アタッカ・カルテット日本デビュー・リサイタル

昨年11月の「愛知とし子リサイタル」の際に知遇を得、その後何度か会食などでご一緒させていただいているK氏が慶応会(徳永慶子さんを応援する会)の幹事だということで、アタッカ・カルテットの日本デビュー・リサイタルの情報をいただき、行ってきた。サントリーホールのブルーローズ(いわゆる小ホール)は確か初めてだと記憶するが、室内楽に相応の席数400弱という会場は開場直後からお客様の熱気と期待感に溢れる。しかも、ちょうど大阪で行われた「第7回大阪国際室内楽コンクール」で見事優勝の栄冠を勝ちとったということだから、期待が一層膨らむ。
かのコンクールの審査委員長であられた堤剛氏も会場に見えられており、ちょうど僕の斜め前の席に座っておられた。K氏が休憩時に感想を求めたところ、堤先生曰く『ちょっと疲れてるな』とのこと。出来不出来、絶好調不調というのはどんな場合でもついてまわるもの。完璧を求めるのではなくそういうことも含めてライヴを聴く醍醐味だと思うので、僕にとってはまったく気にならないことだけれど。

2011年5月28日(土)19:00開演
サントリーホール ブルーローズ
アタッカ・カルテット日本デビュー・リサイタル
・ハイドン:弦楽四重奏曲ヘ短調作品20-5, Hob.Ⅲ:35
・ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第4番ホ短調作品44-2
アンコール~
・バーバー:アダージョ~弦楽四重奏曲第1番
・ドヴォルザーク:第4楽章~弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」
エイミー・シュローダー(ヴァイオリン)
徳永慶子(ヴァイオリン)
ルーク・フレミング(ヴィオラ)
アンドリュー・イー(チェロ)

まずはハイドン。高音部を担う女性陣と低声部を担う男性陣の音が極めて分離していたように聴こえた。作曲者の作風なのか意図なのか、あるいは演奏者側の問題なのか、それは僕には判断できなかったが・・・。いかにもハイドンらしい名作だが、どうも座り心地が悪いような、一体感の薄い印象を受けた。(確かに)「お疲れかな?」と心配もしたが、その後の様子から、それは杞憂に終わったよう。
続いてヤナーチェク。この20世紀の傑作を、アタッカの4人はどう料理するのか、興味津々。果たして、とても刺激的で、老作曲家の一方的でエゴイスティックな愛を十分に感じさせてくれるエキサイティングな演奏。特に、ヴィオラの動きが曲想にぴったりですこぶる素晴らしかったのだが、終了後の打ち上げ時にその理由がわかった。ヴィオラのフレミング氏は大のロック好きらしい。QueenやLed Zeppelinや、もちろんThe Beatlesも(ただし、King Crimsonを知らなかったのは意外、・・・これはもぐりかも・・・笑)。あと、スティーブ・ライヒなどのミニマルについても相当思い入れがあるようで。ヤナーチェクのロック音楽のような戦闘的な躍動感と自身の「息」、「志向」がぴったりだと作品に同化してしまうのかも。
4人は尻上がりに調子を上げてゆく。
休憩を挟み、今話題の(笑)メンデルスゾーン。
ハイドンの時とはまるで別の団体なのではないかと思われるほどの一体感。すべての声部が溶け合い、見事に調和する。この作品はフェリックスがセシルとの新婚旅行の際に書かれた名作だが、開放的な幸福感と共に、何ともいえない暗い不安感までもが聴いてとれる。それもそのはず。フェリックスにとって結婚は、永遠のソウルメイトであるファニーとの別れという意味合いも含んでいたのだから。確かに姉のファニーも弟の結婚に嫉妬する(セシルを紹介することなく婚約、結婚したらしい。当時の姉弟の手紙を読むと本当に興味深い)。
この作品は、言ってみればフェリックスが姉の力を借りることなく真に自らの力のみで書き上げたマスターピースであることがよくわかった。

そして・・・、アンコールのバーバー!かつて宇宿允人氏がアンコールにこの作品をとりあげた時と同じく胸を締め付けられた。主題が各楽器によって繰り返されクライマックスにおいて「ひとつになる」様。視覚と聴覚が刺激され、音楽を聴く喜びが絶頂に達する。ドヴォルザークも然り。これほど歓喜に満ちた音楽があったろうか。


5 COMMENTS

雅之

こんにちは。

今回も、よいコンサートに行かれて羨ましいです。
それに、サントリーは小ホールもいいですよね。

さて、行ってもいないコンサートについて
コメントすることは基本的に無理なので、
代わりに、今回は原発事故後、温めていた企画提案を。

消防法の絡み等があり場所を選ぶかとは思いますが、
バロックや古典派やロマン派の時代を再現し、
キャンドルの灯りだけでコンサートを開くっていうのはどうでしょう?
空調も無しです。

たとえば
瑞浪芸術館
http://www4.ocn.ne.jp/~kayabuki/
みたいな小さい会場をイメージしています。

これ、絶対に誰かが考えつくと思うので、
早く企画・実行した人の勝ちではないでしょうか。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
これは素晴らしく興味深い企画です!
一番の問題はおっしゃるとおり場所でしょうね。
考えてみます。
ありがとうございます。

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » アタッカ・カルテットのメンデルスゾーンを聴く

[…] 久しぶりにメンデルスゾーンのカルテットを聴きたくなって、昨年2度ほど生演奏に触れたアタッカ・カルテットのCDを取り出した。そういえば最初のサントリーホールでのリサイタルの折に購入したきりになっていたものだ(ほとんど未聴のまま棚に眠る音盤がいくつもある・・・苦笑)。ヤナーチェクの第2四重奏曲とのカップリング。あくまで独断と偏見で述べさせていただくと、(漠然とした言い方が許されるのなら)彼らの演奏には「男性的なもの」と「女性的なもの」が混在しており、実にそれらが上手く調和した時に特別な名演奏が生まれる。そしてどちらかと言うと女性2人が「男性性」が強く、男性奏者2人が「女性性」が強い、そんなことを感じた過去2回のコンサートだった。ということは内面的にも外面的にも非常にバランスのとれた(両性具有?)カルテットだということだ(本当か?笑)。 […]

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