エンヤとひばり

enya_watermark.jpg僕は元来「戦うこと」が好きではない。できることなら、波風立てず平穏に過ごしたいと思う。子どものころからそうだった。

個人で仕事をしていると様々なことに直面する。取引先、特にパートナー(相手が企業でも個人でも)との関係において一喜一憂することが多々起こる。5:5で互いに依存することなく、共生できる関係が理想だが、結果が出なかったり、相手が期待通りの動きをしてくれなかったりすると途端に状態が悪くなり、ついついエゴイスティックになってしまう。そう、戦闘モードに入ってしまうのである。「戦闘」が好きでないなら、要は戦わなければいいことなのに、そうなるとどうしても怒りが沸々とわき出してしまう。

よくよく考えてみると、やっぱりそこには「依存」がある。「やってもらえる」と思っていた、あるいは文字通りただ期待していた、など。互いが「今ここ」に生き、ベストを尽くすという関係であるなら、相手に期待もなければ愚痴も起こらないだろう。パートナーが成果を挙げたときは、素直に拍手を送ればよいし、もし上手くいかなかったなら、その時は自分が尻拭いをするくらいのつもりで、そもそも事に向かった方が物事は上手く運ぶ。

あくまで自分のアイデンティティを頼りに船を造り、漕ぎ出していかねばなるまい。そしてそこに乗りこむ仲間は、少なくとも同じ志向を持ち、こちらのアイデンティティに無条件に賛同してくれる人であらねばならない。5:5の関係とは、互いが自律していることが大前提である。

とはいえ、人と協働することはやっぱり難しい問題を孕む。依存と共生の境界がよくわからなくなることがあるから。それを越えるにはやっぱり「ぶれない自分軸」を確立することだろう。自分がどんな生き方をしたいのか、それをとことん突き詰めることだ。

先日、おみくじで「凶」を引いたお陰でいろいろ深く自分を省みることができた。そして、自分を信じて動くことで、すべてが好転してゆくんだという実感もあらためてもった。

enya:watermark

本当に久しぶりに聴いた。20年の時を経て「今」聴いても、エンヤのアイデンティティがひとつひとつの楽曲の中に見事に反映され、「今」に息衝いている。ここには「平穏」と「静寂」がある。「戦い」とはまったく縁の感じられない音楽たちだ。

Let me sail, let me
sail, let the Orinoco flow,
Let me reach, let me beach on the shares of Tripoli.
Let me sail, let me sail, let me crash upon your shore,
Let me reach, let me beach far beyond the yellow sea.

