庵野秀明脚本・監督「シン・仮面ライダー」(2023)

前2作(「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」)からの期待が大き過ぎたのかどうなのか、個人的には正直今ひとつの印象。
陰陽二元世界の中で善と悪を行き来する様子から、最終的にはライダー1号と2号が一つになって、来るべき未来へと足を踏み出すという展開は、(もしあるなら)本編の前史でもあり、ひょっとすると「スター・ウォーズ」のように2号ライダーを軸にした物語を先に上映した方がかえって意味深かったのではないかとさえ邪推した。台詞やストーリーや、記憶をたどって根こそぎ分解していくと、監督の真意はわかるといえばわかるのだが、その根源となる信や慈しみという視点がやや甘く、まして(全編に亘る)血飛沫を上げる戦闘シーンがとても過激に感じて、物語の中に入り込むことが僕にはやや難しかった。

残念ながらとても暗い。
「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」には明るい未来を見出せた僕にも少々荷が重過ぎた。

生誕50周年企画作品
シン・仮面ライダー(2023)
池松壮亮 浜辺美波 柄本佑
西野七瀬 本郷奏多/
塚本晋也 手塚とおる 松尾スズキ 
仲村トオル 安田顕 市川実日子/
松坂桃李 大森南朋
竹野内豊 斎藤工/森山未來
原作・石ノ森章太郎
脚本・監督・庵野秀明

しかし一方で、悪の存在たる(認識の)ショッカーもある側面から見ると決して悪とは言えず、善の存在とされるライダーも完全ではなく、人間らしい葛藤の中で生きて成長するという点は、なるほど僕たちにも現実に起こり得るストーリーで、実にヒューマンなドラマであったことは是としたい(偉そうだけれど)。

僕が子どもの頃に夢中になっていた仮面ライダーはそこにはいなかった(登場人物はなぞられていても、まったく別の物語であり、またステージである)。本郷猛も一文字隼人も確かにスクリーンの中にあったが、(子どもながらに)彼らはもっと真っ直ぐで、決して悩みを人には見せない、強いて言うなら大谷翔平のようなマイペースでありながら愛あるヒーローではなかったか? あるいは何回目の人生なんだろうと想像させるくらいのパワーと慈しみを持っていたのではなかったか?

ただし、鑑賞直後の今、たぶん僕の先入観や余計な期待や、そういうものが邪魔をし、真意をとらえ切れていない可能性も大いにある。庵野秀明監督のことだからもっと深い、哲学的な仕掛けを施していることも十分に考えられる。一度や二度観ただけでは見逃していることもたくさんあるだろう。
可能ならあらためて拝見し、熟考検討してみたいと思う。
(エンディングが子門真人の懐かしい声による当時のものだったのが最高)

人気ブログランキング


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む