自分について知ること・・・

Pollini_Stravinsky.JPG「他人と過去は変えられない」
来月の「早わかりクラシック音楽講座」に向けてマーラーのことを少し考えた。彼は19世紀末から20世紀初頭のウィーン宮廷歌劇場の音楽監督として君臨した指揮者でもあるのだが、厳しいリハーサルなど楽員に対する要求は常々半端なものではなく、いわば専制君主的なリーダーであった。そういえば彼の作曲した交響曲などのスコアを見ると、細かい指示が微に入り細を穿ち表記されており、自分が発想したテンポや音の強弱以外はまったく許さないというほど厳格なものである(プライベートにおいても妻であるアルマに対する過剰なほどの支配欲求は、彼がDVの素質を持ち合わせていた一種の精神病だったのではないかと思わせるくらいだ)。
マーラーの音楽は複雑で長大かつ重厚だ。それが魅力だという人もいよう。または人気の所以だろう。でも、歳をとってくると聴き続けるのが辛くなってくるのも事実だ。ガミガミと口うるさく彼の考えや感情を一方的に押し付けられているような気がしてくるのだ。そうはいってもマーラーの音楽が全面的に嫌いなわけじゃないですよ(笑)。

「シンプル」
俳句や短歌のように五七五という簡潔な様式の中に一切合財の感情や思考を表現することが、あるいはできることがとても重要なのではないかと最近思う。そこに表現されていることが深遠であろうと浅薄であろうと、解釈は受け手側の素養や器にお任せというのがベストのように思うのだ。とにかく「シンプル」に考えよう。

ヴェーベルン:ピアノのための変奏曲作品27
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

ヴェーベルンの生み出す音楽はどれもシンプルだ。ほとんどの楽曲が5分に満たない。しかもその中にあらゆる感情や思考が含まれていることが奇跡だ。ちなみに、この音盤にはプロコフィエフの「戦争」ソナタやストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」からの3楽章などの名演奏がカップリングされており、ポリーニは抜群のテクニックで20世紀の音楽を切れ味抜群かつニュアンス豊かに弾きこなしている。おそらく数ある彼の音盤の中で最も優秀で聴き応えある一枚だろうと僕は思う。

自分について知ることを学ぶ人は、過去の自分のままに留まってはいない。
トーマス・マン

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