ジャパンの「孤独な影」

毎朝ラジオからNHK-FMが流れるようにセットしてある。
平日は「クラシック・カフェ」という番組の再放送が決まってかかり、夢うつつの中で音楽を耳にする。面白いのはよく知らない曲が鳴っている時に半睡の状態で誰の曲だろうと想像すること。この寝ぼけた頭で想像することがとても気持ち良く、しかも意外にこの状態の時こそ直感が冴え、結構な確率で当てられるというのが面白いのだ。
今朝は、声楽を伴った、初めて聴く音楽。
でもこのスノッブさ、しかしどこか懐かしさに満ちた楽想。
ベンジャミン・ブリテンかと想像していたら確かにその通りだった。イアン・ボストリッジも独唱で参加しているようで、ラトル&ベルリン・フィルによる「イリュミナシオン」。良い曲だ、そんなことを半覚醒の状態で思った。

そういえば「イリュミナシオン」といえば、20世紀バレエ団の演目で、昔ジョルジュ・ドンをメインにした「若いダンサーへの手紙」というレーザー・ディスクで初めてみた時に衝撃を受けたことを思い出した。同演目の中の「旅」というパフォーマンスで、ピエール・アンリの電子音楽によってドンがモダンというよりほとんど前衛といっていいダンスを披露するそれは僕にとって心から驚きだった。「ボレロ」や「アダージェット」や、そういう妖艶でロマンティックな彼の踊りしか知らなかった僕にとってはともかく新鮮だった。あのLD廃盤になって久しく、未だにDVDあるいはBD化されないが、惜しいことだ。とても良い映像作品なのに。

午前、今こそまたJAPANを聴けという啓示を得た(ような気がした)。
遅れてきたロック・ミュージック・ファンにとってJAPANという存在は近くてとても遠い存在。僕がビートルズの洗礼を受けた当時、既に彼らは空中分解していた。それに、そのグラマラスな容姿やJAPANというバンド名のイメージが邪魔をして、その頃正面から彼らの音楽に対峙することはなかった。
僕がJAPANを意識し、中でもシルヴィアンの音楽性に開眼させられたのは随分後になって・・・、ロバート・フリップとのコラボレーションあたりから。シルヴィアンのコラボ作品のいくつかを聴き、すぐさまJAPANに目覚め、「錻力の太鼓」から順次遡って聴いた。
この暗さ。渋さ。そして不思議な高貴さ。何故あんなに人気を誇ったのか?それほどに日本の聴衆の耳は良いのか?意識は高いのか?そんなことまで考えさせられる他を寄せ付けない音。

Japan:Gentlemen Take Polaroids

Personnel
David Sylvian (vocals, synthesizers, piano, electric guitar)
Mick Karn (fretless bass guitar, oboe, saxophone, recorder)
Steve Jansen (drums, synthesizer, percussion)
Richard Barbieri (synthesizers, sequencer, piano)
Rob Dean (guitar, ebow)

Additional personnel
Ryuichi Sakamoto (synthesizers)
Simon House (violin)
Cyo (vocals)
Barry Guy (double bass)
Andrew Cauthery (oboe)

実にインスト・ナンバー(”The Experience Of Swimming””The Width Of A Room”)が出色!これほどまでに退廃的なニュアンスを醸すバンドの力量はいかばかりか!


2 COMMENTS

みどり

ヴェンゲーロフ前日にJAPANとは。岡本さん、凄いですね!

岡本さんや私が中学の時分から、彼らは日本で騒がれていました。
紹介された当初から、彼ら(特にDavid Sylvian)のルックスによると
思われる爆発的な人気がありましたが、ファンが必ずしも音まで聴いて
いたかどうか…、それくらい人気の広まり方が凄まじかった。

>日本の聴衆の耳は良いのか?意識は高いのか?

ああしたムーヴメントは耳や意識で判断するものではないのかも
しれませんが、それでも聴くことで変わる、理解しようと試みる人達が
現れるのも事実。(Queenだって、日本の健気な聴衆を知らなければ
「手をとりあって」は書かなかったでしょう?)
ただ余りにも波が大きかったので、オンタイムでの情報が生々しく
また痛ましくもありました。

「イリュミナシオン」や82年の「エロス・タナトス」、ニコ動でアップされて
いますね。本当にBD化、希望します。 

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岡本 浩和

>みどり様
おはようございます。
そう、よりによってヴェンゲーロフ前日に、です(笑)。
凄くはないですが・・・。

残念ながら僕はオンタイムでの経験ではないので、中学の時KISSは知っていてもJAPANは多分知らなかったと思います(さすがにQueenの存在は知ってました)。

>ただ余りにも波が大きかったので、オンタイムでの情報が生々しくまた痛ましくもありました。

そうですよね、そういう側面を持ってますよね。特にポピュラー音楽というのは。

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