J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」は偉大である。こんなにも精密に構成され、しかも飽きの来ない音楽は古今東西広しといえどもなかなか見つかるものではないだろう。アリアに始まりアリア・ダカーポで終わるという、まるで輪廻転生のような造り。そして、その主題の間には性格を異にした30もの変奏が「宇宙の真理」に則って繰り広げられるという妙味。それに、3変奏毎にカノンが現れるという事実と、基本的に調性がト長調の音楽の中で、3回だけト短調になる(第15、21、25変奏)という光と翳をこれほどまでに巧みに組み合わせた創造物はまずないといっても良い。
本日の第20回「早わかりクラシック音楽講座」のテーマは、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。もう何度聴いたかはっきりしないくらい人生のポイントで涙させていただいた至高の芸術作品。講座の詳細報告は別に譲るが、今回はできるだけ多くの音盤を聴いていただこうと種々様々な演奏をとっかえひっかえCDトレーに乗っけた。グレン・グールドの新旧録音、そして昨日採り上げたザルツブルク・ライブ。ニコラーエワの新盤、ヒューイットの演奏、そしてレオンハルトがチェンバロで演奏したもの。さらにはシトコヴェツキー編曲による弦楽三重奏版と弦楽合奏版。嗚呼、どんなアレンジで聴こうとこの音楽に秘められた神秘性は揺るがず、人間の持つあらゆる感情を表現した人類の至宝であることは間違いない。しつこいようだが、この音楽を知らずして「人間」を語ることなかれ。それほどまでに人生の全てがこの中にはある。
とにもかくにも「ゴルトベルク変奏曲」を聴き給え!
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