言葉にして伝えること

mendelssohn_songs_without_words_karr.jpg弱い犬ほどよく吠える。
「弱さ」を隠そうと人一倍威勢よく振舞う人の言葉は時に痛い。まずは「自身の防衛」ありきで、そもそもの「愛」というものを失っているところが辛い。
「愛」を失っている人に直球で意見することは難しい。ズバッと斬り込んだ率直な感想が言えなくなる。一つ指摘すれば、あるいは思ったそのままのことを伝えると、2倍にも3倍にもなって還ってくるような気がして怖いのである。
そういう時は「馬耳東風」、聴いて右から左に受け流すべし。あからさまにそういう姿勢でいると棘があるので、あくまで「傾聴」モードで・・・。

ただし、「言わない」、「伝えない」ことはやっぱり良くない。関係に歪を来すと同時に、何より自身の心身にとって相当な負担をかけることになるから。喜怒哀楽、特にマイナスのフィーリングは他人に伝えにくいものだが、勇気を振り絞って言うことをおススメする。もちろんそれは信頼関係を築いているという前提の話だが。

本日、エルーデ・サロンでは久しぶりに「音浴じかん」が開催された。
ピアノの下に潜って音楽を聴く行為というのは、相当な「癒し」をもたらしてくれるようだ。小さなお子様もお母さんもその字の如く浴びるようにモーツァルトやショパンの音楽に触れ、楽しいひと時を過ごしていただけたようだ。

ところで、この4月からいろいろと変化の起きている人が多いと聞く。慌てず、騒がず、ひとつひとつ着実にこなしていこう。

メンデルスゾーン:無言歌集
ゲリー・カー(コントラバス)
ハーモン・ルイス(ピアノ)

どうも春になるとメンデルスゾーンを聴きたくなるようで、「無言歌集」を取り出した(そういえば2年前の「早わかりクラシック音楽講座」ではメンデルスゾーンを採り上げたし、その頃のブログではメンデルゾーン作品をよく採り上げていた)。それも珍しいコントラバスでの編曲版で。低音楽器の生々しい響きが、この作曲家の名曲に花を添える。

ちなみに、ライナーノーツには、カー自身のコメントが付されている。

「モーツァルトやシューベルトの音楽をより深く理解するには、声楽ジャンルでの彼らの創作に注目してみる必要がある。とりわけシューベルトの歌曲における音楽と詩との完璧な融合は、彼の天才をつぶさに示してあますところがない。メンデルスゾーンも同様で、彼もまた優れた歌曲作曲家だった。ただ彼の場合、詩的イマジネーションがしばしば歌詞の世界をはみ出してしまう、といったところがなくもない。(中略)これら無言歌、すなわち『歌詞のない歌』は、抽象的であるようでいて、実は本質的にある種のプログラム性を備えており、メッセージをドラマティックに伝えてくることでは、シューベルトの歌曲に匹敵するほどである。ただひとつ、本来旋律楽器ではないピアノには、シューベルトにおける声のパートのように、音を持続させて歌うということができにくいという、決定的な違いがあることは否定できない。そこで私は、無言歌から歌のメロディ・ラインを抽出して、コントラバスで奏でてみることを考えたのである。その際、私は人間の声の模倣を意図してみた。(後略)」

人の声に近いコントラバスでの「想いの発信」はことのほか心に響き伝わる。カーが人間の声の模倣を試みたというその意図が身に染みて伝わる。人間というもの、どんな思考や感情であれ伝え合わねば・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
弓で弾いても、指ではじいても、クラシックでもジャズ活躍できるコントラバス(ダブル・ベース)は、楽器の移動・運搬、置くスペース等の制約さえなければ、やってみたい楽器です。この楽器の低音の魅力は、計り知れないくらいです。四弦と五弦の楽器が同じパートで併存できるっていうのも、自由でいいです。ヴィオラ・パートしか弾いたことのなかったオーケストラ曲を、コントラバス・パート側から見るとどうなるか、これはワクワクする想像です。
ゲリー・カーの録音は、往時は本当に多かったですよね。私はほとんど追っ掛けておらず、ご紹介のメンデルスゾーンも未聴でしたが、Amazonの試聴用サンプルで聴く限り、歌曲のようで、いいですね。素晴らしい試みだと思いました。
>(そういえば2年前の「早わかりクラシック音楽講座」ではメンデルスゾーンを採り上げたし、その頃のブログではメンデルゾーン作品をよく採り上げていた)。
いやあ、懐かしいですねぇ。そのころからですよね、岡本さんにお世話になっているのは・・・、感謝の極みです。こうやって、あのころのコメントを読み返しますと、現在の私とは善くも(ひょっとして悪くも?)別人のようです(笑)。今の私は当時よりもは、音楽にも世の中一般の事象にも相当視野が拡がっていますが、これはひとえに岡本さんとのやり取りによる学びの賜物です。ありがとうございます。
2年前、「早わかりクラシック音楽講座」メンデルスゾーンの会での出会いは、お互いにとって、まさに「未知との遭遇」でしたね(笑)。
http://www.youtube.com/watch?v=tUcOaGawIW0
あの時があるから今日がある・・・。
>人間というもの、どんな思考や感情であれ伝え合わねば・・・。
レミドドソ〜、レーミードードーソ〜、レ・ミ・ド・ド・ソ~・・・。 

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ゲリー・カーの音盤は久しぶりに聴いたのですが、彼の演奏はほんとにいいですね。コントラバスの響きが何とも素敵です。この楽器はおっしゃるとおりクラシックでもジャズでも活躍しますが、どちらかというとジャズの方にかっこよさを感じていました。クラシックではあまり表に出てこない、目立たない存在、縁の下の力持ちじゃないですか。その印象を覆してくれたのがゲリー・カーでした。
そうなんです!初めてお会いした時から2年経ちました。もう2年か、とも感じますし、まだ2年なんだ!とも思えます。不思議ですね、出会いというのは・・・。
>今の私は当時よりもは、音楽にも世の中一般の事象にも相当視野が拡がっていますが、これはひとえに岡本さんとのやり取りによる学びの賜物です。ありがとうございます。
こちらこそなかなか他にない面白いブログになっているので感謝しております。確かに当時のコメントとは印象違いますね。僕も「おかちゃん」と名乗っておりました(笑)。
>あの時があるから今日がある・・・。
おっしゃるとおり!!「未知との遭遇」!!

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む