
小川典子の弾いた瀧廉太郎の作品を聴いた。
日本人作曲家による初のピアノ曲だというメヌエットと、肺結核で急逝する5ヶ月前に作曲された「憾み」。少なくとも後者は、不思議な明るさの背後に潜む、とても悲しい、というより作曲家の苦悩、悔しさが聴き取れる名曲だ。わずか2分22秒の慟哭よ。
わずか23歳で夭折した作曲家のむしろ生きる希望を貫いた音楽だと思う。
日本人の心底にある慈しみというものを実に可憐に、明快に表現する小川典子の心の美しさ。瀧廉太郎144回目の生誕日に。
そして、アルバムタイトルにもなっている(今年3月に亡くなった)坂本龍一の”Just for Me”にみる天才。こういう冒険心溢れる音楽こそ坂本龍一のゾーンの広さを物語るものであり、小川典子の実に丁寧で思い入れたっぷりのピアノに感化される。素晴らしいと思う。