スコット・ロスのスカルラッティ ソナタ全集(1984-85録音)Kk31-Kk48を聴いて思ふ

天の啓示のようなハープシコード。
数百年の時を超え、なお燦然と輝くソナタたち。

2人の人間が、それぞれの楽器で彼らのような完全の域に到達したことはいまだかつてないが、両者はその表現法において全面的に異なっていたことは特筆に値する。スカルラッティの特徴的な素晴らしさは表現におけるある種の上品さや繊細さにあった。ヘンデルは類いまれな輝きと指さばきを持っていたが、同様な資質を持った他の演奏家とは、彼が身に付けたその驚くべき豊かさ、力、そしてエネルギーにおいて異なっていた。
ラルフ・カークパトリック著/原田宏司監訳・門野良典訳「ドメニコ・スカルラッティ」(音楽之友社)P48

力強さを保つのは、スコット・ロスの演奏によるものなのだろう。
30数枚、555曲という大部からどこをどう切り取っても、煌びやかで、また繊細なスカルラッティの音がする。

ドメニコ・スカルラッティ:ソナタ全集
・ソナタト短調Kk31(L231/P19)
・ソナタニ短調Kk32(L423/P14)
・ソナタニ長調Kk33(L424/P130)
・ソナタニ短調Kk34(S7/P15)
・ソナタト短調Kk35(L386/P20)
・ソナタイ短調Kk36(L245/P91)
・ソナタハ短調Kk37(L406/P2)
・ソナタヘ長調Kk38(L478/P97)
・ソナタイ長調Kk39(L391/P53)
・ソナタハ短調Kk40(L357/P119)
・ソナタニ短調Kk41(P37)
・ソナタ変ロ長調Kk42(S36/P120)
・ソナタト短調Kk43(L40/P133)
・ソナタヘ長調Kk44(L432/P116)
・ソナタニ長調Kk45(L265/P230)
・ソナタホ長調Kk46(L25/P179)
・ソナタ変ロ長調Kk47(L46/P115)
・ソナタハ短調Kk48(L157/P87)
スコット・ロス(チェンバロ)(1984.6-85.9録音)

目の前で演奏が繰り広がられるかのように感じられるリアルな音像。
ハープシコードという楽器の、自然な音が心に優しい。

スカルラッティはスペインで外国人が襲われる脅威からは逃れられたようである。彼にとってそれは刺激であった。絶望や憂鬱という深淵の上で、彼は従来にない快活さと感受性を持って、また時には綱渡り芸人のような俊敏さを持って踊っていたように見える。彼生来の無的な活力は、スペインでその全面的な表出の場を見いだしたのである。
~同上書P98-99

環境の変化によって与えられた活力は、作曲家の創造力を刺激する。
可憐だ、嗚呼、革新だ。例えば、ソナタヘ長調Kk38(L478/P97)アレグロの快活さと優美さは、聴く者にも大いなる活力を与えてくれる。

 

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