ふたたびヴィルヘルム・バックハウスはベートーヴェンのソナタ全集から。
それも、1950年代初頭のモノラル録音の方。どちらかというとテクニック的に優良で、かつ詩情を感じさせるこちらのソナタ全集を僕は好む。特に、初期ソナタはいずれもそうだ。
ベートーヴェンが「グランド・ソナタ」と名づけた作品22の柔和な美しさ(しかも芯が通っていて、第1楽章アレグロ・コン・ブリオから堂々たる風趣はバックハウスならでは)。
僕は今頃このソナタに通底するベートーヴェンの気概、革新がわかったように思う。
続く第2楽章アダージョ・コン・モルト・エスプレッシオーネの愁い、さらには喜びのメヌエットからいかにもベートーヴェンの結論ともいうべき終楽章ロンドの勝利!
バックハウスの指は良く回り、最高の名演奏が繰り広げられる。
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調作品22(1800)
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)(1953録音)
ちなみに、新しい方、最晩年の録音は老練の響きを醸し、録音も新しく、一般にはこちらの方を先に聴くほうが良いかもしれない。
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調作品22(1800)
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)(1968.3録音)
希望のベートーヴェン!