そのうちまた飲みたくなるだろうからそのときにゆっくりグラスを傾けるようにしようか・・・。
青柳いづみこ著「ピアニストが見たピアニスト~名演奏家の秘密とは」をざっと読んだ。以前、「ドビュッシー~想念のエクトプラズム」を読んだとき、青柳さんの深い洞察力と、文章表現の上手さ、読みやすさに驚かされたが、この本も一流ピアニストの様々な側面が彼女の感性で見事に語られており、頗る面白い。特に、エリック・ハイドシェックの章で、(何度かこのブログでも書いているが)1999年、浜離宮朝日ホールでのベートーヴェン・ツィクルスの際、「ハンマークラヴィーア」ソナタのフィナーレで止まってしまい、しばらくの休憩の後、弾き直しをしたものの、相当危なげな演奏だったこと、そして、その後の公演をすべてキャンセルして帰国したという事件の真相が具に書かれており、とても興味深かった。この件については、当時からインターネットを調べても、あらゆる情報誌をながめても、それにまつわる情報がまったくなく、体調不良だったのだろうことは想像がつくものの、実際のところはどうだったのだろうと一人のファンとしてどうも整理がつかず、常にどこか頭の片隅に残っていた。ようやくこの著書の中で、当時のハイドシェックの状態、状況などを含めた事実がはっきりし、積年の「想い」が氷解したことが何より収穫だった。
ところで、本日は2件ほど個人セッション、カウンセリングをもったが、目の前に起こるいろいろな事象が「家族関係」から起因していることがより一層明確になった。つまり、親子や兄弟など血縁関係におけるコミュニケーション・レベルが深まり、「心つなぎ」ができれば、外(仕事や他者との関係)で起こっている問題がこれまた嘘のように氷解するのである。目先の問題に対症療法的に対処してゆくことは重要だが、やはり「灯台もと暗し」なのである。身近な人、そして一番長く人生を共にしてきた相手との深いコミュニケーションがあらゆる事柄の特効薬なんだと心底僕は思うのである。
2つのヴァイオリンが、時にぶつかりながらも溶け合い、最終的には調和してゆく様は、まさに人と人との「心つなぎ」の大切さを象徴しているようである。そんな音楽を久しぶりに聴いた。
おそらくCD最初期に買ったであろうバッハの名盤。1985年だったか、86年だったか、当時、本当に繰り返し聴いたものだ。峻厳で堅牢な無伴奏ソナタやパルティータを書いた同一人物とは思えない、何と柔らかく、そして愛と癒しに満ちた響きなのだろう。人と人とは時に正面からぶつかり合うことも大事だ。壊れることを怖れて意見の相違を棚にあげたままにしておくといつか必ず痛い目に遭う。ただし、そのぶつかり合いも、根底に愛があっての前提であるが。
おはようございます。
>ただし、そのぶつかり合いも、根底に愛があっての前提であるが。
岡本さんが好んで使われる「愛」っていう当り前の言葉、耳に心地よい響きの言葉ですが、今ひとつ自分の中では意味がよくわからないんですよね。そこで、手持の「新明解国語辞典」第四版(三省堂 1989年)
http://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E6%98%8E%E8%A7%A3%E5%9B%BD%E8%AA%9E%E8%BE%9E%E5%85%B8-%E9%87%91%E7%94%B0%E4%B8%80-%E4%BA%AC%E5%8A%A9/dp/4385130981/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1268345984&sr=1-1
で調べてみました。
あい【愛】
個人の立場や利害にとらわれず、広く身のまわりのものすべての存在価値を認め、最大限に尊重して行きたいと願う、人間本来の暖かな心情。
①人類愛〔=国や民族の異なりを超え、だれでも平等に扱おうとする気持〕
②郷土愛〔=自分をはぐくんでくれた郷土を誇りに思い、郷土の発展に役立とうとする思い〕
③自己愛〔=自分という存在を無二の使命を持つ者と考え、自重自愛のかたわら研鑽(ケンサン)に励む心情〕
④親子の愛〔=子が親を慕い、親が子を自己の分身として慈しむ自然の気持〕
⑤動植物への愛〔=生有るものを順当に生育させようとする心〕
⑥自然への愛〔=一度失ったら再び取り返すことの出来ない自然を いたずらに損なわないように注意する心構え〕
⑦学問への愛〔=学問を価値有るものと認め、自分も何らかの寄与をしたいという願望〕
⑧芸術への愛〔=心を高めるものとしてすぐれた作品を鑑賞し、その作者としての芸術家を尊敬する気持〕
この①~⑧までの「愛」の優先順位が人によって大きく異なり、それが価値観の相違につながるのではないかと思いました。
因みにこの辞書、「恋愛」についての解説が傑作で、昔から有名ですよね(笑)。
れんあい【恋愛】
特定の異性に特別の感情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。
ブラームスのクララへの「愛」は間違いなくこれ(笑)。
青柳いづみこさんの本は皆名著ですよね。ピアノ音楽を愛する万人に読んでいただきたいですよね。私もずいぶん彼女の本で学びました。
ご紹介のシェリングのバッハの素晴らしさ、私が付け加えるまでもないでしょう。
ところで、先日SACDでアッカルドの演奏を聴いて、久しぶりにバッハで心底感動しました。
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲 アッカルド(2007)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3642923
機会があれば、ぜひ聴いてみてください!
青柳いづみこさん、ハイドシェック、シェリング、アッカルド・・・「⑧芸術への愛」が益々深まります。
>雅之様
おはようございます。
言葉は難しいですよね。捉え方が千差万別で、それが誤解を生んだりすることも多々あります。言葉の要らない関係にこそ愛があるのかもしれません。
それにしても「恋愛」の解説は面白いですね。妙にリアル感があります(笑)。というか、その通りだと思います。
アッカルドって最近どうしてるんだろう?と思っていたところでした。そうでしたか!この音盤は未聴なのでぜひとも聴いてみたいと思います。ありがとうございます。