死の舞踏

昨晩久しぶりにクロード・ルルーシュ監督「愛と哀しみのボレロ」(1981)を観た。10数年前、初めて観たときはそれなりに手ごたえがあり良かったと感じたように記憶していたのだが・・・。しかし、残念ながら大手を振って万人にお薦めできる代物ではない、ということが確認できた。映画としては3時間ほどもある長編なのだが、何せ50年以上に及ぶ歴史を、しかも舞台がドイツ、フランス、アメリカ、ソ連と全世界に亘っている一大絵巻をたったの3時間でまとめてしまっているゆえ、大味になりすぎ、また登場人物があまりにも多く、途中でわけがわからなくなってしまうのだ(ルルーシュ監督のカメラ回しもとても退屈)。

とはいえ、ジョルジュ・ドンの舞踊は相変わらず見事だ。ベートーヴェンの第7交響曲フィナーレをバックにした派手な舞踏、そして何といってもこの映画を通して一躍有名となったかの「ボレロ」で見せる圧倒的な存在感。以前にも紹介した20世紀バレエ団でのスタジオ録画による映像より断然素晴らしい。何よりその動きにライブ感があり、たった数年の違いとはいえドンの肉体も明らかに若い。
ラストの大団円にて披露されるこのボレロを観るためだけにこの映画が存在しているのだといっても言い過ぎではない。その意味ではもちろん観る価値大いにあり、だ。

ところで、ラヴェルが作曲したこの「ボレロ」と同種のバレエ音楽に「ラ・ヴァルス」がある。つい先日、東京オペラシティ・リサイタルホールで柳井修&森正piano duoがこの楽曲を演奏したのを聴き、もともと僕がこの曲に持っていた「暗い」イメージを払拭するキラキラした劇的な演奏だったので、ふと思い出して管弦楽版を取り出してみた(しかし、2台ピアノの演奏は何の曲であれ、ライブで観て聴き、体感するのが一番だ)。

ラヴェル:ラ・ヴァルス
アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団

ラヴェルの楽曲はどれもクリュイタンス盤が一押し。
しかし、ラヴェル自身「魔術師」の異名を持つだけあり、オーケストレーションに一部の隙もなく、上手すぎてかえって疲れるのである。この曲はモノトーンの方が映えるように僕には感じられる。その意味では作曲者自身が2台ピアノに編曲したヴァージョンの方が聴きやすい。ちなみに、2台ピアノ版ではアルゲリッチ&ラビノヴィチ盤がお薦めである。

「渦巻く雲の切れ目から、ワルツを踊る人々の何組かがきらめいて見える。雲は少しずつ散ってゆく。旋回する人々と群衆に満ちた広大なホールが見える。場面は次第に明るくなる。シャンデリアの光は力強く燦燦ときらめく。1855年頃の宮廷である」
~モーリス・ラヴェル

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