マーラー版ブルックナー「ロマンティック」

bruckner_romantick_rozhdestvensky.jpg大崎で打ち合わせの後、駅に向かう途中新人らしい女の子から声をかけられた。勇気試しに道行く見知らぬ人と1枚でも多く名刺交換して来いという社命とのこと。恐る恐るだったが、何ともその勇気に感動したので、すんなりと名刺を差し出した。すごく喜んでくれた。何だか良いことをしたみたいで、妙に嬉しい。

この前、久しぶりに新宿のタワーレコードをぶらついていたら、シャイーが録音したマーラー編のシューマンの交響曲全集が格安価格で売られていて、この音盤は所有していないものだからシューマン・イヤーの年に記念して手に入れようと思ったが、結局素通りした。そう簡単に廃盤になることもないだろうし、それほど頻繁に聴き込むことも多分ないだろうからいつでもいいやと考えたからだが、果たしてどうだったのだろう?

いつだったかマーラー版のシューマンについてはだいぶ聴き込んだ時期があったが、結局原典版の「自然さ」をより意識させられることに落ち着き、ほぼ聴くことはなくなった。十分労力の費やされた大仕事だろうということは想像できるのだが、僕の感性から言えば、どうも嘘臭く感じられる、わざとらしさの感じられる音楽だった。

昨日、雅之さんからいただいたコメントにオスモ・ヴァンスカによるブルックナーの第4交響曲改訂版を絶賛する文章があったので、こちらも久しぶりに「ロマンティック」交響曲を聴いてみようと、ロジェストヴェンスキーが録音したマーラー版を取り出してみた。レーヴェ改訂版をもとに、マーラーが補筆・改訂した掘り出しアイテム。

作曲者本人が承認したであろうレーヴェ版とは明らかに違う音楽が鳴り響く。こちらは後輩の勝手な暴挙と言ってしまってもいい(のかもしれない)カットが頻出する。

昔、ブルックナーとマーラーとが同一線上に語られ、伝記などでも併録されていた時代があったが、こういう音楽を聴くと、二人の音楽がまったく異質のもので、後期ロマン派と言われるある時代に活躍したことと、巨大なオーケストレーションを武器に交響曲というスタイルの中で自身の創造性を飛翔させたという点が似ているというだけで、それぞれが決して相容れない感性をもった音楽家だったことが手に取るように分かる。

ただし、誰がどんなに勝手に手を入れようと、面白いモノは面白い。前にも話題になったと思うが、ポピュラーの世界ではカバーした時に、アレンジを変えるなんていうのは当たり前のことで、ましてや自分の作品を後に全く別のアレンジで録音し直したり、ライブで披露するなどという行為は当たり前のことだから、クラシック音楽の世界だけが「原典」に拘って表現の幅を狭くしてしまうのもいかがなものかと最近僕も思うようになった。もっと自由に、好き勝手に「表現」を楽しんだ方が良い。その意味では19世紀末、20世紀初頭はまだまだ大らかな時代だったんだなとあらためて思う。

録音機器がなかった時代というのは、1回1回が「芸術再現」のための貴重な時間であり、その瞬間を芸術家たちはこぞって力試しの場にしていたということなんだろう。とすると、やっぱり文明の進歩が人間の感性を鈍らせ、退化させたのだとも考えられる。芸術にはいろんな解釈、そして感じ方、感想があって良い。

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(マーラー版)
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省交響楽団(1984.11.19)

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介のロジェストヴェンスキー指揮によるマーラー版ブルックナーも、おっしゃるとおり面白いですよね。新録音が出たら、この版も、また印象が劇的に変わるかもしれません。
マーラー版といえば、最近出た、ベートーヴェンの第9のSACD(K.ヤルヴィ&ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団)も面白いですよ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3739977
ただ、K.ヤルヴィの解釈はマーラーの音楽のようにねちっこくなく、あっさりしており、相当もの足りませんが・・・。
>ポピュラーの世界ではカバーした時に、アレンジを変えるなんていうのは当たり前のことで、ましてや自分の作品を後に全く別のアレンジで録音し直したり、ライブで披露するなどという行為は当たり前のことだから、クラシック音楽の世界だけが「原典」に拘って表現の幅を狭くしてしまうのもいかがなものか
まったく同感です。そういう意味で、クラシックで最もジャズに近い即興の魅力が発揮している、バッハやヘンデル、テレマンをはじめとしたバロック音楽は、本当に楽しいです。通奏低音を受け持つ奏者などは、真の意味での音楽性が要求されますし。
また、モーツァルトのピアノ協奏曲のカデンツァで、ソリストが自作を20分近くアドリブ中心にジャズの語法で演奏する、なんていうのも面白い試みかもしれません。
ある方のサイトより・・・。
・・・・・・jazzのアドリブとサッカーのドリブルとは、その即興性、自由奔放なところなど類似点が多くないでしょうか。・・・・・・
http://myfootball.sakura.ne.jp/jazz.html
ああ駄目です、今朝は思考能力ゼロです・・・。まことに申し訳ありませんm(_ _)m
この場をお借りし、叫ばせてください。
サッカー日本代表、ブラボ~~~~~~!!!!!!!!!!! 
おめでとう!!!!!!!!!!!(ニコニコ) 
次も気を引き締めて勝とう!!

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ご紹介のベートーヴェンの第9のSACD(K.ヤルヴィ&ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団)は未聴です。面白そうですね。あっさりしているのは残念ですが。
あとオルガンjazzは興味深いです。バロックとjazzとは非常に近い関係にあるんでしょうね。
日本勝ちましたね。さすがに今日のこともありliveでは観てませんが・・・。その前のイタリアvsスロヴァキアは観ました。イタリアの粘り、素晴らしかったです!

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