調和とバランス

stravinsky_la_noces_argerich_1972.jpg8月8日(日)に結婚3周年を記念して、浜松町のT’SUKI sur la merでパーティを開催する。会費制なので、気軽にどなたでもご参加いただきたいと思っているのだが、メールの不首尾で案内が届いていない方が多いようで、直接電話をして急ぎ確認作業をしている。

ちょうど1年前に結婚したT君からのメール。
やりとりは以下の通り。

T:突然だけど、実は今日、嫁と離婚しました。また、8月に中国に異動になりました。蘇州で、新規事業やることに・・・。もしかしたら、出発日が8日と被るかもしれないです。そうなったらすいません・・・。
僕:まじか!まだ1年だよね!?まぁ、しょうがないけどね、こればっかりは。
T:どうも自分のことになると人を見る目がなかったみたいです。すいません、なんだか縁起の悪い報告で・・・。
僕:縁起は悪くないさ。それも必然。バランスと調和だからね。
T:バランスと調和ね。はは、必然か・・・、確かに。バランス崩してたからなぁ、この1年。また連絡します。

ほんとに、わかってるのかなぁ(笑)。始まりがあれば終わりがある。出会いがあれば当然別れもある。それが早いか遅いか、あるいは死別か離婚かというだけの違い。今の時代、大騒ぎするほどのことでもない。夫婦といえども「関係」の上で成り立っているのだから、うまくいかないなら(=調和が乱れるくらいなら、バランスが崩れるくらいなら)とっとと解消した方が良いくらい。

数年前、ゲルギエフが読響に客演し、ストラヴィンスキーの「ハルサイ」と「結婚」を振った。いずれも素晴らしい演奏だったが、初めて実演で聴く「結婚」は、歌と器楽と踊りが混然一体となった、ロシアの土俗的な響きを直接肌で感じさせてくれる迫力あるものだった。

ところで、この音楽、バーンスタインがアルゲリッチやツィマーマンと録音したドイツ・グラモフォン盤を愛聴してきたが、1年半前にいつもお世話になっているOさんから学研のアルゲリッチ・エディションというCDを大量にいただき、その中に見慣れない録音が入っていたので調べてみた。それは、その数年前にシャルル・デュトワの指揮により(何と合唱指揮はミシェル・コルボ!)、アルゲリッチ、フレイレらが録音した「結婚」だった!この音盤の存在は残念ながらそれまでよく知らなかったが、さすがに後年のバーンスタイン盤の安定感に比べると「弱い」気もしたが(初演で用いられたフランス語版ということも要因としてあるかもしれない)、何とも溌剌とした、若々しい精気に漲った表現が素晴らしく、以来この決して有名とはいえない楽曲の真髄については両盤を所有し、その時の気分によって聴き比べるといいのではないかと考えるようになった。

ストラヴィンスキー:バレエ「結婚」(C.F.ラミュのフランス語版による)
バーシア・レチツカ(ソプラノ)
アルレット・シェデル(アルト)
エリック・タピー(テノール)
ピエール=アンドレ・ブラゼール(テノール)
フィリップ・フッテンロッハー(バリトン)
ジュール・バスタン(バス)
マルタ・アルゲリッチ(第1ピアノ)
エドワード・アウアー(第2ピアノ)
ネルソン・フレイレ(第3ピアノ)
スザンヌ・ハッサン(第4ピアノ)
シャルル・デュトワ指揮
パーカッション・アンサンブル、ローザンヌ大学合唱団

