シベリウスのスカラムーシュ

sibelius_scaramouche_jarvi.gifフェザント山中湖での新人研修の朝はラジオ体操で始まる。ラジオ体操に参加したのはいつ以来だろう。人間の体感的記憶というものはすごいもので、一度あの音楽がかかると自然に身体が動き、滞りなく「第1」を終えることができた。意識の奥底に浸透しているのだろう、子どもの頃からの刷り込みというのはたいしたものである。

2日目は、各社の代表がメインになっての「クレド」、いわゆる「企業理念」や「ビジョン」、「行動指針」を理解するためのワークを中心に進められた。わずか数時間の作業に過ぎないが、このワークが社員ひとりひとりがひとつになってステイクホルダーを意識し、健全な企業活動をするためにとても重要な要素であることがわかる。

目標を明確にすることって大事だ。大小を問わず組織になると、心がひとつにならないと乱れが生じる。新しく入った若者たちの意識をひとつにするのに企業の社長や幹部は躍起になる。

金儲けを第一に置くのか、それとも理念を第一に置くのか。「理念経営」を標榜する企業は結果的に長続きするようだ。社会貢献を前提にするなら、会社がいかに永く継続できるかがポイントであろうから、社長の意識が全社員と合一し、シナジーを生み出していくことがとりわけ大事な課題ということになる。ただし、利益をあげ続くてゆくことも存続していく上で大切な要素ゆえお金儲けもとても重要だ。結局、「金儲け」と「理念」は両輪ということになる。すべてはバランスだ。

素直な新人さんたちは気持ちが良い。こちらの気づきも深まるし、やる気も倍増する。世間の喧騒から逃れ、自然の中での「学び」は人間の可能性を一層高めてくれる。

子どものころから自然への愛着の強かったシベリウスは、第1交響曲作曲の頃、都会を離れて郊外の田舎町に逃れようとした。1904年に完成したヤルヴェンパーの「アイノラ」は終の棲家となり、この山荘で数々の精神性の高い、驚くばかりの名作群を生み出していったのである。創作上、インスピレーションを常に必要としたシベリウスにとって、そこは願ってもない場所だったのだ。

シベリウス:劇音楽「スカラムーシュ」作品71
ペトラ・ヴァーレ(ヴィオラ)
マッツ・レヴィン(チェロ)
ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団

ほとんど上演されることもない、そして演奏されることもないだろう1時間を超えるパントマイム悲劇のための音楽。その内容は、レイロンの妻ブロンドレインがスカラムーシュに誘惑され、最後にはブロンドレインがスカラムーシュを殺してしまうというものらしいが、ただひたすら音楽のみに耳を傾けるだけでシベリウス独自の世界に誘われる(この際、劇のあらすじなどどうでもいいように思えてくる)。とにかく音楽がことのほか彼らしい美しさをもつ。特に弦楽合奏の響きが何とも静謐で渋く、涙が出るほど感動的。何だろうな、この何とも言えない感覚は・・・。

明日は「ワークショップZERO」の2日目。さて、何が起こるのか・・・、楽しみである。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介の曲で、「せむしのヴィオラ弾き、スカラムーシュ」の描写は、私のようなヴィオラ好きくらいしか興味を示されるかたはおられないのかなと思っていたのですが、さすが岡本さんです。この曲でのヴィオラとチェロの織り成す不思議な音楽、渋いけれど忘れられませんよね。
>とにかく音楽がことのほか彼らしい美しさをもつ。特に弦楽合奏の響きが何とも静謐で渋く、涙が出るほど感動的。
120%同感です。
シベリウスはヴァイオリンだけではなく、ヴィオラも弾けたそうですね。基本的に、弦楽器のことをよく解っている作曲家であることは、彼の交響曲のスコアを眺めていても自明の理です(逆に金管楽器の用法などでは?のところもありますが・・・、でも、それも含めて素晴らしい!)。
BISは雰囲気のある録音も最高ですし、このレーベルでのネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ響など北欧の演奏家によるシベリウス作品のCDは、全部集めたいですね。
ところで、前回のコメント欄
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-389/#comments
について。

クレンペラー指揮のシューマン演奏、岡本さん同様、私も高く評価しています。クレンペラーにとってシューマンは思い入れのある作曲家であったのは、第3交響曲「ライン」で、マーラー版を基に独自の版で演奏していることからも、容易に想像できます。ただし、この時代のEMI録音全般に言えるのですが、CDへのリマスタリングの過程で、魅力が半分が吹っ飛んでいると思います。 ザンパ様も、機会があれば昔のLPで聴いてみられることをお勧めいたします。
それにしても、オーディオが変わると、音楽の印象は一変しますよね。
私は先月新居に引越して、オーディオ・セットも全部一新したのですが、予想通り、今までCDで聴いてきた演奏の印象が、驚くほど変わりました。私の現在の装置は、コンパクトな、下の機種です。
SACDプレーヤー
マランツ SA-13S2
http://www.marantz.jp/ce/products/audio/sacd/sa13s2/index.html
プリメインアンプ
マランツ PM-13S2
http://www.marantz.jp/ce/products/audio/amplifier/pm13s2/index.html
スピーカー
TANNOY Autograph-mini 
http://www.esoteric.jp/products/tannoy/autographmini/index.html
これで聴くBISの録音のシベリウスなどは、雰囲気豊かで極上になるのですが、ロックなどのジャンルでは物足りないかもしれません。クレンペラーのCDも、まだこの装置では聴いていませんが、おそらく印象は一変すると思います。

>「草食系」が必ずしも軟弱とは思わないんですよね。見方を変えるとそれこそおっとりしていて愛情深いという捉え方もできますから。
について。
(私も含めた)「草食系」に対するその(自己)認識は、ちょっと甘いのでは?(笑)。不幸な他人に対して冷酷になれるのは、「肉食系」よりも、むしろ「草食系」だと思います。動物行動学的にも説明できますが、長くなりましたので、また別な機会に・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。そう、シベリウスはヴィオラ弾きでもあったんですよね!
>BISは雰囲気のある録音も最高ですし、このレーベルでのネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ響など北欧の演奏家によるシベリウス作品のCDは、全部集めたいですね。
いやぁ、その通りです。このシベリウスの一連のCDは全部欲しいです。欲しいけど・・・・(笑)。
>オーディオが変わると、音楽の印象は一変しますよね。
ですよね。ほんとにケーブルひとつで見事に変わってしまいます。そういう意味ではオーディオというのはファジーですね。
それにしても一新された装置羨ましい限りです。良い音でしょうね。いつか機会があったら雅之さんのリスニング・ルームを訪れてみたいものです。
>クレンペラーのCDも、まだこの装置では聴いていませんが、おそらく印象は一変すると思います。
ぜひ感想をお聞かせください。
>動物行動学的にも説明できますが、長くなりましたので、また別な機会に・・・。
このあたりはまた議論の余地ありですね。今度お会いした時にお手合わせよろしくお願いします。

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