ノット指揮ベルリン・フィルのリゲティ レクイエム(2002.11Live)ほかを聴いて思ふ

ジョナサン・ノットの指揮する20世紀の音楽は、理知と感覚のバランスが見事にとれているせいか、難解な作品がその後から極めて身近なものになる傾向がある(ように思われる)。僕は実演で触れるたびに(それが大抵メインのプログラムでないにもかかわらず)、いつもその鋭利な現代性と、それでもどこかに古の甘美さを含む二重性(の奇蹟)に刺激を受けてきた。

ジェルジ・リゲティの「レクイエム」。
第1曲「入祭唱」から背筋が凍りつくほどの恐怖や不安を煽る音楽。
そして、何よりスタンリー・キューブリック監督作「2001年宇宙の旅」でも使用された第2曲「キリエ」(5声の大フーガ)の、筆舌に尽くし難い官能(生と死は一体であり、いずれにも愛、すなわち官能が潜むことをノットは明確に示してくれる。ちなみに、5声は各々4声のカノンに分割され、最終的に20声(!)の合唱として表現される)。あるいは、第3曲「続唱」での劇的な声!!さらに、終曲「ラクリモサ」は、冒頭持続的に響く重低音から、一旦音は高音部に引き継がれ、徐に2人の独唱者が「ラクリモサ」と歌い出す瞬間のカタルシス。何と不思議な感覚なのだろう。

この作品は、ホモフォニー構造とポリフォニー構造とをバランス良く並べ、構想されたものだった。すなわち「入祭唱」はホモフォニー、「キリエ」はポリフォニーであり、「怒りの日」はホモフォニーの「島」をもつポリフォニー、そして「ラクリモサ」は、オーケストラを縮小しての2声のホモフォニー構造である。
~リゲティ自身による作品解説

実に「全脳的」音楽の極致。

リゲティ:
・ホルン独奏と(4本のホルンのオブリガート付)室内オーケストラのためのハンブルグ協奏曲(1998/99, 2003)(マリー・ルイズ・ノイネッカーに捧ぐ)(2002.10.3録音)
マリー・ルイズ・ノイネッカー(ホルン)
ジュビレ・マーニ、シモン・ブレイアー、トーマス・バーンスタイン、オザン・チャカーシュ(ナチュラル・ホルン)
・フルート、オーボエと管弦楽のための二重協奏曲(1972)(2002.10.2録音)
ハインツ・ホリガー(オーボエ)
ジャック・ズーン(フルート)
・12の独奏弦楽器のための「ラミフィカション」(1968/69)(2001.9.12-16録音)
シェーンベルク・アンサンブル
ラインベルト・デ・レーウ指揮ASKOアンサンブル
・ソプラノ、メゾソプラノ、混声合唱と管弦楽のための「レクイエム」(1963/65)(2002.11.8-11Live)
カロリーネ・スタイン(ソプラノ)
マルタリーオ・ファン・ライゼン(メゾソプラノ)
ロンドン・ヴォイセズ
ジョナサン・ノット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

東洋的な侘び寂の匂い湧き立つ「二重協奏曲」の粋。
独奏者の息継ぎの音までもがリアルに響く様は、呼吸(管楽器)こそが生の証であることを示すのだろうか。第2楽章アレグロ・カレントの未来音楽的幻想感が堪らない。

オーボエの音色とフルートの音色は、より対極の響きではあり得ない。気柱の振動とリードの振動はまったくの別世界ゆえ。
~リゲティ自身による作品解説

そして、12人の弦楽器奏者による「ラミフィカション」の、限界にまで近い呼吸の深さに驚愕。文字通り、音が枝分かれし、木魂が木魂を呼ぶ様に、大自然の脅威と驚異を想像する。何てかけがえのない音楽。

 

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