「無」の境地

beethoven_hammerklavier_weingartner.jpg11月に愛知とし子がリサイタルを開催する。今回は同郷の日本画家である近藤恵三子さんとのコラボレートという形で、成城にあるサローネ・フォンタナにて3日間連続の公演。
10月に入り、そろそろ本格的に皆様に「お知らせ」をと、ここ数日パソコンに向かい、既知の友人宛にひとりひとりお誘いのメールを送付させていただいている。
彼女にとって本格的なリサイタルは久しぶりゆえ(ここしばらくは赤ちゃん&お母さん向けの「音浴じかん」に集中していたので)、本人はもちろんこと、陰ながらサポートする僕にも少しずつだが緊張感が湧いてくる(4月にも単独リサイタルはやっているが、今回はそれ以上に気合いが入っている)。

ちなみに、会場であるサローネ・フォンタナはかつてウィーン三羽烏と呼ばれたピアニストのひとり、イェルク・デームス氏のためにいわゆるパトロンであった某氏が私財を投じて造ったという一見普通の家屋ながら、内部には何と2階席、パイプ・オルガンまで備え付けられた知る人ぞ知る立派なホール。以前下見にお邪魔した時にベーゼンドルファーの響きを直に聴かせていただいたが、響きがとても豊かで、かつ円やかで、ここで愛知とし子得意のベートーヴェンやブラームスの音楽が聴けると思うと今から期待に胸が膨らむ。ただし、難点がひとつあるといえばある。最寄りの成城学園前駅から徒歩で15分と少々遠いこと。その点さえご理解いただけるのであれば、最高の雰囲気で最高のピアノ音楽をご堪能いただけると太鼓判を押せる。ぜひぜひご来場を。

なお、リサイタルの詳細はこちら。

091113_collaborate_concert.jpg♪ ピアノ×日本画 愛知とし子×近藤恵三子「コラボレートコンサート」
◆ 2009年11月13日(金)~15日(日)
◆ スケジュール
◎ 13日(金) 【Open】18:30~22:00
☆コンサート  19:30~21:30
◎ 14日(土) 【Open】18:00~22:00
☆コンサート 19:00~21:00
◎ 15日(日) 【Open】10:00~17:00
☆コンサート 14:00~16:00
☆ミニパーティー16:00~17:00
◎ 定員:各回70名限定
◎ お申込完了先着100名様限定!プチプレゼントプレゼントがあります♪ お楽しみに☆

■チケット:自由席 〔前売り〕 3,500円〔当日〕 4,000円〔高校生以下 〕2,000円 ミニパーティー 500円 (コーヒー&ケーキセットまたはワイン&ディップ) 当日現金払い

■プログラム
〔第1部〕
・ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、水の戯れ
・ドビュッシー:前奏曲集第1巻~「西風の見たもの」、「亜麻色の髪の乙女」
・リスト:巡礼の年第1年「スイス」~第4曲「泉のほとりで」、第6曲「オーベルマンの谷」
〔第2部〕
・ブラームス:3つの間奏曲作品117
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番イ長調作品101
(都合により、演奏曲目が変更になる場合があります。)
近藤恵三子氏によるミニレクチャーあります。

■ 会 場:サローネ・フォンタナ(小田急線「成城学園」徒歩15分)
〒157-0072 東京都世田谷区祖師谷4-9-24

雨の鬱陶しい日が続く。随分肌寒くなった。
昨日の記事に雅之さんからいただいたコメントをみてベートーヴェンが聴きたくなった。ベートーヴェンの後期の境地。音楽家としての生命線である聴力を完全に失い、絶望の淵に立たされた楽聖にとってもはや頼れるものは「自分自身の魂」以外になかったのではないか・・・。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番変ロ長調作品106「ハンマークラヴィーア」(管弦楽版:ワインガルトナー編曲)
フェリックス・ワインガルトナー指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1930.3録音)

珍しいワインガルトナー編曲による「ハンマークラヴィーア・ソナタ」。これはもう原曲以上に音楽が心に響く。聴力を失った代わりに楽聖が得たものは深淵で広大な宇宙と同等の「無」の世界、境地であったのだろう、まさに「ひとつ」であることを実感させてくれる音楽に仕上がっている。第9のアダージョ楽章に優るとも劣らない精神世界。願わくばもう少し最新の良好な録音(あるいは実演)で聴いてみたいと思うのだが、編曲者自演盤以外の音盤は存在するのだろうか?


