King Crimson “Live in Newcastle” (1972.12.8Live) (2019)

まずライヴをやり、オーディエンスのフィードバックを得てスタジオに入り、ライヴ・レコーディングによって音楽を創造する。通常のように、まず曲を作り、レコーディングし、プロモーションのためにライヴを行うのではなく・・・。
エリック・タム著/塚田千春訳「ロバート・フリップ―キング・クリムゾンからギター・クラフトまで」(宝島社)P95

これぞキング・クリムゾンの方法。

キング・クリムゾンの爆発的破壊力。
1969年12月16日のフィルモア・ウェストでのギグの音をはじめて聴いたとき、僕は涙が出た。レンジの狭いカセットテープ録音であるがゆえの真実味とでもいうのか、音楽は終始荒れ狂い、重厚な音響をもって僕の耳を直撃したが、そこにはずっと自然体の調和というものがあった。そして、「宮殿」という完璧なアルバムが、実は、あくまでライヴを焼き直した、世間にバンドの素晴らしさを訴えかけるための名刺代わりの代物であったのだということを知った。

それから3年後。明らかに彼らが、ロバート・フリップ以外のメンバーが完全に入れ替わったとはいえ、ライヴ・バンドであることをあらためて証明する、強烈な熱量ほとばしる「太陽と戦慄」ライヴを聴いて、僕は卒倒した。言葉がない。
全英ツアーの大詰めは、1972年12月8日、ニューカッスル、オデオン座でのギグ。
3ヶ月後にリリースされるアルバムに収録される楽曲たちが、ほぼ完成形となって、生命力蠢く、そしてメンバー5人の意志が完璧に同期した状態で(とはいえ即興的に)奏されるのだから堪らない。

ほとんど1ヶ月もないほどのリハーサルを後にして、キング・クリムゾンは10月にフランクフルトの「ズーム・クラブ」で4回、「レッドカー・ジャズ・クラブ」で1回のギグを行ない、11月10日から12月15日にかけての全英ツアーでは、27回のギグを行なった。この時期のキング・クリムゾンの演奏には、斬新で力強いインプロヴィゼイションが加わる。それはジャズやロックにありがちなインプロヴィゼイション―プレイヤーや一人ずつステージの真ん中に出てきてジャカジャカ弾き、そのあいだ他のプレイヤーは後ろで休んでリズムやコード・チェンジをする程度のもの―ではなく、彼らの場合、最高に気分が乗っている時はメンバーが一丸となっていつでもクリエイティヴに貢献できるという、一種の音楽を作っていくプロセスに似ていた。無意味な個人のソロは排除され、全員が常に他のプレイヤーに耳を傾け、グループの音の調和を取りながら、知的にそしてクリエイティヴに対応できるように。当時はちょうどフリップが再び「マジック」を主張していた時期で、このインプロヴィゼイションが見事にはまった時は、まさにホワイト・マジックといったところだった。
~同上書P94

音楽の在り方を見事に体現するロバート・フリップ、ジョン・ウェットン、ビル・ブルーフォード、デヴィッド・クロス、そしてジェイミー・ミューアの織り成す完璧なる大歓喜の創出。当時、実際にこのギグを見たシド・スミスは次のように書く。

「太陽と戦慄パート1」冒頭の素っ気ないヴァイオリン、ずっしりと重いリフ、驚異のクロス・ピッキング、「私たちはお互いに手の内を見せ合う、隠しごとはもう何もない」と歌うウェットンの憂鬱げな声、奇妙なドローン音、どこからともなく聞こえる声、娯楽場にいるような笑い声、不吉な風、「太陽と戦慄パート2」の破壊力。私は個の「夜の錯雑、昼の喧騒」を生かし続けようとし、延々と頭の中でループ再生した。あの夜に沸き起こった熱い思いを何としても失うまいと必死だった。
~IECP-10366ライナーノーツ

アルバム発表前の聴衆は、未来の音楽を一音も逃すまいとキング・クリムゾンの音を必死で追いかけた。

・King Crimson:Live in Newcastle (1972.12.8Live)

Personnel
David Cross (violin, flute, mellotron)
Robert Fripp (guitar, mellotron)
John Wetton (bass guitar & vocals)
Bill Bruford (drums)
Jamie Muir (percussion & allsorts)

冒頭”Larks’ Tongues in Aspic Part One”から音楽は悲鳴を上げるように無慈悲に進む。中で、クロスのヴァイオリンが何と癒しの音を醸すことよ。この曲が終わった直後のフリップのアナウンスがまた静かで落ち着いているものの、(皮肉っぽく聞こえ)強烈だ。

いまの曲は〈太陽と戦慄パート1〉という。〈太陽と戦慄パート2〉で今宵の音楽は幕を閉じるものの、しばらくはまたしても不埒な音楽を続けよう。

続く”Daily Games”、後の”Book of Saturday”は、ウェットンの声に魂が乗る。”Exiles”も”Easy Money”(スタジオ録音最後の笑い袋のSEがおそらくミューアだろうか、彼の不敵な笑い声によって再現されている)もライヴならではのエネルギーを発するが、恐るべきは2曲のインプロヴィゼイション曲。特に、”The Talking Drum”前の17分半に及ぶインプロヴィゼイションのマジック!!まるで異次元世界と交感するような宇宙的規模の傑作。5人が一斉に交わるときの(9分過ぎ以降)筆舌に尽くし難い官能(このとき聴衆は一体どんな状態にあったのだろう?)。
最高潮は、やはり”Larks’ Tongues in Aspic Part Two”だろうか(カセット録音のテープ終了のため途中で切れているのが至極残念)。猛烈な音圧が、聴く者の魂までつんざくよう。

・King Crimson:Larks’ Tongues in Aspic (40th Anniversary Series)

Personnel
David Cross (violin, viola, mellotron)
Robert Fripp (guitar, mellotron & devices)
John Wetton (bass, vocals & piano)
Bill Bruford (drums)
Jamie Muir (percussion & allsorts)

ロック史上永遠のアルバム。音楽のジャンルを超え、歴史に燦然と輝くホワイト・マジック。確かに、聴衆を前にしてのライヴ・ギグほどのパワーはない。それでもこの、整然としたメタル・ミュージックの、地鳴りの如くの音は、いまだに僕たちの脳天に刺激を与えてくれるのだ。
フリップのギターがうねり、ウェットンのベースが駆け、クロスのヴァイオリンとメロトロンが静かに、また女性的に旋律を奏する。

「太陽と戦慄」では、メンバー全員が均等に貢献している。当然フリップが陰でまとめ役をやっているわけだけど。
(デヴィッド・クロス)
~同上書P95

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