The Rolling Stones “Their Satanic Majesties Request” (1967)

混沌と無秩序に支配され、自分たちのルーツを見失ってしまったアルバムだと揶揄されるが、個人的には好きなアルバム。リリースから50余年を経て、今なお燦然とオリジナル・ストーンズらしさの革新性を醸す傑作だと僕は思うのである。
ビートルズを意識した、ビートルズへの対抗心露わにしたなどといわれようと、その曖昧模糊とした音楽の美しさに僕は相変わらず夢を見る。鍵になるのは夭折のブライアン・ジョーンズと先般亡くなったチャーリー・ワッツ。

ブライアンの生み出すセンスある音の色彩は、彼が起用するメロトロンやブラスの見事な効果であり、チャーリーの叩くドラムの音は、アンダーグラウンドな響きの中に浮いた実に明快なグルーヴ感を維持する。”Sing This All Together (See What Happens)”など、ほとんどThe Velvet Undergroundの如し。

・The Rolling Stones:Their Satanic Majesties Request (1967)

Personnel
Mick Jagger (lead vocals, backing vocals, percussion, maracas, glockenspiel, tambourine)
Keith Richards (electric guitar, backing vocals, acoustic guitar, bass guitar)
Brian Jones (mellotron, flute, backing vocals, percussion, güiro, saxophone, sound effects, acoustic guitar, electric guitar, vibraphone, glockenspiel, theremin, jew’s harp, brass, organ, electric dulcimer, recorder, sarod, shehnai, harp)
Bill Wyman (bass guitar, percussion, lead vocals, piano, organ, Mellotron)
Charlie Watts (drums, tambourine, percussion, congas, tabla, claves)

名曲“She’s a Rainbow”のストリング・アレンジはジョン・ポール・ジョーンズによるものだというのは有名な話。開放的なミックのヴォーカルに絡むサイケデリックで明るい音の魔法に(文字通り)つい引き込まれてしまう。また、ミック&キースの共作とはいえ、いかにもブライアンらしい風趣の”Gomper”は、インストゥルメンタル部が実に輝かしい。

彼はこの善い、古い都にも、または他のいかなる善い、古い都にも、町にも村にも、この善い古い世界にもかつてなかったくらいの善い友となり、善い主人となり、善い人間となった。人によっては彼が別人のようになったのを見て笑ったが、彼はそういう人たちが笑うがままにしておき、少しも気にかけなかった。彼はこの世では何事でも善い事なら必ず最初にはだれかしらに笑われるものだということをちゃんと知っていたし、またそういう人々は盲目だということを知っていたので、おかしそうに眼元にしわをよせて笑えば盲目という病気がいくぶんなりと目立たなくなるだけ結構だと考えていたからである。彼自身の心は晴れやかに笑っていた。それで彼にはじゅうぶんだった。
ディケンズ/村岡花子訳「クリスマス・カロル」(新潮文庫)P148-149

いわゆる常識というものにとらわれないことだ。

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