朝比奈隆指揮新日本フィル ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」(1992.5Live)

実演の「ロマンティック」は心底感動ものだった。
アントン・ブルックナーの音楽は墨色だ。デッドな渋谷のオーチャードホールで聴いたブルックナーは、音の分離が良く、楽器の音が隅々まで見通せた。その分、音楽の濃淡も鮮明で、音楽の本質にある神を見た。たぶんあれが音楽を聴く行為での初めての見性体験だったのかもしれない。あの日の朝比奈隆指揮新日本フィルの演奏は凄かった。

ブルックナーはこの時点までに、〈ヘ短調〉に始まる5曲の交響曲を書いているが、長調の交響曲はこれが初めてである。そして、この変ホ長調の交響曲で、それまでの絶対音楽の世界に標題音楽的な要素を導入しようとし、〈ロマンティック〉と名付けたわけだが、それを象徴するのがこの冒頭のtrem.の指示なのだ。
これによって「夜明け」のイメージが音響として、また雰囲気にも見事に表されているのは改めて言うまでもあるまい。それまでの「音による建造物」と「神」との間に「自然」が加わったと言うべきか。

(金子建志)
~FOCD9050/5ライナーノーツ

交響曲第4番が早い段階から聴衆の人気を得た理由は意外にそういうところにあったのかもしれない。流麗な、自然体の音楽が、そして親しみやすい旋律が何とも耳に優しい。
ただし、朝比奈隆の演奏は相変わらず武骨だ。低音域をがっちり鳴らし、細かいことは気にせず、専ら音楽を解放へと導くその方法に、30年の時を経ても僕は感動するのである。

・ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ハース版)
朝比奈隆指揮新日本フィルハーモニー交響楽団(1992.5.13&15Live)

この日は、最初にブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」が演奏された。朝比奈らしい、重厚なドイツ精神の体現のようなブラームスにやっぱり僕は心底感動した。しかし、内省的なブラームスに対して、いかにも明朗で開放的なブルックナーの「ロマンティック」に言葉を失った。静謐な第2楽章アンダンテ・クワジ・アレグレットに痺れた。
あらためて久しぶりに音盤で聴くと、終楽章の大いなる鳴動に僕は心動く。残念ながら、多少の雑さは拭い去れず、あの日の感動を再現するには至らぬが、それでも間違いなくあの朝比奈隆の繰り出す音であり、ブルックナーであることは間違いない。

自然は、宇宙は、いつどんなときも調和に向かっている。

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