シノーポリ指揮北ドイツ放送響のマデルナ作品集(1979録音)を聴いて思ふ

maderna_sinopoliライナー・マリア・リルケの感情の起伏の激し過ぎる振舞いに業を煮やし、それがもとでルー・ザロメとの恋愛関係に終止符が打たれたわけだが、関係が最高潮にあった頃の二人きりのロシア旅行での体験の反響が示されているのがリルケの、1905年に発刊された「時禱詩集」。

中での「目を閉じてごらん、わたしにはあなたの姿がみえます・・・」という詩に対してのルーの返歌のあまりの恋い焦がれる熱烈さに思わず胸が高鳴る。

あなたからどんなに遠く離れていようとも
わたしの目にはあなたはいつも同じ姿
色褪せることのない、揺るがぬ存在
さながら生まれ故郷のように
あなたはわたしの日々のまわりに漂う
リンデ・ザルバー著/向井みなえ訳「ルー・アンドレーアス=ザロメ―自分を駆け抜けていった女」(アルク出版)P134

シノーポリは完璧主義者だったのだろうか。
たっぷりの情念と冷徹な理性の入り交じった「ルー・ザロメ」組曲を聴きながら想像した。そしてまた、彼がデビュー間もなくの頃に録音した師ブルーノ・マデルナの作品集を聴いて(頭脳明晰なことは良いにしても)そのあまりに精緻な音楽作りに舌を巻くとともに、やっぱりこの人は強烈な念の込め方(?)で結果的に寿命を縮めたのだろうと想像した。

渦巻くエネルギー。もちろん難解な語法によるマデルナの作品ゆえ、簡単に理解できるものではない。しかしおそらく、そこには「歌」がある。ただし、シノーポリはどちらかというとその「歌」の側面を抑制し、いわば音を塊(物体)として捉え、聴く者に圧倒的な打撃と感銘を与える。まさに身を削ってのパフォーマンス。こんなことを何十年も続けていたのなら身体が持つはずがないだろう。

マデルナ:
・4人の打楽器奏者と4つの管弦楽群のための「クァドリヴィウム」(1969)
・管弦楽のための「アウラ」(1972)
・大管弦楽のための「ビオグランマ」(1972)
ジュゼッペ・シノーポリ指揮北ドイツ放送交響楽団(1979.8.31-9.4録音)

「クァドリヴィウム」は、静謐な歌。冒頭のあまりの静けさに時が止まったかのような印象。
また、「アウラ」の祈りに聴く抑制されたパッション。
そして、「ビオグランマ」の美しくメロディアスな音楽の妙。
真に全脳的な響きにシノーポリの再現者としての天才を垣間見る。冷たく・・・、熱い・・・。

 

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2 COMMENTS

雅之

シノーポリの音盤で、昔から真に「凄いな~」と最も評価しているのは、フィルハーモニア管弦楽団との、マーラー:交響曲第6番の解釈です。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%EF%BC%9A%E3%80%80%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC6%E7%95%AA%E3%82%A4%E7%9F%AD%E8%AA%BF-%E6%82%B2%E5%8A%87%E7%9A%84-%E7%AC%AC10%E7%95%AA%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%A2%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3/dp/B00005MWVX/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1451936673&sr=1-1&keywords=%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%80%80%EF%BC%96%E7%95%AA%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%83%AA

未聴だったら、ぜひ。

このころまでがピークで、その後、指揮者としての彼は、徐々にインスピレーションが下がっていったような感想を持っています。

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岡本 浩和

>雅之様
シノーポリは僕の感覚でも80年代までが一番輝いていたように思います。
ただし、彼のマーラーは聴いた記憶はあるのですが、それが何番だったのかもはっきりしません。
そんな感じなので音盤も所有せず、よって聴いてみたいと思います。
ご推薦ありがとうございます。

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