20世紀の傑作たち・その1

bartok_janacek_previn_lapo.jpg人にモノを教えるという立場上、しかも個人を対象にコトを運営しているとなかなか人が集まらない時に焦りを覚えてしまう。そういう時こそ地に足を着けてベストを尽くせばいいのだろうが、ついつい自分中心の考え方になってしまう。気をつけねば・・・。

昨日に引き続きショスタコーヴィチでも聴こうかと考えたが、ついついひと世代上の、これまた独自の「色」を追求した作曲家の有名作がカップリングされた音盤を取り出した。バルトークの音楽は数学的であり、まったく一分の隙もないほど洗練を極めているが、これがわずか60数年前に創造された音楽であることと、故国を離れて感傷に浸る余裕もないまま心身ともに極限の疲労状態の中で書かれたとは思えない高みに達しながらも、今や古典と化しているところが一層凄いところ。バルトークよりこれまた一世代上のヤナーチェクの音楽も、いかにもチェコらしい土俗的な中に高貴な音調を織り交ぜた独特の作曲法に見事な「才能」を感じる。

それら同質のようで実は不思議に相容れない二人の大作曲家の著名な音楽を一枚に収めたプレヴィン壮年期の録音。今やほとんど話題にもならず、顧みられることもないだろう音盤だが、僕は愛聴する。出色はやっぱり「オケコン」か。この音楽のバロック的な一面を初めて感じさせてくれた名演奏。

バルトーク:管弦楽のための協奏曲
ヤナーチェク:シンフォニエッタ
アンドレ・プレヴィン指揮ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団

ところで、昨今世間を騒がせている「シンフォニエッタ」は、Emerson, Lake & Palmerがロック音楽にアレンジしてファースト・アルバムに収録したことでロック・ファンにはよく知られている。題してKnife Edge。同盤に収められているThe Barbarian(こちらはバルトークの「アレグロ・バルバロ」をアレンジ)とあわせ最高にかっこいい!

King_Crimson_Red.jpgそのEL&Pと時代を分けたプログレ界の重鎮King Crimsonの最高傑作を久しぶりに聴く。僕はこのアルバムのB面(CDではラスト2曲)が宇宙の全てを覆い尽くした(大袈裟!苦笑)最高の表現だと信じて疑わない。Led Zeppelinの「Presence」同様、ロック音楽の究極を創出しているように思うのだ。

King Crimson:Red

Providenceという名の最強のインプロヴィゼーション!!暗闇から浮き出すDavid Crossの暗鬱なヴァイオリンの音色を船頭にし、John Wettonのベースがこれでもかといわんばかりに唸り、咆哮する。静謐な調子でRobert Frippにより奏されるメロトロンとBill Bruffordのテクニカルなパーカッションが絡み、音楽はますます緊張感を駆り立てる。そして、続くStarless!!!この音楽こそは涙なくして聴けないKing Crimsonの最高傑作である。全盛期クリムゾンのステージを一目観たかった・・・(涙)。

Sundown dazzling day
Gold through my eyes
But my eyes turned within only see
Starless and bible black

ところで、中川五郎氏の邦訳はいまひとつピンと来ない。Palmer-Jamesの詩は相変わらず難解だが、ここは素直に感じてみてもいいところだろう。外に意識を向けるのではなく自身の中にある「神」に意識を向けよと。

そういえば以前どこかで読んだが、Frippはキング・クリムゾンを創設するにあたりストラヴィンスキーやバルトークの音楽を参考にしたという。叙情的な初期クリムゾンの音に比し、72年~74年のメタル・クリムゾンの音楽こそバルトークらに続く20世紀後半の傑作だと僕は思う。

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
20世紀、ラフマニノフ後、クラシック音楽は、作曲家と演奏者が分業になってしまいました。それが、時代を切り開く主役をロックなど他のジャンルに奪われた一因なのではないか?、ふと、そんなことを思いました。
Frippの音楽の持つ、夜の帳のような闇の表現の一面・・・、確かにバルトークなどの影響を感じる瞬間が多々あります。
King Crimsonの「Red」、この孤独感の深さは、シューベルトの「白鳥の歌」の、ハイネの6曲に匹敵します。 いや、まさにCrimsonの「白鳥の歌」です。
秋にこういう孤独な音楽を聴くと、反動で、無性に人恋しくなりますね(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>作曲家と演奏者が分業になってしまいました。それが、時代を切り開く主役をロックなど他のジャンルに奪われた一因なのではないか?
なるほど、おっしゃるとおりかもしれませんね。
>この孤独感の深さは、シューベルトの「白鳥の歌」の、ハイネの6曲に匹敵します。 いや、まさにCrimsonの「白鳥の歌」です。
同感です。雅之さんの言葉でますます先日のプライの「白鳥の歌」が聴きたくなりました。

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » ついつい・・・(苦笑)

[…] 10数年前まで”Rockin’ On”や「ミュージック・マガジン」を愛読していたが、ある時それもぱったりと止めてしまった。以来、ポピュラー系音楽の情報には俄然疎くなり、現在のアーティストの作品などきちんと聴いたこともないし、過去のものについてもリマスター盤がリリースされたなんていうニュースについてもオンタイムでキャッチすることがなくなってしまった。お蔭でロック音楽についてはほとんど浦島太郎状態。 たまたま渋谷のタワーレコードの3Fを覗いてみた。何と、マニア心をくすぐるKing Crimsonの40周年シリーズやPink Froydのデラックス・エディションが陳列されており、そのうちの1枚をついつい手に取ってしまった(苦笑)。 70年代クリムゾンの掉尾を飾る傑作”Red”。これまでも何度か形を変え発売されているから、何度購入したことことか・・・。今回のバージョンには、”Red”のトリオ・バージョンなどのボーナス・トラックのほか、1974年のライブ映像DVDが付録でついており、一切の迷いなくレジに走ってしまった。ただし、日本版が5,000円近いのに対し輸入盤は3,000円弱。悩んだ挙句、輸入盤を選択(この差は大きい)。 […]

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