完全休養日

richter_beethoven18.jpg一時期シューベルトのピアノ・ソナタにはまり毎日のように聴いていたことがある。例えば最後のソナタ。第1楽章のあの青白く暗く、そして美しい第1主題が何度も繰り返され、いつ終わるとも果てぬ音の綴織。10年近く前に内田光子盤を聴き、再発見した歌曲王の傑作。しかしながら、シューベルトの問題はしつこいところ。時間をもてあまし、その旋律美にとにかく浸ろうという意思が積極的にあるうちはむしろ歓迎なのだが・・・。この曲は最近ほとんど聴かなくなった。その代わりといっては何だが、もう一つシューベルトのソナタで好きな音楽がある。「幻想」と題される第18番ト長調D.894である。いつぞやサントリーホールで聴いた内田の実演は絶品だった。この曲に関しても発見は随分遅くなってからで、前にも書いたが、確か10年近く前夜中にテレビのチャンネルをつけたところNHK-BS放送でリヒテルの演奏するこの曲がとても感動的で、しかもフィナーレをアンコールで再演するという洒落た演出だったもので今でもその映像が頭から離れない。

ここ2、3日ベートーヴェンのソナタをいくつか聴いているのだが、ふとリヒテルの演奏するベートーヴェンを聴いてみたくなり取り出した(だいぶ前にビクター・エンターテインメントに勤める友人から「巨匠リヒテルの遺産」というCD集をいただいたが、ほとんど聴かずに棚の奥にしまわれていた)。帯を見ると「世界初発売」という文字。死去する直前にリヒテル自身が公認した音源をまとめたもののようで、確かこのシリーズにはいくつか初発売音源があったように思う。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調作品31-3
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)

1980年のLive録音。何だかリヒテルというのは大味な演奏をするんだよなぁ、とまたまた感じてしまう。実演では聴いたことがないのでそのあたりは言及しかねるが、レコーディングされた音だけ聴いていると、いかにもロシアの大男が大きな手で鍵盤をがっつりと掴み、ざっくざっくと料理をするかのような「繊細」とは正反対の音作りが気になってしようがない。バックハウスの一聴同じようなゴツゴツした演奏とはまるで次元が違い(最後の演奏会の抜け切った美しさは必聴)、一味ぬけた間抜けな(失礼だが)音楽が右から左に抜けていくような感じか・・・。何だかあまりピンと来ない・・・。晩年あれだけ神格化された彼のことだから本当に生に接することができたら印象も随分変わっていたのだろうが。今更だが、残念だ。

明日から2日間「新人研修合宿」である。昨日から今日にかけ、身体をこわしてはまずいということで大人しく家で休息した。

ということで明日のブログはお休みします。

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