アイヴァー・ボルトン指揮読売日本交響楽団第627回名曲シリーズ

年末の風物詩、ベートーヴェンの「第九」。
今宵のサントリーホールはほぼ満員。

ノン・ヴィブラート奏法による、流行りのスタイルは、僕たちの心に直接響く。テンポは総じて速め、というより中庸。楽器の浮き沈みはメリハリが効き、時に室内楽風の音響を醸す様子に、ベートーヴェンの「革新」を思った。ベートーヴェンは偉大だ。

アイヴァー・ボルトンの指揮は熱い。
第1楽章アレグロ・マ・ノン・トロッポ,ウン・ポコ・マエストーソは、冒頭の混沌からいかにも鋭い、稲妻が走るような音がした。強烈なアタックが放たれたと思いきや、突如として音が抑えられ、ベートーヴェンの苦闘の精神が何とニュアンス豊かに表現されたことか。続く第2楽章モルト・ヴィヴァーチェがどれほど素晴らしかったか。この熱狂の祝祭が、一切の弛緩なく進められる様子に感激、また、トリオの切ない愛の表現に僕は唸った。

ボルトンの生み出す音楽は、楽章を経るごとにますます熱を帯びる。
第3楽章アダージョ・モルト・エ・カンタービレは、余計な思い入れを排し、ベートーヴェンの音楽だけを感じさせるよう颯爽と奏された。何て美しくもエネルギッシュなパフォーマンスなのだろう。終盤の金管楽器の強奏に痺れた。

読売日本交響楽団第627回名曲シリーズ
2019年12月20日(金)19時開演
サントリーホール
シルヴィア・シュヴァルツ(ソプラノ)
池田香織(メゾソプラノ)
小堀勇介(テノール)
トーマス・オリーマンス(バリトン)
新国立劇場合唱団(三澤洋史:合唱指揮)
小森谷巧(コンサートマスター)
アイヴァー・ボルトン指揮読売日本交響楽団
・ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」

ちなみに、抑制された意味深い音調の終楽章プレストは、合唱部分を盛り上げるための伏線だったのか、低弦による歓喜の主題は朗々と歌われるも決して大袈裟でなく心に染み入るものだった。そして、バリトンのレチタティーヴォからいよいよ音楽は開放され、合唱が”Freude”と発するときには、会場を興奮の坩堝と化すだけの力と気魄に満ちていた。ここからはボルトンの本領発揮。4人の独唱者ではバリトンのオリーマンス、ソプラノのシュヴァルツはもちろんのこと、テノールの小堀勇介が光った。
白眉はやはり強力な磁力の働くコーダの熱演だろうか。
指揮も、オーケストラも合唱も、そして独唱陣も一体となっての人類、否、宇宙賛歌!!
ここには歌があった。「第九」は、聴力を失ったベートーヴェンの、言語を絶する画期作だとあらためて認識する。

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