ラレード&グールドのバッハ ソナタ全集(1975-76録音)を聴いて思ふ

生憎の体調不良で、外に出るのもままならない。
外は格好の大雪。

夢見心地でハイメ・ラレード&グレン・グールドによるバッハのソナタ集。
流れるヴァイオリンの旋律に、相変わらずポツポツ途切れるように音楽を鳴らすピアノの対比が面白い。第4番ハ短調BWV1017第1楽章シシリアーノは、何て美しいのだろう。

グールドは独奏だろうと重奏だろうと協奏だろうと、どんなときも自分を貫いた。
(すでに少年期に)自らの方法を確立し、一貫してその表現を世に問い続けた。そして、死後35年を経ても、世間から忘れられないどころか、孤高の位置を、つまり「グレン・グールド」というジャンルを生み出した。

当時の十四歳、十五歳、十六歳の私は、バッハの弾き方をめぐって、教師と闘っていました。白旗を掲げる気はありませんでしたが、彼女(ロザリン・テューレック)のレコードはどれも、私が孤軍奮闘しているのではないことの最初の証拠となりました。倫理的にみて、たいへん率直な演奏でした。たいへん落ち着きがあり、けだるさとは無縁で、代わりに典礼のような倫理的な正しさがみなぎっていました。
グレン・グールド/ジョナサン・コット/宮澤淳一訳「グレン・グールドは語る」(ちくま学芸文庫)P74

テューレックの方法と自分のやり方とは明らかに異なると前置きをしつつ、それでも影響を受けたのはテューレックのバッハだとグールドは言う。
一音聴けば明らかにグールドであるとわかる演奏に、彼の恍惚の表情を想像する。

J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ全集
・ソナタ第1番ロ短調BWV1014(1975.2.1-3録音)
・ソナタ第2番イ長調BWV1015(1975.2.1-3録音)
・ソナタ第3番ホ長調BWV1016(1975.11.23, 24 &1976.1.9-11録音)
・ソナタ第4番ハ短調BWV1017(1975.11.23, 24録音)
・ソナタ第5番ヘ短調BWV1018(1976.1.9-11録音)
・ソナタ第6番ト長調BWV1019(1976.1.9-11録音)
ハイメ・ラレード(ヴァイオリン)
グレン・グールド(ピアノ)

孤独なグールドの重奏であることが何より。身体が芯から温まるような愛溢れる演奏とでも言おうか。それにしてもバッハの音楽にある(彼の類を見ない精進から創造された)知性と感性の見事なバランスこそは、永遠を生み出すかのよう。
300年という時を介してもそこからはいつも光輝が放たれる。

 

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