Paco de Lucía “FUENTE Y CAUDAL”(1973)

パコ・デ・ルシアの名盤「二筋の川」。
推進力に富む、哀愁溢れる音楽は、デ・ルシアのテクニックとともに、僕の脳裏の片隅にあった。

かれこれ35年前の若き日、僕は中南米音楽のフェスにほんの隅っこで関わらせていただいた経験がある。当時、中南米音楽はおろか、スペイン音楽でさえアルベニスやグラナドスの一部の楽曲しか知らなかった僕は、「ラティーナ」という専門雑誌の存在は当然知らなかった。しかしながら、濱田滋郎さんのことはクラシック音楽雑誌で存じ上げていたものだから、そのフェスに濱田さんが来場された際には若輩者ながらほんの少しご挨拶させていただいた(もはや当人には記憶の彼方だろうが「ラティーナ」の本田さんにもお声をかけていただいたのも遠い昔の淡い記憶だ)。

濱田滋郎さんが3年前逝去された際、本田健治さんが追悼記事を書かれていた
ラテン音楽を愛する本田さんの、濱田さんへの感謝の念と思い出が詳細に書かれていて実に面白い。中で、デ・ルシアとの出会いも書かれている。

濱田さんの当時のライナーノーツ用原稿にあった「フラメンコ界の若手三羽烏のひとり・・・」の語句の反発し、

「申し訳ございませんが、パコはそういうレベルではないと思います。セラニートもサンルーカルも聴くだけでなくコピーして弾いてきましたが、ここに至ってのパコは特別です。もう人間業を超えた凄い物だと思うのです。今後は更にもの凄くなると思うのです」

と反論した当たりの経緯などは、日本においてパコ・デ・ルシアを発見したのは私だと言わんばかりの熱量であり、実際、濱田さんと本田さんのこういうやりとりがなければ、デ・ルシアが日本の音楽ファンの目に(耳に?)留まることはずっと後のことになったのかもしれないと思うと恐ろしいことだ。何にせよその道のフリーク(?)の先見というのは世界を揺るがすほどの力を持っているのだと思う。

・Paco de Lucía:FUENTE Y CAUDAL(1973)

Personnel
Paco de Lucía (flamenco guitar)
Ramón de Algeciras (flamenco guitar)

パコ・デ・ルシアの9枚目のアルバムにあらためて感激する(リリースから半世紀経過しても古びない!)。
ゲルマン民族にはない、もちろん日本人にもない、血潮漲る民族音楽(フラメンコ)の熱狂!
最高だ。

過去記事(2024年1月18日)


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