生命力

mendelssohn_walpurgisnacht_dohnanyi.jpg近藤恵三子画伯改め、閨秀画家近藤恵三子氏の聖路加画廊での個展に伺う。15点の日本画が展示されていたが、相変わらず良い絵を描く。自然、野菜がテーマの絵画は、自ずと生命力を感じさせるが、中でも蓮根を描いた1枚が気に入った。

彼女曰く、「泥の中から取り出した蓮根を見て、はたと気づいた」のだと。つまり、自分が描く絵は見えない宇宙から派生し、見えない宇宙にまた抜けていくのだと。なるほど、まさに宇宙の根っことつながるということだ。そういえば音楽もそうだという話になった。演奏家は楽譜から見えない何かを読みとり、自身を「パイプ」にして音楽を奏でているのだと。そう、あくまで「パイプ」の役目。要は「中庸」ということだ。余計に主張することなく、かといって控えめ過ぎない、「楽音」だけを感じさせる世界こそが人々を癒すのじゃないか。

宗教というのはある意味「概念」の押し付けである。キリスト教だってイスラム教だって、あるいは仏教だって元々は同じところから出ているはず。限りなく「0(ゼロ)」、そんな生き方、発想を試みたいと思う。

メンデルスゾーンの音楽は「中庸」だと昨日書いた。そういえば本来ユダヤ教であったものをある時期にキリスト教に改宗していることを思い出した。おそらくそれは親心から発想されたことだろうが、彼の中にはいくつもの人格があったはず。その人格が無意識に統合され、実にメンデルスゾーンという存在に昇華されたのではないか。そんなことを彼の宗教音楽を聴きながら思い起こした。

メンデルスゾーン:
・カンタータ「最初のワルプルギスの夜」作品60
ウィーン楽友協会合唱団
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
宗教合唱曲集
・讃歌「聞けぞかしわが祈りを」
・詩篇第2番「いかなれば諸々の民の立ち騒ぎ」作品78-1
・詩篇第43番「神よ、われを裁きたまえ」作品78-2
・6つのアンセム作品79
トーマス・ローズ(ボーイ・ソプラノ)
クリストファー・ヒューズ(オルガン)
スティーヴン・クレオベリー指揮ケンブリッジ・キングズ・カレッジ聖歌隊

聖なる歌。音楽しか感じさせない至高の芸術。クレオベリーの力量もあろうが、やっぱりメンデルスゾーンの作曲能力の為せる技。身を浸せば浸すほど、宇宙とつながるような感覚を呼び覚まされる。それこそ「生命力」の根源。

※「最初のワルプルギスの夜」についてはまだまだ聴き込みが足りない。もちろんゲーテの原作についてもよく知らない。芸術を理解する上で社会的背景のほかにあらゆる学問に精通することが大事だと思うが、凡人にあってそれは難題。一生涯かけて勉強することかな。真に奥深い世界なり。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>演奏家は楽譜から見えない何かを読みとり、自身を「パイプ」にして音楽を奏でているのだと。そう、あくまで「パイプ」の役目。要は「中庸」ということだ。余計に主張することなく、かといって控えめ過ぎない、「楽音」だけを感じさせる世界こそが人々を癒すのじゃないか。
つまり、演奏家は宇宙の声を伝える「巫女」だということですか。
ジャズもそうですか。「ジャズメンというのは、空中から音楽を取りだすように、瞬間にそれをつかまえることで活動が成り立っている」(青柳いづみこ『我が偏愛のピアニスト』より)
>宇宙とつながるような感覚を呼び覚まされる。それこそ「生命力」の根源。
作曲家も宇宙の声を伝える「巫女」だということですか。
だとすると、「中庸」を心がけて生きようが、無意識で「極端」な人生を送ろうが、私達ひとりひとりも宇宙の声を伝える「巫女」だということには変わらないんじゃないでしょうか。
「COSMOS」 作詞・作曲 ミマス
http://www.youtube.com/watch?v=icqdojMUwww
http://j-lyric.net/artist/a04d34f/l00b5df.html
メンデルスゾーン「最初のワルプルギスの夜」については未聴なのですが、「ワルプルギスの夜」の行事そのものも含め、自由研究のテーマとしても、とても面白そうです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>宇宙の声を伝える「巫女」
>作曲家も宇宙の声を伝える「巫女」
そういうことでしょうね。ただし、全ての演奏家、作曲家がそういう役割を担っている(そういう状態になっている)かどうかはわかりませんが、少なくとも状態の良い時は「パイプ」になっていると妻は言っております。
>私達ひとりひとりも宇宙の声を伝える「巫女」だということには変わらないんじゃないでしょうか。
その通りですね。宇宙も広いですから結局「どこと」つながるかが問題なんだと思います。
>「ワルプルギスの夜」の行事そのものも含め、自由研究のテーマとしても、とても面白そうです。
この音盤、メンデルスゾーンの記念の年に買ったもののほとんど聴かずにしまっていたものですから僕もまだまだ研究不足です。同じく僕も勉強いたします。

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