18人の音楽家のための音楽

reich_music_for_18_musicians_ensemble_modern.jpg大学の授業では、毎回学生にテキストの音読をしてもらう。そして、大事なところにはマーカーで下線を引くよう指示する。皆、読まれている個所を真面目に聴く。

明らかに「音読」には相応の効果がある様に思う。目から文字を追うだけでなく、耳から「音」として言葉を捉えるようにすることで、一層記憶に定着するようだ。物事の習得においては、視覚と聴覚の両方を上手く使うことが重要なのだろう。

それにしても「読まない」学生が多い。大学1年生には、日本語理解力を磨くために毎日の新聞の精読と、月に最低5冊は教科書以外の本を読めと薦める(必要なのは1年生に限ったことではないが)。コミュニケーションの基本は「聴くこと」であるが、一方でよりわかりやすい「発信」を心掛けることも大切だ。話をわかりやすくするためには論理立てて結論と理由を簡潔に述べねばならない。だらだらと枝葉の話に終始してしまうと、論点がぼやけてしまい、結局何が言いたいのかがわからなくなる。

プレゼンテーションなどは訓練によってどうにでもなるわけだから、時間があるうちにエクササイズをとことんすればいいのである。そして、「備えあれば憂いなし」という言葉通り、人より早く、そして人より多く繰り返し反復することだ。「人間力」ブラッシュアップについても然り。日々意識して、我に入るのを避け、人を思い遣る癖をつけていく、そういうことが大事だ。

「ストレンジ・デイズ」の今月号を立ち読みした。フェイセズの特集もそうだが、それより『ジャズ≧ロック:ジャズ・ロック50』という記事に思わず魅かれた。なるほど、ジャズがロックに与えた影響、あるいはロックがジャズに与えた影響という観点でポピュラー・シーンを俯瞰してみるのは面白かろう。途轍もなく奥深く、何か新しい発見がありそうだ(このあたりは研究の価値大いにあり。ただし、そのための時間と精神的余裕を十分確保せねばならない)。ここのところ極めてクロス・オーヴァー気味に音楽を聴いている。古典派クラシック音楽を耳にしながら、一方でプログレやフリー・ジャズ、ボサノバ、あるいはミニマル・ミュージックなど、何でもござれ。とにかくいろんなものを享受したい、そんな欲望に駆られる。学生諸君に言う。「とにかくいろいろな本を読め」と。そして、付け加えるなら、「若いうちにいろいろな音楽を聴け」と。

ライヒ:18人の音楽家のための音楽
アンサンブル・モデルン

一応、クラシック音楽、それも現代音楽の範疇に入るスティーブ・ライヒだが、その音楽はまさにプログレッシブであり、ジャジーであり、繰り返し聴くごとに驚きの発見がある。そして、この単調な音の繰り返しを見事に表現するアンサンブル・モデルンの腕にも驚愕の想いが募る。ちなみに通常のスピーカーでの再生より、この手の音楽はヘッドホンで集中して聴くのが良い。至る所に複数の自身の像が見える鏡の中の世界に入り込んだかのように、頭の中がショートする。不思議な恍惚感・・・。


6 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介の曲、私は、一応別な演奏のCDを持っています。
この辺のミニマム・ミュージックって、ほとんどガムランなどの民族音楽のに近付いてしていますよね。
http://www.youtube.com/watch?v=fSvWi5RiBhU
不思議なものですよね。西洋音楽の進歩の行きついた果ては、先祖がえりになるなんて・・・。
西洋音楽にアフリカの音楽が与えた影響についてもいろいろ気になっており(勿論、ジャズでの文脈が中心なのですが)、例のサイトにも大変教わるところが多く、参考にさせていただきながら、CDを購入して聴いているところです。
※サイトを参考に、買って聴いたCD
LIGETI/REICH
AFRICAN RYTHMS
http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/oyaji/oyaji_56.htm#africa
ところで、サッカーの日本代表、監督も選手も、あのような精神状態で、遠い南アフリカの地で勝てるのでしょうか? システムだの何だの、頭でっかちのサッカー理論はもういいから、ガムランやアフリカ民族音楽を聴いてトリップし、逞しい野生本能を目覚めさせろ!!とアドバイスしたいです(音楽だったら、ドーピング検査には引っ掛らないですもんね・・・笑)。

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雅之

>至る所に複数の自身の像が見える鏡の中の世界に入り込んだかのように、頭の中がショートする。不思議な恍惚感・・・。
あ、それと、それはまさしく、量子力学の世界を垣間見ておられます。
量子力学の多世界解釈では、岡本さんは何億人以上も存在するはずですから・・・(笑)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>不思議なものですよね。西洋音楽の進歩の行きついた果ては、先祖がえりになるなんて・・・。
ほんとですね。音楽ってやっぱり理論理屈じゃなくて自然(神)から与えられた感覚的なものなんでしょうね。面白いですね。
ご紹介の「アフリカン・リズム」という音盤は未聴ですが、こちらも興味深いですね。聴いてみたいです。
>頭でっかちのサッカー理論はもういいから、ガムランやアフリカ民族音楽を聴いてトリップし、逞しい野生本能を目覚めさせろ!!とアドバイスしたいです
おっしゃる通りです!ところで、昨日、大学で休憩時間中にある先生が、トルシエ監督に戻ってきてもらった方が良いなんてことを言ってました。極めて綿密な管理主義ということで(僕はよく知りません)、日本人のメンタリティにはぴったりだとか・・・。そうなんですかね?
>量子力学の世界を垣間見ておられます。
そうなんですか!量子力学の世界についてはいずれまたお会いした時にご教示お願いします。

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雅之

>トルシエ監督に戻ってきてもらった方が良いなんてことを言ってました。極めて綿密な管理主義ということで
因みに、ネットで「トルシエ 指揮者」をキーワードに検索しますと、次のような興味深い、少し古い記述のサイトがありました。
http://www.geocities.co.jp/Athlete-Samos/7071/2003612.htm
トルシエの日本代表監督時代の戦術「フラット3」についての、やはり古い記述のサイト
http://mdate.hp.infoseek.co.jp/research/research25-01.htm
と合わせ、ご参考までにご覧ください。
いずれ、この件、今回のワールドカップの結果と合わせ、コメント欄で、私見を述べ議論を深めたいと考えております。よろしくお願いします。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
なるほど、ご紹介いただいたサイト、勉強になります。
ありがとうございます。
コメント欄と言わず、いずれお会いした時にでもお話を伺いたいところです。

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