船を出して、海を渡るの、オリノコ河の流れで
行かせて、トリポリの浜辺に
船を出して、海を渡るの、あなたの岸辺に連れてって
遥かなる黄海を越えて

オリノコ・フロウを聴くと、なぜか美空ひばりの「川の流れのように」を連想してしまう。ほぼ同じ時期に書かれた名曲だ。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>僕は元来「戦うこと」が好きではない。
資本主義社会の荒海に、優秀な人材を送り出す仕事をされている岡本さんが「戦うこと」を否定されるのは、自己矛盾そのものだと思います。経営戦略や販売戦略も、受験戦争で勝ち抜くことも、ショパンコンクールという厳しい戦いの覇者になることも、ワールドカップで優勝することも、全部否定しなければならなくなります。私たちの人生は、好むと好まざるとに関わらず戦いであり、幸せは他者の犠牲の上に成り立っている、この認識・自覚を持たなければ、「他人への愛」などと口にしても大嘘になってしまうのではないでしょうか。「直接手を下していないから私は何も悪くない、そう信じ込んでいる人が、じつは最も悪人である」、キリストや親鸞の言いたかったことは、まさにそういうことだと思っています。
>人と協働することはやっぱり難しい問題を孕む。依存と共生の境界がよくわからなくなることがあるから。それを越えるにはやっぱり「ぶれない自分軸」を確立することだろう。
生物も人間も、多様性があるから、厳しい環境の変化を乗り越えDNAを受け継ぎ、種の存続が可能になったのだと思います。人間は「ソメイヨシノ」や「観葉植物」のように、株分けや接ぎ木で増えたのではなく、皆同じDNAでは成り立ってはいません。花の色や咲く時期も、葉の形も、全部違います。人間関係とは、深く付き合い、突き詰めれば詰めるほど、「同一性」よりも「差異」が際立ちます。だから組織を純化しようとすればするほど、例えば音楽ではバンドが解散するのが必然になったり、「新撰組」や「北朝鮮」や「連合赤軍」や「オウム真理教」では粛清が繰り返されてきました。多様性を認めない組織や社会は万死に値します。
>おみくじで「凶」を引いた
こういうことは、私はまったく信じておりません。気にするのはナンセンス。考えてもみてください。もし、広島・長崎の原爆や、阪神淡路大震災など激甚災害や、飛行機事故などで一斉に多くの人が亡くなる直前、犠牲者がおみくじを引いたら、全員「凶」が出るのでしょうか? また、犠牲者が前日に占いや手相を見てもらったら、全員同じ結果が出るのでしょうか?
それに、信じるにしたって、「陽極まれば陰生ず、陰極まれば陽生ず」まあ、それだけのことでしょう。短調だけの人生も長調だけの人生もあり得ませんし、それを長調だけで生きようとするから、おかしなことになります。
ところで、先日御紹介の、ツアーのパンフレットの、ツィマーマン氏のインタビューでのライヴ至上主義の発言
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/2010-1/index.php#comment-2341
は、一方的なものの見方ですね。録音という行為を否定したら、ロックやポピュラー音楽は、全部否定されなければならなくなります。
「彼女のアルバムリリース間隔は、4~6年である。独特の製作手法から1曲に費やす手間が多く(録音に3ヶ月程度)、エンヤ自身が完璧主義者であるがゆえに、アルバム1枚を完成させるのに時間がかかる上、全精力を使ってアルバムをリリースした後は一年ほど休暇をとる」というエンヤ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%A4
片や、1か月に15回から17回の過密日程でリサイタルを開き、一定の演奏のクオリティーを維持できないツィマーマン(ハズレの日のお客さんはかわいそう)、どちらが良心的な仕事なのでしょう。
コンサートやリサイタルは「演劇」、多くのテイクを編集して制作されたLP、SACD、CDなどの録音芸術は「映画」、そのどちらで感動しても、他人から否定される筋合はないでしょう。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ご意見ありがとうございます。
言葉足らずではあったのですが、ここで僕が言う「戦い」というのは、自分のことだけを考えて、相手の足を引っ張ってでも勝とうとする、あるいは姑息な手を使ってでも勝とうとする、そういう意味での戦いを指しています。
もちろん世の中で競争はありますし、僕自身その点は全く否定はしていません(当然ですが、僕も競争してきました。負けることもあれば勝つこともありましたし、今もそうです)。各々が自分のベストを尽くし、やり切り、その結果として順位や勝敗がつくものだと思うのです。そういうときって負けても清々しいんですよね。また次頑張ろうと思える。
>幸せは他者の犠牲の上に成り立っている
結果としてそうみえるでしょうが、前述の観点でいえば、負けた方は決して「犠牲になった」とは思っていないと思います。
「犠牲」という言葉自体、勝った方から見た主観だと思うのです。
>多様性を認めない組織や社会は万死に値します。
この点については同感です。だからこそ、ひとりひとりが自立するという生き方、そしてお互いに補完し合うという生き方が大切なように思います。
>こういうことは、私はまったく信じておりません。気にするのはナンセンス。
この後の言葉も含めまったく反論の余地ございません。正論ですね。ただし、一方でそういうことを信じてしまう人もたくさんいると思います。彼らと共生、協働するにはどうすればよいか?相手を理解、受け容れるために受け皿を大きくする。それがコミュニケーション力だと思います。
>信じるにしたって、「陽極まれば陰生ず、陰極まれば陽生ず」まあ、それだけのことでしょう。
良い言葉です。
>ツィマーマン氏のインタビューでのライヴ至上主義の発言は、一方的なものの見方ですね。録音という行為を否定したら、ロックやポピュラー音楽は、全部否定されなければならなくなります。
おっしゃるとおりです。ただし、このインタビュー記事だけではツィマーマンの真意が何なのか本当にはわからないと思います。当然その言葉の裏を読んだり、前後の文脈まで読んで理解しなければいけないところ、こういう抜粋記事(テレビの発言でもそうですし)だけを読んで、一概に判断するのは危険かもしれません。まぁ、あの記事を読んだだけだと、まさに雅之さんのご意見通りになるのですが・・・。
やっぱり人間は対面で空気を感じながら、互いに意見交換、コミュニケーションをすることがとても重要だと僕は思います。僕はほぼ毎日ブログを書いていますが、時々面と向かって議論を交わしたくなります(笑)。
メールやブログって便利ですが、難しいですよね・・・(苦笑)。久しぶりに一度お会いしたいものです。

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