プレヴィン、ローゼンフェルド&ホフマンのラヴェル三重奏曲(1992.9録音)ほかを聴いて思ふ

暗黒の雲の隙間から見える少し欠けた月が素敵だ。

クロード・ドビュッシー18歳。
ヨーロッパ旅行に同行してくれるピアニストを探していたロシアの富豪、ナジェージダ・フォン・メック夫人。1880年7月20日、ドビュッシーはスイスのインターラーケンに滞在中のメック夫人に合流、その後、フランス、イタリア各地へと一家に同行することになる。

おそらく旅の様々な印象、あるいは諸相が反映されているのだろう、当時、フィレンツェで作曲したとされるピアノ三重奏曲は、その後のドビュッシーの音調とは異なる、イタリア的明朗さに満ちている。

アンドレ・プレヴィン63歳。気の合った仲間たちとの、気楽な雰囲気の中で演奏された可憐な録音は、高揚する遊び心に溢れ、聴いていて実に楽しい。

・ドビュッシー:ピアノ三重奏曲ト長調(1880)(1992.9.1-3録音)
アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ジェリー・ローゼンフェルド(ヴァイオリン)
ゲイリー・ホフマン(チェロ)

愉快な第2楽章スケルツォの諧謔、そして神聖な第3楽章アンダンテ・エスプレッシーヴォ。旋律の美しさこの上ない。プレヴィンのピアノが歌う。

ジャズ・ピアニスト、アンドレ・プレヴィン27歳。
初演されたばかりのミュージカル「マイ・フェア・レディ」からのナンバーを、シェリー・マンのトリオで、まるでリーダーであるかの如く果敢に、そして挑戦的にピアノを操る。例えば、青年フレディがイライザの住む家の通りで求愛の歌を歌うシーンの、”On The Street Where You Live”冒頭は、気のせいかドビュッシーの「月の光」の木魂が聴こえ、プレヴィンの想いのこもったプレイと相まって、とても感動的な演奏に仕上がっている。
続く、バラード”I’ve Grown Accustomed To Her Face”は、同じくピアノが静かに響くプレヴィンの官能的なピアノが印象に残る。

・Shelly Manne and his Friends modern jazz performances of songs from MY FAIR LADY (1956)

Personnel
Shelly Manne (drums, leader)
André Previn (piano)
Leroy Vinnegar (bass)

軽快かつ勢いのある”Ascot Gavotte”は、スピード感のあるベースラインがなんともかっこいい。そして、”I Could Have Danced All Night”の喜び!

再びクラシック・ピアニスト、アンドレ・プレヴィン63歳。
ラヴェルが三重奏曲作曲の最中、第一次世界大戦が始まる。そして、この曲を書き終えた後、彼は自ら志願して従軍する。その意味では、ラヴェルの遺書的な機能を持つ作品。

・ラヴェル:ピアノ三重奏曲イ短調(1914)(1992.9.1-3録音)
アンドレ・プレヴィン(ピアノ)
ジェリー・ローゼンフェルド(ヴァイオリン)
ゲイリー・ホフマン(チェロ)

オリエンタルな、それでいてソフィスティケートされた雰囲気を醸す、いかにもフランス的な洒落っ気。真面目に、厳粛に、プレヴィンはピアノを奏するが、ジャズ的自由さがそこかしこに垣間見られ、彼の心底にある「遊び」の精神が縦横に飛翔する。第1楽章(モデレ)コーダの、ピアノの静かな語りが素敵。第2楽章(パントゥーム)の解放感、そして、第3楽章(パッサカリア)の荘厳さに祈りを添える(何という詩情!)。特に、終楽章(アニメ)の朧な煌きに、僕はいつも恍惚となる。

三人寄れば文殊の知恵というけれど、はたまた早起きは三文の徳と言うけれど、三という数の持つ力は、とても不思議だ。
トリオが美しい。

 

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