モスクワ音楽院大ホール100周年記念CD

moscow100anniversary.jpg今月25日(日)には杉並公会堂小ホールで愛知とし子のリサイタルが開催される。演奏者本人も準備に余念がないだろうが、僕は僕でたくさんの友人に聴いていただきたいと日々営業活動に勤しんでいる。今日もお昼にはYと、そして夕刻にはOと久しぶりに再会し、チケットをご購入いただいた。当たり前のことだが、どんなことでもお客様あっての仕事であるゆえ、感謝の気持ちを決して忘れてはならないし、ご来場いただいた方にご納得いただけるサービスを提供しないことには未来もないと思うので、常に「謙虚」に「想い」をもって皆に接しようと心がけている。そういう僕もつい2年ほど前までは多少高慢な自分がいたものだから、それを戒めるかのように日々自らを省みることにしている。
「他者への想い」などと簡単に口にする輩は多いが、行動が伴わない限り「絵に描いた餅」。本当にできる人は自分が「できること」を決して自慢しないし、ある意味「黙々」と仕事をやってのける。不言実行というのも重要なことなのかもしれない。

昨日からラフマニノフやスクリャービンなど20世紀初頭のロシア音楽のことを考えており、今日もそのあたりの音楽を聴こうと棚を漁っていたら、購入したままでほとんど聴かずにしまわれていた音盤を発見した。

モスクワ・チャイコフスキー音楽院大ホール100周年記念CD(1950~2000)

文字通りモスクワ音楽院大ホールの100周年記念ということで2001年にリリースされたお宝音盤。おそらくこの音盤にしか収録されていない珍品もあることと思う。2枚組の1枚をとりあえずかけてみたのだが、素晴らしい。特に、ムラヴィンスキーのプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」組曲やホロヴィッツのスカルラッティなど、今更ながら感動的である。

ショスタコーヴィチ:「アレクサンドル・ブロークによる7つの詩」作品127-7
ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(ソプラノ)
モイセイ・ワイセンベルク(ピアノ)
ダヴィット・オイストラフ(ヴァイオリン)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
(1967.10.20世界初演)

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」第2組曲作品64b~「モンターギュ家とキャピュレット家」
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1982.11.24Live)

スカルラッティ:ソナタロ短調L.33、ホ長調L.23、ホ短調L.24
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)(1986.4.20Live)

ソ連の音楽家というのはやはり特別な存在であったと思う。鉄のカーテンの向こうは我々資本主義の中に生きてきた人々とは明らかに違う精神性をもった「芸術のわかる」人が存在した(それはホロヴィッツのモスクワでのライブDVDのアンコール、トロイメライで涙する中年の男性をみればわかる)。こんな音楽を眼前で目の当たりにできたのだから当時のソビエトの大衆は心の渇きを随分と癒されたことだろう。

ムラヴィンスキーのおそらく一般には知られていなかったプロコの研ぎ澄まされた演奏。ホロヴィッツの祖国への何十年ぶりかの帰還となったリサイタルからの演奏。そして、オイストラフやロストロポーヴィチによるショスタコーヴィチ作品の世界初演の録音など。

演奏者と聴衆が対等にエネルギーを交換できる空間で、こういう音楽が繰り広げられたこと自体奇跡であり、それこそが大衆への真のサービスであったことは間違いない。

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