スッペを聴きながら

昨晩遅くに妻から元気になるような音楽をかけてくれという要望があったが、僕はドビュッシーという気分だったので、あえてお断りした(笑)。デスクワークなどでだいぶお疲れの様子だったから、本当は気合いを入れ直す意味で派手で豪快な音楽をそこそこの音量で耳にすればスカっとしたのだろうな・・・、と後から考えた。申し訳なし。ところで、印象派というだけあってドビュッシーの作品は基本的に輪郭が曖昧(のよう)に聴こえる。地に足の着かないようなフワフワ感が以前はいらいらさせる元だったのだが、年齢を重ねて聴き込むにつれ随分心地良く感じるようになってきた。進歩、深化、かな。

妻が外出しているので、独り大音量で「元気の出る」音楽を聴いている。それも繰り返し・・・。ほとんどライト・クラシックとしてしか捉えていなかったのでこの作曲家のことはほとんど何も知らない。元々がクロアチアの出だったってことすら知らなかった。

よくよく聴くと素敵なメロディの宝庫(軽騎兵などは誰でも知っているだろうが)。それに、パレー&デトロイト響の演奏そのものが優れているのだろう、アンサンブルも引き締まっており、一気に聴衆をスッペの世界に引き込んでくれる。

スッペ&オーベール序曲集
スッペ
・美しきガラテア
・スペードの女王
・軽騎兵
・ウィーンの朝・昼・晩
・ボッカチオ
オーベール
・ブロンズの馬
・フラ・ディアヴォロ
・マサニエッロ
ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団(1959.4&11録音)

パレーによる「スッペ&オーベール集」がデトロイトで録音されていた同じ頃、ニューヨークではマイルス・ディヴィスがかの名盤”Kind Of Blue”を録音していた。おそらく古き良きアメリカの芳香がまだまだ匂い立っているだろう何とチャレンジングで刺激的な時代であることか。「詩人と農夫」を聴きながら・・・、ポエティックな感性を失っていない人々が自然と戯れるその頃の田園風景が眼前に蘇るよう。
人間のエネルギーの源泉は自然、大地と心をひとつにすることにある。都会の喧騒からしばし逃れ、新鮮な水と空気と土に触れたい・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
パレー指揮デトロイト響による1950年代のマーキュリー録音は、
どれも味わいが深く最高ですよね。
マイルス・ディヴィス”Kind Of Blue”もそうですが、
こういう名盤を聴くと、最新録音なんかいらないと、つい思いますね。
演奏も録音も、この50年、果たして進歩なんかしたんでしょうか?

少なくとも今の演奏や録音には、おっしゃるような「芳香」とか、
「含蓄」が少なくなっているような気がします、
ご紹介のようなクラシックのポピュラー名曲で聴きくらべてみても。

・・・・・・きれいな女のひとに会っても、ただきれいだなと思うだけで、
さして気にもとめないことが多いのに、一方、きれいだとも思わないのに、
何か惹きつけられる人がいるだろう。

そして、そのひとがすばらしい女性だったら、つきあっているうちに
内の方から美しさが輝いてくるようなかんじで、ついには、ほんとうに
きれいであるような気さえする。

そんな人は、美しい。・・・・・・(岡本太郎)

そんな人にも、演奏にも録音にも、出会うことが少なくなったのは確かですね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
岡本太郎の言葉いいですね。
50年前のパレーの演奏を聴いて、僕も同じようなことを考えました。

ありがとうございます。

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