シェリング&イギリス室内管のヴィヴァルディ「四季」(1969録音)ほかを聴いて思ふ

時の移ろい。
世界共通言語である音楽の安寧に世界の平和を思う。
2019年が幕を開けた。

ひとつひとつの音を丁寧に鳴らすも、流れの沈潜するやや重い「四季」。
ソネットを意識しすぎているのか、どちらかというと物語が過ぎ、アントニオ・ヴィヴァルディが意図したものとは異なる音調のように思う。
しかし、たぶん、それがヘンリク・シェリングの方法なのだろう。
よく聴くと、「春」終楽章アレグロの重厚な響きこそニンフと羊飼いの舞踊の喜びを直接に表現するように思われる。
興味深いのは、「夏」、「秋」、と音楽が進むにつれ、シェリングのヴァイオリンが艶やかに、そしてまた、水を得た魚のように、ヴィヴァルディの世界を瑞々しく描き切るという点。ヴァイオリニストは音楽に共感し、意志を離れ、ほとんど直感的に作品を奏でているのだろうか。

「夏」第1楽章アレグロ・ノン・モルト―アレグロ、後半のアレグロ部はさすがにもう少しテンポを速めても良いかとは思うが、迫り来る嵐の恐怖を描くには適したテンポなのかも。続く、第2楽章アダージョから終楽章プレストにかけては叙景と叙情の双方を見事に描くシェリングの真骨頂。ヴァイオリンの音色が実に生々しい。

ヴィヴァルディ:
・ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」作品8(1969録音)
―第1番ホ長調RV269「春」
―第2番ト短調RV315「夏」
―第3番ヘ長調RV293「秋」
―第4番ヘ短調RV297「冬」
・ヴァイオリン協奏曲集「調和の霊感」作品3(1976録音)
―協奏曲第8番イ短調RV522(2つのヴァイオリンのための)
―協奏曲第6番イ短調RV356(ヴァイオリンのための)
―協奏曲第9番ニ長調RV230(ヴァイオリンのための)
―協奏曲第10番ロ短調RV580(4つのヴァイオリンとチェロのための)
ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン&指揮)
イギリス室内管弦楽団

「秋」第1楽章アレグロの、寂しさと温かさの同居。また、第2楽章アダージョ・モルトの精妙な歌の奥深さ。仲秋の名月を愛でるような光輝。しかしながら、この曲集の白眉は、「冬」だろう。
第1楽章アレグロ・ノン・モルトの幻想。
第2楽章ラルゴの安寧。何という名旋律!想いのこもる音楽は粘り、大自然の神秘に僕たちはときめくのだ。そして、終楽章アレグロに聴こえる希望の足音。

シェリングの全盛期の演奏には、熟練の明朗さとほとんど老境ともいえる渋さが明滅する。ちなみに、7年後に録音された「調和の霊感」(抜粋)は、古の巨匠を髣髴とさせる力強さ。第9番ニ長調RV230第2楽章の神々しさ。(第1楽章で4本のヴァイオリンが次々に独奏を交代する)絢爛豪華な音響の第10番ロ短調RV580の美しさ。
何にせよ「調和の霊感」とはよくぞ名付けたものだ。

2019年、謹賀新年。
世界が平和でありますよう。

 

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