スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン ブラームス 交響曲第3番(1985.8録音)

私はNHK-FM放送で毎日曜の午前、1時間弱の枠で「名曲のたのしみ」という番組を担当してきた。たしか1960年代の中ごろからだと思う。はじめはそのつどテーマを考えていたけれど、80年代に入って、一人の作曲家の作品をできるだけ全部、CDでの音の材料を集められる限り拾って年代順に整理した上で、それぞれの曲について簡単な解説めいたことを加えてきかせるという内容のものにした。最初はモーツァルトから。
(吉田秀和)
吉田秀和/歌崎和彦編「ブラームスの音楽と生涯」(音楽之友社)P293

実に懐かしい。僕がクラシック音楽に開眼したころ、確かにNHK-FMにはお世話になっていて、吉田さんの担当する「名曲のたのしみ」は毎週楽しみに聴いていた。あの吉田さん独特の、温かみのある語り口調は今もって忘れられない。

その後、年齢を重ねるにつれ忙しくなり、いつの頃からかFM放送を聴くことはなくなったのだが、確かに時折耳にすることができたときには、ブラームスの回もあった。

その中でブラームスもやった。たしか90年代の初めだったろう。前いったように、50何分の枠の中でCDをかけ、話をする。話しは5分からせいぜい10分少々。それもあまり長すぎないように、また、音楽を始める前の前おきは5分以上長くならないように、といった条件もある。そんなわけで、ある種の曲は名曲で話すべきこともいろいろという場合でも、その曲が長い場合は、話の方はできるだけ手短かにする必要があり、逆にそれほどではない曲でも、区切りを良くするためには何かのエピソードを入れるという状況もでてくる。話と音楽の間のバランスが変わるのは避け難い。私は音楽史の学者ではない。また音楽についての自分の感想を手放しでしゃべるのはあんまり好まない。それやこれやを思いあわせつつ、「自分のきき方」とでもいった調味料を少々混ぜつつ、やってきた。
~同上書P294

番組の舞台裏をこういう形でざっくばらんに語っていただける点がまた吉田秀和さんのかっこうをつけない好感を持てるところ。長年にわたったあの伝説の番組のような番組はもはや今後は登場し得ないだろう。

・ブラームス:交響曲第3番ヘ長調作品90
オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1985.8.28-30録音)

これほど力強くも自然体の演奏が他にあろうか。
音楽の芯は中で爆発し、聴く者の感性を刺激する。4つの楽章すべてが消え入るように終わる特殊な交響曲は、ブラームスの内なる浪漫の表象だが、スウィトナーの方法は極めて正統派。
特に、第1楽章アレグロ・コン・ブリオから決め所に打ち響くティンパニの音に魂が揺さぶられる。楽章を追う毎に音楽は一層伸びやかになり、終楽章アレグロに至り、喜びは頂点に達する。ブラームスが心身ともに最も充実していた時期の果敢な挑戦の交響曲が、職人スウィトナーの棒によって実に見事に(美しく)表現される。

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