シンクロニシティ

頭の中で「会いたい」と思っていた知人とばったり街中で会うことがよくある。必要な時に必要な形で現れる。いわゆる「シンクロニシティー」という現象。
今日も所用で新宿西口に行きついでにふとある知人に話がしたいと思い電話したところ何と目と鼻の先にいた。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調(ハース版)を聴く。
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団(1975年聖フローリアン・ライブ)

朝比奈隆の演奏を初めて聴いたのは1980年10月、フェスティバルホールでの定期演奏会。その時の演目がまさしくこの曲であった。当時、ブルックナーの「ブ」の字も知らなかった僕は一撃洗礼を受けたことを思い出す。そして早速手に入れたのが、上記のLPであった。来る日も来る日も没頭して聴いた。聴いて、聴いて擦り切れるほど聴いた。
特に、第2楽章アダージョの美しさは空前絶後。その音の中にずっと浸っていたいと思ったほど甘美なメロディーとオーケストレーション。そして残響の多い温もりのある録音。
ブルックナーはこの曲のまさにこの楽章を作曲中に師と仰ぐワーグナーの訃報に接し、急遽コーダの部分に葬送行進曲を組み込んだ。偶然か必然か。シンクロニシティ。

そして、本盤は1975年10月12日、ブルックナーの聖地、聖フローリアン教会での大フィル特別演奏会の実況録音。第2楽章が長い残響に包まれ、最後の音が消えた瞬間、神のご加護ともいうべき5時を告げる教会の鐘が厳然と鳴り響いたということである。
朝比奈は後日その時のことを著書で次のように回想している。

「十分な間合いを持たせて第2楽章の最後の和音が消えた時、左手の窓から見える鐘楼から鐘の音が1つ2つと4打。私はうつむいて待った。ともう一つの鐘楼からやや低い音で答えるように響く。静寂が広間を満たした。やがて最後の鐘の余韻が白い雲の浮かぶ空に消えて行った時、私は静かに第3楽章への指揮棒を下ろした。」

何と感動的な・・・。偶然か必然か。またしてもシンクロニシティ。

いずれにせよ、この音盤は日本人指揮者が日本のオーケストラとともに聖地で録音した歴史的名盤。一人でも多くの方に耳にしていただきたい。

⇒旧ブログへ


1 COMMENT

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む