ロストロポーヴィチ アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ ハイドン協奏曲集(1975.11録音)を聴いて思ふ

チェロの音色の光輝満ちる深み。
さすがにロストロポーヴィチの右に出る者はいない。
ニコラウス・エステルハージ候に仕えていたヨーゼフ・ハイドンの一作。仕えることは敬うことであり、それは無条件だ。ハイドンの作品の根底に流れるものは「敬愛」だといえる。
協奏曲ハ長調。抑揚のある、思いのこもる音楽は、颯爽たる第1楽章モデラートに始まり、安寧の第2楽章アダージョを経、前のめりの、勢いある終楽章アレグロ・モルトに終わる。特筆すべきはベンジャミン・ブリテンによる短いカデンツァ。
ブリテンの音楽に通底する、暗鬱さと明朗さを併せ持つ「矛盾の音調」がここでも聴きとれる。それは、まるでハイドンの内側にあった抑圧と自由の双方を織り成し音化したような優れもの。深い、あまりに深い。

ハイドン:
・チェロ協奏曲第1番ハ長調Hob.VIIb:1(1760-65/1780)
・チェロ協奏曲第2番ニ長調Hob.VIIb:2(1783)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
アイオナ・ブラウン指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ(1975.11.15-16録音)

皐月の高原は30余年ぶり。
夜半の虫の大合唱がハイドンの音楽と同期し、大いなる幸福感を醸す。
協奏曲ニ長調。第1楽章アレグロ・モデラートの伸び伸びとした主題の喜び。ロストロポーヴィチ自作のカデンツァは縦横無尽。また、第2楽章アダージョの愛らしい音楽に癒され、思わず涙する。何て美しいのだろう、何て心に迫るのだろう。そして、終楽章ロンドの、まるでモーツァルトのように哀しみを秘めた愉悦の音。

目的がはっきりしていると、恐いものはないんですよ。
(ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ)

世界が一つであることを示すハイドンの音楽。
すべてが協同でなければならないことを表わすハイドンの音楽。
ロストロポーヴィチの心からの共感が伝わるチェロ協奏曲の魔法。納得だ。

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