クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルのワーグナー管弦楽曲集(1956-59録音)を聴いて思ふ

昨日の続き。
リヒャルト・ワーグナーの思想はいつも正論だ。しかし、彼はいつも自分のことを棚に上げる。あくまで自己中心的なのである。でないと、あんなにも誇大妄想的な作品は書けまい。

「古いユダヤの神は、いつもすべてをぶちこわす」とリヒャルトは言う。「大衆の愚鈍化によってかろうじてもちこたえているような宗教が死に絶えるのは火を見るよりも明らかだ。一方でリベラルな連中も、どっちつかずを決め込むしか能がない。古い神を手離すこともできず、かわりにキリストを否定する。どちらを見ても混乱ばかりだ」。
(1872年6月15日土曜日)
三光長治・池上純一・池上弘子訳「コジマの日記3」(東海大学出版会)P258

実にワーグナーらしい。何事においても固執するなということだろう。
ハンス・クナッパーツブッシュのワーグナー。
呼吸の深さ、恐るべきうねり、どこをどう切り取っても、音楽的にすべてを超越する魔法。

ワーグナー:
・楽劇「神々の黄昏」~第3幕「夜明けとジークフリートのラインへの旅」(1957.10録音)
・楽劇「神々の黄昏」~第3幕「ジークフリートの葬送行進曲」(1957.10録音)
・舞台神聖祝典劇「パルジファル」~第2幕「幼子のあなたが母の胸に」(1956.6録音)
・楽劇「ワルキューレ」~第3幕「ヴォータンの告別と魔の炎の音楽」(1958.6録音)
・楽劇「トリスタンとイゾルデ」~第1幕への前奏曲(1959.11録音)
・楽劇「トリスタンとイゾルデ」~第3幕「イゾルデの愛の死」(1959.11録音)
キルステン・フラグスタート(ソプラノ)
ジョージ・ロンドン(バス)
ビルギット・ニルソン(ソプラノ)
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

フラグスタートの歌うクンドリーの奇蹟。この、重みのある崇高な歌唱は、未来永劫人類の宝だろう。また、ロンドンのヴォータンの意味深さとともに、管弦楽の凄みが並大抵でない「ヴォータンの告別と魔の炎の音楽」の、他を冠絶する超絶名演奏。あるいは、「葬送行進曲」の悲哀に満ちた響き。

文明に関してリヒャルト・ヴァーグナーは、文明が音楽によって無力化せられることは、あたかも灯光の白日の光におけるごとくであると言っている。
塩屋竹男訳「ニーチェ全集2 悲劇の誕生」(ちくま学芸文庫)P71

死の影漂う「トリスタンとイゾルデ」第1幕前奏曲の妖しさ。ワーグナーの感覚を捉えることだ。
クナッパーツブッシュの確かな造形がそれに輪をかけ成長する。また、二ルソンの歌う「イゾルデの愛の死」の類稀な美しさ、実存感。

おだやかに、静かに 彼が微笑みながら
目をやさしく 見開く様子が
みなさんには見えているの? 見えないの?
しだいに明るく かがやきを増し、
星々に照らされて 空高く昇っていくのを・・・
(岩田倫和訳)

イゾルデの良心がトリスタンを包む様。この大らかさは、死をもって一体となる神秘の妙。
音楽が轟き、うねり、また唸る。

 

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