7 COMMENTS

雅之

おはようございます。
愛知とし子×近藤恵三子「コラボレートコンサート」、行けるかたが羨ましいです。プログラムも聴きたい曲ばかりです。「サローネ・フォンタナ」も、リサイタルには理想の空間のようですね。また、愛知とし子さんは、各会場のいろいろな素晴らしいピアノに出会えていいなあ!と、これもいつも羨ましく思っています。
ワインガルトナー編曲による「ハンマークラヴィーア・ソナタ」の盤は、私も所有しているものの、よく聴き込んでいるわけではありません。しかしとても興味深く、ブログを読んで、早速聴き直したくなりました。現代の演奏家たちにもコンサートや新録音でも取り上げて欲しいですね。編曲から70年以上も過ぎて、楽譜の権利問題も解消しているはずですし・・・。
クラシック音楽界から自由さを取り戻すにも、現代の作曲家にも「遊び心」でいいですから、積極的にこうしたピアノ名曲のオーケストラ編曲を試みてほしいです。「現代作曲家32人によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲オーケストラ編曲版 連続コンサート」
プロ・オケ関係の方々、こんな企画、大晦日にどうでしょう?(笑)
※今日は中秋の名月です!
天気も期待できそうなので、今晩は私も一献杯を傾けながら、愛知とし子さんのCD「月光浴」を聴き、名月を愛でるとしますか! 近藤恵三子画泊の画も、この雰囲気にぴったりですね! 先日購入した彼女の画のポストカードも、合わせて鑑賞します。
名月や 月光浴の 心地よさ  

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
サローネ・フォンタナは本当に良いホールだと思います。雅之さんにもぜひ聴いていただきたいと思いますが、残念です。
>現代の演奏家たちにもコンサートや新録音でも取り上げて欲しいですね。
本当にそう思います。意外にナクソスあたりで新録盤があるかなとも思ったんですが・・・。
>「現代作曲家32人によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲オーケストラ編曲版 連続コンサート」
おー、これは面白い!しかし大晦日1日じゃ終わりそうもないですね(笑)。
中秋の名月に愛知とし子の音楽と近藤恵三子の絵とは!!
一足早いコラボレートコンサートですね。

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ふみ

こんばんは。御無沙汰しております。お元気でしょうか?
とりあえず帰国しました!と言っても、まだアパートなど探したりしなくてはいけないので忙しい日々に追われておりますが。
この場でお聞きしても良いのか正直分かりませんがまーの様のコンサートの件でお聞きしたい事がございます。土曜日のコンサートのチケットに残席はございますでしょうか?可能ならば2枚頂きたいのですがいかがでしょう?

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岡本 浩和

>ふみ君
おはよう。
そっか帰国したか!!あっという間の1年ちょいだったね。
何だか昨日のようです。
落ち着いたらゆっくり会いましょう。
土曜日のコンサートのチケット用意します。
受け渡しについてなどメールもらえれば助かります。

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ふみ

はい!是非、岡本様とはゆっくりお会いしたいです!色々とお聞きしたいことも山程ありますので宜しくお願い致します!
メールの方はmixiで宜しいでしょうか?

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アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » ショスタコーヴィチは神を見捨てていないのか?

[…] ・シューベルト:4手ピアノのためのソナタハ長調D812「グランド・デュオ」(1824年) ・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47(4手ピアノ編曲版)(1937年) グラウシューマッハー・ピアノ・デュオ いや、これは凄い。ピアノの可能性を最大限に引き出し、管弦楽版に全く引けを取らない。そもそもそう簡単に演奏会に足を運べなかった、あるいはそうそうオーケストラを招集して演奏させることなど簡単にはできなかった時代の作品ということもあろう、家庭で(あるいは小ホールで)披露するには、そして楽しむのにはぴったりの大きさで、ピアノという楽器だけで多彩な音色を生み出す様は本当に魔法のよう。天才ショスタコーヴィチの成せる技なり。 ちなみに、この4手ピアノ版第5交響曲を聴いて思い出すのがベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」ソナタ。第3楽章ラルゴなど、かの大作のアダージョ楽章に匹敵する深遠さ。フィナーレはさすがに「ハンマークラヴィーア」のそれに比べるべくもないが、それでもこの「勝利の歌」は見事なカタルシスを生む。(そういえば、「ハンマークラヴィーア」ソナタをワインガルトナーが管弦楽アレンジし、演奏した音盤があったが、あれも大変優れた編曲の演奏だった。誰か最新機器で録音しないだろうか) それともう一つ。ピアノの音色そのもののせいもあろうが、ロシア正教の鐘の音が随所に聴こえる(ように僕には思える)。ショスタコーヴィチは神を見捨てていなかったのかも・・・。 […]

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