野蛮人

ここのところ僕は考える。世の中で名を馳せていくには、反骨精神旺盛でとにかく諦めずに自分自身の描いた夢に向かって突き進むということがとても重要なのだということを。それは時には愚直に自らを信じることを源にしたパワーから生じるものかもしれないし、あるいはもっとスマートに「計算された意思」を源にしたエネルギーから生じるものかもしれない。いずれにせよ、これはビジネスの世界でも芸術の世界でも、おそらくスポーツの世界でも全く変わりのないセオリー。自らを信じ、強く思い行動すれば必ず「現実化」するのである。

20世紀の初め頃、ベラ・バルトークは、同郷のゾルタン・コダーイとともに開催したフランスでのコンサートの新聞評に「ハンガリーの若き2人の野蛮人」と書かれ、それに対する返答としてアイロニカルな意味を込め、「アレグロ・バルバロ」というピアノ曲を作曲したという。当時の大都会パリから見たハンガリーというのは確かに辺境であったのかもしれない。その田舎から出てきた音楽家に対しての当てつけといえば当てつけなのだが、しかし、流石に彼は自身の才能には自信があったのだろう、これ見よがしに「野蛮人」と題される楽曲を創作し、その曲が彼の代表作となっているのだから面白いものである。

とにかく、この曲はバルトーク特有の民族音楽的要素を含んだピアノを打楽器と見立てて創造された傑作ピアノ音楽。打楽器の音、あるいは打楽器的な音は、人間の魂に直接的に語りかけるエネルギーに溢れている。「霊的なもの」を呼び寄せる作用すらあるくらいだ。

バルトーク:アレグロ・バルバロBB63、Sz.49
ゾルタン・コチシュ(ピアノ)

プロのピアニストに言わせると、弾くのは意外に簡単らしい。たった3分足らずの楽曲なのだが、題名のバルバロ(野蛮人)とは相反して、とても知的なエネルギーに満ちた音楽で、専門的なことはわかりかねるが、おそらく非常に計算されて組み立てられた楽曲なのだろう。ちなみに、バルトークは、右脳と左脳のバランスが極めてとれている作曲家で、その音楽は知的で晦渋で難解な側面を持っている反面、メロディアスで感性に訴えかける優しさも一方で持っている。

~「アレグロ・バルバロ」との最初の出逢い
1984年頃だったか、当時、ビートルズに始まりロック音楽に興味を持つようになった僕は、ある日、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)の演奏するムソルグスキーの「展覧会の絵」によってプログレッシブ・ロックの洗礼を受け、そして、まもなく同じEL&Pのファースト・アルバムに収められているバルトークのこの曲をアレンジしたファースト・ナンバー「バーバリアン(邦題:未開人)」という繊細だが荒々しさをもった楽曲に出逢った。天才キーボード奏者、キース・エマーソンがアレンジしたこの「バーバリアン」も必聴。

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