わずか20分強の舞台。ストーリーも結婚式当日の花嫁と花婿の不安を描写した他愛のないもの。とはいえ、音楽によりその「不安」な様子を巧みに表現しているストラヴィンスキーの腕前は確かだ。バランスと調和なり・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
少し早いですが、結婚3周年おめでとうございます。
ここに、岡本太郎美術館館長で、岡本太郎氏の養女で実質的な妻でもあった、岡本敏子さんの名言集があります(夫、太郎氏のも同サイト内に沢山あります)。
http://sekihi.net/writers/1470
なんだか、どの言葉も凄くかっこ良いんで、それに名字も名前も御縁がありそうだったので、この機会に同サイトをご紹介いたします。
ご紹介のストラヴィンスキーの「結婚」、貴重で興味深いですね。聴いてみたいです。恋多き女アルゲリッチは三回結婚して三回離婚し、それぞれ夫の違う三人の娘がいますからね。その夫のひとり、指揮者シャルル・デュトワとの関係っていうのも興味深いですね。離婚してからも、よく共演していましたし・・・。
ところで、がらっと話は変わりますが、昨日、上原彩子さんのピアノリサイタルを聴きに行きました(名古屋 しらかわホール)。
http://www1.odn.ne.jp/nagoyatomonokai/event/concert.html
《曲目》
シューベルト
3つのドイツ舞曲 D.973
12のエコセーズ D.299
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第3番ハ長調Op.2-3
(休憩)
ショパン
ノクターン第8番 変ニ長調 Op.27-2
ワルツ第6番 変ニ長調 Op.64-1「子犬」
ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2
12の練習曲 Op.25
(アンコール)
チャイコフスキー
18の小品「5.瞑想曲」Op.72-5他
抜群の安定したテクニックは、前半のシューベルトやベートーヴェンは地味な曲目では、懐の深さを感じさせたものの、やや安全運転に終始した感はありましたが、すべては後のショパンのための力の温存だったのでしょう。その後半のショパン、特に12の練習曲OP.25は断トツの白眉で、すっかり魂を打ちのめされました。暗譜なので、譜めくりの間の悪さがなく、曲から曲への流れも自然で、高い技巧(ほとんど完璧)と温かみがあり豊かで深い詩情の最高に幸せな両立には、また月並みな言葉ですが、最近ではちょっとないくらい、とてつもなく感動しました。リサイタルを聴いてこんな純粋な気持ちになれたのは、本当に久しぶりのことでした。
改めて私は、ショパンの曲では練習曲集、とりわけOP.25の12曲が最も好きだということを再認識しました(彼の最高傑作はマズルカの何曲かでしょうが・・・)。ほとんどシューマンの「交響的練習曲」と同等の愛着があるとは自覚していましたが、今回のような決定的な名演を耳にすると、シューマンをも上回る感動だったかもしれません。私にとっては、ポリーニやアシュケナージの過去の名盤なんて、彼女の今回の実演に比べたら月とすっぽん(勿論月が彼女)、もう論外です。
また、先日のファジル・サイのリサイタルと比べても、比べものにならないくらい、音楽が心に深く入ってきました。
岐阜県に縁のある愛知とし子さんと上原彩子さんという二人の名女性ピアニストの演奏をこれからも聴けることは、この上もない幸せです。彼女たちからいただいた感動体験と大いなる気付きに、心から感謝したいです。そして再度確信しました。高級ブランドの外国人ピアニストによる過密日程での来日公演は、私にはまったく縁もないし必要ないと・・・。ポゴレリッチやピリス、ツィマーマンの今後の動向には一応注目しますが・・・。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
岡本敏子さんの言葉、ストレートでしかも真理を突いていていいですねぇ。気に入りました。
僕は岡本太郎という芸術家が好きで、本はいろいろと読み漁ってますが、こういう伴侶がそばにいたことが彼をあれだけの人にしたともいえますね。間違いなく「あげまん」、大物です。
いやみや屈託がないですし、カラッとしているところが素晴らしいです。ちなみに、妻のとし子は戸籍上は敏子ですから、同姓同名ということになります。名前負けしないよう祈ります(笑)。
上原彩子行かれましたか!!
非常に興味深いプログラムですね。
>高い技巧(ほとんど完璧)と温かみがあり豊かで深い詩情
>最近ではちょっとないくらい、とてつもなく感動しました
>今回のような決定的な名演を耳にすると、シューマンをも上回る感動だったかもしれません。
ほんとですか!!
うーん、羨ましいです!!
>高級ブランドの外国人ピアニストによる過密日程での来日公演は、私にはまったく縁もないし必要ないと・・・。
まlまぁ、そう一刀両断されず、外タレについても許容していただきながら・・・(笑)。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む