ドビュッシーの毒とショーソン

ショーソンの名は「詩曲」という名曲でしかほとんど知らない。もとよりフランスの作曲家については興味が薄かったせいか知識が極端に浅い。
それでも、ドビュッシーの生涯をいろいろと綿密に調べてゆくうちに、ショーソンとドビュッシーは基本的に互いを尊敬し合う間柄(作風は真逆だが)であったにもかかわらず、ある事件をきっかけにして仲違いし、後年ショーソンが水に流して歩み寄ろうとした時も、ドビュッシーは一切それを無視したという話を知り、一度決めたらばこうだという信念というか頑固というか、彼の音楽がフワフワと浮遊感満点であるにもかかわらずよくよく聴くと堅牢で軸足のがっしりしたものである理由がわかったような気がした。
そう、ドビュッシーは一度はまると怖い。ずるずると深みにはまるワーグナー同様「毒」がある。

バッハ以降クラシック音楽愛好家の一般的認識としては、断然ドイツ音楽が主流とみなされる傾向がある。しかし西洋音楽の源がキリスト教にあることを考えると大本はローマン・カトリックの根城であるイタリアだろうし、何と言っても当時のヨーロッパがフランク王国を中心に栄えてきた歴史があるわけだから、ドイツこそが辺境であり、ともかくフランスやイタリアの音楽を徹底的に熟知、愛聴することが実は重要じゃなかろうかとここのところ考えている。

ということで、話を元に戻してショーソン。
かつてチョン・キョンファ盤を採り上げた。残念ながら僕の棚にはこれしかない。一方、妻の棚には2枚ほどその名曲の収録された音盤が眠っていた。順番に聴く。

ショーソン:詩曲作品25
ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
アイズラー・ソロモン指揮RCA交響楽団(1952録音)

ショーソン:詩曲作品25
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
ジャン・マルティノン指揮パリ管弦楽団(1974.7録音)

人それぞれ愛着ある音楽がある。特に若い頃、来る日も来る日も同じ音盤を、というより同じ楽曲を飽きずに繰り返し聴き、すべてが心身に染み付くくらいになっている作品というものがあろう。妻の場合、高校生の時「詩曲」にかぶれたらしい。気が狂ったようにこの音楽に取り憑かれ、ピアノの伴奏を任された時も飛び上がるくらいに喜んだらしいが、何せ原曲が管弦楽伴奏であるゆえ伴奏は随分と退屈だったらしい。この曲はやっぱりオーケストラ版で聴かなきゃ・・・。

僕の好みはハイフェッツよりパールマン。若きパールマンの高貴な艶のある音色が、暗く陰のある情熱が噴出するこの作品の真髄を見事に表現しているから。それにはもちろんマルティノン指揮パリ管の力量も影響しているだろうが。

2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ショーソン「詩曲」の件、同感です。私も熱中した時代がありました。
ご紹介のチョン・キョンファ盤、ハイフェッツ盤、パールマン盤、
みんな見事ですし、
他には、エネスコやオイストラフの録音も素晴らしいです。

このところ、どうしても音楽について楽しく語る気になれません。

CD発売を推進、音楽のデジタル化に大きな功績を残された、
ソニー元社長・会長の大賀典雄氏が亡くなられました。
アナログのLP全盛だったレコード業界からは
「ビジネスを破壊する」と反発されましたが、
親交の深かった世界的指揮者、カラヤンの後ろ盾も得て、
デジタル時代の道を切り開かれました。

21世紀の今、20世紀の進歩の象徴であった、
CDのデジタル技術にも原子力発電にも、疑問符が投げかけられ、
転機を迎えようとしているのは、偶然なのでしょうか。

<孫正義>原発問題について熱く語る
http://www.youtube.com/watch?v=cqiqkr9JKsE&feature=share

これからの時代を切り開く若い人たちに必要なのは、
「怒りのブレイクスルー」による現状打破だと思います。

我こそは、
チョン・キョンファ、ハイフェッツ、パールマン、
エネスコ、オイストラフなど、20世紀の名演奏家を
超える名演奏家だと思う若者よ、出よ!!

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
大賀さん亡くなられましたね。吃驚しました。
つい最近、大賀さんが指揮される予定のコンサートのチラシを見ていたくらいだったので、突然だったのでしょうね。年を経れば仕方のないことですが、経済界でも音楽の世界でも真の意味での重鎮がいなくなてしまうことは寂しいことです。

ところで、さすがは孫さんです。国民が言いたいことを代弁してくれてます。

>これからの時代を切り開く若い人たちに必要なのは、
「怒りのブレイクスルー」による現状打破だと思います。

同感です。

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