マリス・ヤンソンス指揮ピッツバーグ響 ショスタコーヴィチ 交響曲第8番(2001.2録音)

弱音は徹底的に弱く、強音は地を割るような轟音で鳴り響くそのコントラストが堪らない。
マリス・ヤンソンスの方法は、人生に対する希望に満ち、音楽は常に躍動し、実に明るい音調を示す。どちらかというと暗澹たる風趣を醸す交響曲が、見事な人間讃歌へと昇華されている。

《交響曲第8番》には多くの内的な葛藤があり、それは悲劇的でも、ドラマティックでもある。しかしこれは全体として、オプティミスティックな、人生肯定的な作品である。
「《交響曲第8番》について」『文学と芸術』紙1943年9月18日付。『自伝』所収(P135-136)
「ショスタコーヴィチ大研究」(春秋社)P98

確かにそれは、ショスタコーヴィチ自身の意志でもあった。世間の期待や想像とは裏腹に、ショスタコーヴィチ自身はいつでも人生肯定的ではなかったか(それを表に出していたかどうかは別にして)。

抜粋だが、リハーサルの風景が収録されており、実に興味深い。
メロディを口ずさみながらオーケストラ団員に音楽の機微を伝えることで、みるみる音楽が輝きを増していく様に心が動く。音楽は生きているのだということがわかる。

・ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調作品65
・リハーサル風景
マリス・ヤンソンス指揮ピッツバーグ交響楽団(2001.2.9-11録音)

外へと拡散する(という印象の)前作交響曲第7番に対して、第8番は内へと収斂する音調が特長だが、ヤンソンスの繰り出す音楽は、第1楽章から作曲家の自省の念の表象の権化のように思われる。また、中庸の第2楽章アレグレットを経て、第3楽章アレグロ・ノン・トロッポの嵐は抑制されたもので、中間のめくるめくトランペット独奏のシーンも実に優雅だ。静かな第4楽章ラルゴの安寧、続く終楽章アレグレットの、ショスタコーヴィチがこの作品のテーマを「生きることは素晴らしい」としたその思想をきちんととらえた演奏の美しさよ。

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