ピアニスティックでメロディアスで・・・

合気道の稽古を終え、小雨降る中自転車で税務署を回って後帰宅した。
久しぶりにNHK-FMをつけたところ、何と吉田秀和氏の「名曲の愉しみ」だった。
何年ぶりに聴いたんだろう?
かつて、クラシック音楽を覚え始めの頃には本当によくお世話になった。ひとりの作曲家を採り上げ、何回か連続で放送されるこの番組は吉田さんの好々爺的な語り口調と、とても的確な言い回しが特長で、本当に何十年と放送されている長寿番組である。ここで流された音楽を昔はよくエアチェックして繰り返し聴いた。そして、吉田さんの書籍を片っ端から買い込んで、読んだ。その示唆に富んだ表現にいつも魅了された。
どうやら最近はラフマニノフを連続で採り上げておられるよう。

そうか、もうそろそろ今年もゴールデン・ウィークだ。2012年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」は「ロシアの祭典」である。2月から3月にかけてショスタコーヴィチを含め徹底的にロシア音楽にこだわって聴き続けてきたが、ここ数日は少し別のところに意識を置いていた。せっかくだからまたしばしロシアものに浸ろうか・・・。

ということで、ラフマニノフを。それもとてもオーソドックスな演奏で。

ラフマニノフ:
・前奏曲嬰ハ短調作品3-2(1892)
・10の前奏曲作品23(1901-03)
・13の前奏曲作品32(1910)
・ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調作品36(1913)
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)

ピアニスティックでメロディアスで・・・、ラフマニノフの音楽はいつも哀愁感に満ち、涙を誘う。この24の前奏曲は、ほぼ10年おきに都合20年にわたって書き継がれたものである。それぞれの時代の特徴を表すが、作品32などは全盛期の頃のもので、全く一部の隙もない。
当時、モスクワで同じく名声を馳せていた音楽家はほかにスクリャービンメトネル。神秘主義を標榜していたスクリャービンは特定の音楽評論家に祭り上げられていたそうだし、メトネルは一部の限られた崇拝者のサークルのみによる閉鎖的な人気だったらしい。その点、ラフマニノフの人気は違う。ロシアの国境をはるかに超える全世界的なものだったよう。
確かに3者の中では最もとっつきは良い。しかし、それだから音楽的に上だとか下だとかは語れない。いずれもが相応の個性を発揮しており、あとは好き嫌いによる。もちろん気分次第で聴き分けるというのもあり。ちなみに僕はいずれの作曲家も好き。

ところで、アシュケナージについて。いつぞやアルゲリッチの独奏でシューマンだったかチャイコフスキーの実演を聴いたとき、やっぱりこの人もピアニストに徹するべきではなかったのかと思った。それくらいにアシュケナージのピアノはある意味完璧で乱れがなく、全くの正統派。その音楽を理解するためにこれ以上のものはないといえる。そう、模範的で優秀で。こういう表現はよく使われるが、それを決してネガティブな意味では僕は捉えたくない。
なぜならどれもが真に素敵だから(曖昧な言い方だけれど・・・笑)。もちろんこのラフマニノフのアルバムについても。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
アシュケナージのラフマニノフ、美しいですよね。

アシュケナージが弾いたピアノの超美音というのは、彼にしか出せない、超個性的な音だと私は昔から感じています。ある程度のピアノ・ファンだったら、彼のどのCDでブラインドテストをやられても、アシュケナージの音だと言い当てることができるんじゃないですかね。こういうピアノの音が出せるって、真に余人をもって代え難い、もの凄いことなのでは・・・(もちろん専調律師の影の努力の賜物もあるのでしょうが)。
決して教科書的で優等生的というだけでは語り尽くせないピアニストだと思います。

彼が弾いたベートーヴェン後期のピアノソナタ(特に最後の3曲)もとにかく美しくて大好きですが、近頃の愛聴盤はやっぱりこれかな。

バッハ 平均律クラヴィーア曲集 全曲 アシュケナージ(p)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1391032

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>こういうピアノの音が出せるって、真に余人をもって代え難い、もの凄いことなのでは・・
>決して教科書的で優等生的というだけでは語り尽くせないピアニスト

おっしゃるとおりですね。
とはいえ、残念ながら僕はご紹介のベートーヴェンのソナタもバッハも未聴です。
勉強してみます。
ありがとうございます。

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