こんな日はやっぱりシベリウス

この冬一番の冷え込みらしいが、早朝から本当に凍えるほど寒い。
何より北風が堪える(体感温度はおそらく零下だったのでは)。家の中にいてもほとんど暖房が聴いていないんじゃないかと思うほど。「頭寒足熱」という言葉があるように、とにかく足下を温めることが快適に過ごす条件だと思うが、その足下が底冷えするのだから堪らない。

こんな日はやっぱりシベリウス。
漆黒のフィンランドの張りつめた空気感の中に実に人間らしい温かみを覚えるのは僕だけだろうか。凝縮された音の連なりの内に大宇宙と小宇宙が交わる。第7交響曲などを聴くとそのあまりの濃縮度合いにのけ反るほどの厳しさを感じてしまうが、それこそが人間が行き着く最後の境地「空(くう)」のようなもの。それに対比して森羅万象の「どよめき」と「静けさ」の両方を併せ持つ第5交響曲の世界。そして空(そら)に浮かぶいくつもの星々が煌めき、生きては死に、死んでは生きてを繰り返す第6交響曲の壮大なドラマ。病に伏して以降の作曲者の思考はもはや人間業とは思えない世界を表出する。

シベリウス:
・交響曲第5番変ホ長調作品82
・交響曲第7番ハ長調作品105
パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団(1995.9&1996.12録音)

ベルグルンドはシベリウスの全集を確か3度録音しているが、最新の全集からの1枚。確かリリース直後六本木WAVEで発見してすぐさま購入したものだと記憶する。ひとつ前のヘルシンキ・フィルの演奏と比較すると、オーケストラの厚みに欠ける気がしないでもないが、透明感、あるいは見通しの良さという意味ではこちらの録音の方が一日の長がある。
何より初めてこの音盤を聴いたときの感激、感動がまざまざと思い出されるのだから、一聴相当気に入ったのだろう。そう、ここには「指揮者がいない」。一切の虚飾を排して、ただシベリウスの音楽が淡々と鳴るのみ。

齢80はとっくに超えていると思うが、最近この人はどうしているのだろう?嗚呼、願わくばベルグルンドの実演を今一度・・・。

7 COMMENTS

雅之

おはようございます。

寒い今朝起きたら、「シベリウス」と「シベリア」との語源には関連があるのではないかとふと閃いたので、検索してみたら、勉強になる記事がありました。

http://antonin.exblog.jp/8928597/

希土類などある種元素の名称は、日本語にすると本当にややこしく、紛らわしいです。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
なるほど、一見そのように思いますが”L”と”R”の違いは大きいですね。
ご紹介いただいたサイトですが、勉強になります。
ありがとうございます。

>日本語にすると本当にややこしく、紛らわしいです。

言葉の翻訳の限界ってやっぱりありますよね。どんなものでも原書にあたるのがベストなのでしょうが、語学力に乏しい僕などはそうもいきません・・・。ちなみに佐治晴夫先生はヘブライ語などにも堪能で聖書なども原語で読まれるそうです。もちろんどんなも研究もすべて原書にあたるとおっしゃっておりました。超人ですね。

返信する
雅之

原語でも古語と現代語では変化しているでしょうしね。

語源を調べるっていうのも面白いですよね。以前「パッション」→「熱情」→「受難」→「悲愴」の話題で盛り上がりましたよね。

ちょっと朝の話題の続きですけど、希土類元素といえば、私も昔からどうしても思い出すのは、やっぱり北欧スウェーデンのイッテルビーという村なのですが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%83%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC
シベリウスは、スウェーデン人の医師の家庭に生まれ、フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語の二つということもあり、シベリウスはスウェーデン語で育ち、フィンランド語やフィンランドの民族的歴史に深い関心を抱くのは成人してからのことだったそうです(参考 アシュケナージ&ストックホルム・フィル 交響曲第4番、第5番、『フィンランディア』HMV レビュー)。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2569539
あえてフィンランドだけに限定せずとも、交響曲第4番は、北欧の大地の岩石(ガドリン石かも)と積雪、5番は雪解けと春の訪れ、6番は銀河鉄道、7番はオーロラの乱舞、タピオラは北欧の夜の深い森、といった心象風景でしょうか。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
語源というのは本当に面白いものです。「パッション」についても盛り上がりましたね、そういえば。
ちなみに、日本語の場合、発音が同じ単語の共通性などを考えるのも面白いですよね。「息」=「生」=「粋」・・・とか・・・。ほかにもいろいろあると思います。

>北欧スウェーデンのイッテルビーという村なのですが、

このあたりについては全く僕は鉱物愛好家の雅之さんにはついてゆけません(笑)。
いろいろと教えていただきたく存じます。

あと、シベリウスがスウェーデン語で育ったというのは知りませんでした。そうだったんですね!ありがとうございます。

>交響曲第4番は、北欧の大地の岩石(ガドリン石かも)と積雪、5番は雪解けと春の訪れ、6番は銀河鉄道、7番はオーロラの乱舞、タピオラは北欧の夜の深い森、といった心象風景でしょうか。

お見事です!第6番の「銀河鉄道」は吉松先生由来のものですよね。

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第4章 » Blog Archive » うねり

[…] 朝から都心も雪。 凍えるような寒さの中「寒稽古」のため道場に向かったが、身体を動かせば自ずと温まり、終わる頃には爽快な気分になるのだからまさに早起きは三文の得。合気道はすべての動きが理に適っており、少しずつその凄さを体感しているところで、「自然体で脱力であることが最も力を発揮するのだ」ということがよくわかって面白い。ただし、本当の意味で体得するのは何十年かかるだろう、いや一生かけてもそこまでは行き着かないかもしれない、それくらいに奥深い。 こんな日はやっぱりシベリウスなのだが、明日は「早わかりクラシック音楽入門講座」の第8回目で「ドヴォルザーク&チャイコフスキー」がテーマなので、同じく酷寒のロシアの大地を想像させるようなチャイコフスキーでも聴いておこうといろいろと音盤をとっかえひっかえ。例によって、しばらく聴いていなかったバーンスタイン晩年の後期交響曲集を聴いて暖をとることにした。どれもこれもシベリウス同様、枠からはみ出るような粘っこさと巨大さが特長。しかし、それでいて決してもたれることがないのだから、コレステロール過多ではないということだ。 まずは第5シンフォニーと「ロメオとジュリエット」のカップリングされた音盤からじっくりと。第5番の第2楽章などこれ以上ロマンティックな表現はないだろうと思われるほどの感傷性。これはまるでマーラーのよう。 […]

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む