ブラームス~孤独な愛

brahms_backhaus.jpgクラシック音楽を聴き始めた頃から楽器を弾けるようになりたいと思っていた。ただ「思っていた」だけで、具体的に何かを始めたわけではない。しいていうなら、高校生頃に自宅にあったアップライトで、モーツァルトのソナタの楽譜を買ってきて、K.283の第1楽章の最初の部分やK.331の第1楽章変奏曲の主題部を独学でポロポロと鳴らしていた程度。もちろん指使いの重要性など知る由もなく、バックハウスのレコードで曲を覚えながら、適当にやっていた。
その後、大学入学と同時に上京してからは、当然ピアノを触ることも全くなくなり、社会人になって以降は、楽器を習う暇などなく、いずれ引退した時、老後の楽しみの一つとしてとっておこうと思っていた。僕がクラシック音楽を愛好していると聞き、たまに「楽器はやらないんですか?」などと聞かれることもあったが、そのときには常にそう答えるようにしていた。

先日、「早わかりクラシック音楽講座」に参加いただいた方が、何と30歳からピアノを始め、5年経った今ではショパンの「幻想即興曲」が弾けるようにまでなったとお話されていた(その彼は、正確には幼少時に多少のピアノは習っていたらしいが)。ともかく弾きたい曲があるのなら、練習すればどんな人でもできると聞き、その気になったのが第一。それに、数年前(ちょうど前職を辞めた頃)から、創造的な何か、それも「手」を使った何かをやると一層良いというアドバイスを受けていたので、それが何を意味するか散々考えたが、結局一番近いのは楽器で、中でもピアノだと「ピン」ときたのが第二。

これはもうピアノを弾けるようにならねばなるまいと意を決し、ついに今日から怖い先生(笑)の下でレッスンを始める。

易しい曲がいいだろうとも思ったが、ここはいっそのこと「弾きたい曲」に挑戦すべきだろうと考え、何と最晩年のブラームスが愛するクララ・シューマンのために書いた老境の極致、「侘び、寂」の世界を体現したような名曲「間奏曲イ長調作品118の2」を選択した。ほとんど無謀なチャレンジかと思われるが、ともかくやってみよう。

本日のレッスン:30分、最初の2小節。指を独立させて動かすことの難しさよ・・・。

ブラームス・リサイタル
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

クラシック音楽を聴き始めた頃、擦り切れるほど聴き込んだ1枚。僕のブラームス体験の原点。この枯れた味わい、寂寥感の内に感じる「孤独な愛」が堪らない。

ところで、作品118-2には、名盤が数多い。中でも、何度聴いても「別世界」にもっていかれる別格の音盤が、ヴァレリー・アファナシエフ盤
時に闇の中に沈み込むように重く、時に愛するクララへの憧憬というべき飛翔。バックハウスが、4分51秒で弾いているのに対し、何とアファナシエフの演奏時間は7分53秒!これくらいのテンポでなら、というイメージでものにしようと思っている。果たして何ヶ月、何年かかることやら(苦笑)


7 COMMENTS

テツ

こんばんは。
おっ。ピアノを始められたのですね。
しかもブラームスの間奏曲118-2ですか。
とても素敵な曲を選択されたのですね。。
私もいつかは弾きたいと思っている曲です。
怖くて素敵な先生の下で頑張って下さいね。(笑)
いつか聴かせて頂けるのを楽しみにしております。

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おかちゃん

>テツ様
おはようございます。
お陰さまで、先日のテツさんのお話で勇気をいただきました。
僕の場合は、ほんとにズブの素人ですからブラームスをやるなどとは無謀にも思えるのですが、ともかくやってみようと。
特に作品118‐2は何度聴いても感動させられる大好きな曲です。
>いつか聴かせて頂けるのを楽しみにしております。
うーん・・・、いつになることやら・・・(笑)。

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雅之

こんばんは。
さすがです!おかちゃんのピアノ演奏への挑戦に、心から敬意を表します。ブラームスの晩年の作品群(ピアノ曲なら作品116~119)は、若いころの作品と違って、音が引き締まって無駄がなく、どれも本当に味わい深い真の傑作だと思います。お好きな曲とのこと、チャレンジし甲斐がありますね。ぜひ生演奏を聴かせてくださいね!
ところで、私の周囲のクラシック音楽ファンも、圧倒的にブラームス好きが多く、私のようなシューマンのピアノ曲好きは、びっくりするくらい皆無です。何ででしょう?私にとっては七不思議のひとつです。えらく不当に嫌われているシューマンのピアノ曲が可哀想なので、いつもブラームスよりシューマンの味方をして、多勢に無勢の分の悪い論戦に挑み、ボロボロに叩きのめされて喜んでおります。反対されればされるほど、シューマンのピアノ曲への愛を再確認している今日このごろです。蓼食う虫も好き好き?

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おかちゃん

>雅之様
こんばんは。
いやぁ、ほんとに右も左もわからないで始めるのは大変です。
今日も40分近くやりましたが、怒られっぱなしです(苦笑)。
生演奏を聴いていただくには程遠い状況で・・・。
とはいえ、おっしゃるとおり、ブラームスの晩年のピアノ曲は全て傑作で、どうしても弾きたいと思ったのです。
シューマンは僕などは好きですが、プロのピアニストに言わせると、「分裂」しているところが耐えられないのだと。素人目からするとそれがまた面白みだと思うんですけどね。
シューマンは偉大です。

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まーの

雅之さん、ご無沙汰しております。
さて、私が感じるシューマンの曲についてです。
大好きな曲も沢山ありますが
何故、いきなりこういう展開になるの?
と弾いているときに、不自然な流れが、生理的に受け付けないことが多いから、なんとなく避けてしまう事が多いです。

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雅之

おかちゃん、まーの様、シューマンについての感想及びご教示、ありがとうございます。
ちょうど今、シューマンの「謝肉祭op.9」~前口上/ドイツ風ワルツ/ペリシチ人と闘うダヴィッド同盟の行進曲(ラヴェル編曲)を大植英次指揮ミネソタ交響楽団のCDで聴いているのですが、この編曲、苦労してますねぇ(笑)。ムソルグスキー「展覧会の絵」の編曲者とは別人のような、オーケストラの魔術師ラヴェルとは思えない冴えない出来です。ラヴェルでさえ悪戦苦闘する気分屋シューマンの音楽、やっぱり私は大好きです。

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おかちゃん

>雅之様
へぇ、「謝肉祭」にラヴェルが編曲した版があるのですか?!
知りませんでした・・・。なかなか面白そうですが。
>ラヴェルでさえ悪戦苦闘する気分屋シューマンの音楽
なるほど。それはそれで楽しめそうです。

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