チェリビダッケのワーグナー

ここのところ自分の状態が良いのか、ニュートラルに留まることが随分楽にできるようになった。人の見方、考え方は本当に十人十色で、「正しい」ことが一つだということは決してない。そう、人間の作り出す世界で「絶対のもの」はない。人間関係で問題が生じた場合、じっくりと双方の話に耳を傾けてみるとそのことは非常によくわかる。同じ事象を見ていながら感じ方や捉え方がどれだけ千差万別か。多分、どちらも「正しい」。だから、良し悪し、好き嫌いの判断をせず、ただ「そうなんだ」とそのままを客観的に受け容れてしまう、これが「上手く生きてゆく」ための鉄則なんだと思う。

日中が1年で最も短い冬至の日。合気道の稽古、ミーティング、穴八幡宮へのお詣り、そして打ち合わせ、さらに大学講義と忙しい一日だったが、全く疲れることなく軽快に足が動く。週3回の合気道の効果効能というのは予想以上に大きいかも。その日は大抵午前4時半に起床することを強いているし、何より武道の基礎鍛錬に過ぎないながら十分に身体を動かすので汗もかくというのが良い。この爽快感が癖になる。

そういえば、もうすぐクリスマス。先の大岡昇平氏のエッセイの影響もあるのか、どうも今年はワーグナーが聴きたくなる。夜遅くに楽劇はうるさくていけないのでついつい管弦楽曲集を引っ張り出してくる。今日のところはチェリビダッケ。

ワーグナー:管弦楽曲集
・楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
・ジークフリート牧歌
・楽劇「神々の黄昏」~ジークフリートの葬送行進曲
・歌劇「タンホイザー」序曲
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(1993.2.3&4Live)

晩年のチェリビダッケの演奏はどれも地に足が着いてびくともしない安定感に富む。確かに音盤で聴いている限りでは、あまりに呼吸が深過ぎてついていけなくなる瞬間があるのは確か。何度も繰り返すがチェリビダッケはその時その場限りで享受する絶対的演奏なのだろう。
「マイスタージンガー」や「タンホイザー」はドイツ精神そのものである「不動」の表現。表面的にはクナッパーツブッシュのそれに近いものがあるように思えるが、いやいや実に「計算され尽くしている」点がチェリらしいところ。こういう演奏を聴くと、「弱みを見せろ!」と叫びたくなる(笑)。そして「葬送行進曲」の微動だにしない、死というものを正面から受け止め、肯定的に明るく笑い飛ばすようなパフォーマンス。白眉は「ジークフリート牧歌」か・・・、いや、これはさぞかし実演で聴いたならば卒倒ものの演奏だったろうと想像できる。

さて、疲れたから本日はこれくらいで。
ゆっくり柚子風呂に入って、瞑想でもしよう。おやすみ・・・。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

相変わらず、不協和音(=現代音楽的?)、また、岡本さん的思考に倣った分裂的、コラージュ的コメント?で、益々ご迷惑をおかけしております雅之でございます。

>考え方は本当に十人十色

ですから、クラシック、いや音楽というジャンルでさえも、もうどうでもよくなってきました。

それと、特にクラシック音楽については、新鮮な感動を蘇らせるための強烈な渇望感を欲しているんです。だからコメントでも、あえて極力遠ざかっています。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」をまだ観ていなかったので、
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0-%E2%80%95-%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA%EF%BD%A5%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-DVD-%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/B00005Y6Q2/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1324594789&sr=8-1
を、年末年始に子供と一緒に鑑賞してみようと計画しております。

ワーグナーの『ニーベルングの指環』と、J・R・R・トールキンの『指輪物語』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8C%87%E8%BC%AA%E7%89%A9%E8%AA%9E
との関係性について前から気になっていましたので、この機会にじっくり考察してみたいです。

(『ロード・オブ・ザ・リング』より)

・・・・・・その指輪を捨てなければ、この世は闇となる・・・・・・

ひとつの指輪はすべてを統べ、
ひとつの指輪はすべてを見つけ、
ひとつの指輪はすべてを捕らえ、
暗闇の中につなぎとめる。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
特に最近はブログを書く際、何も考えずに赴くままに書くようにしております。
よって以前以上に分裂的なものになっておりますが、しばらくはこんな感じが続くと思います。
雅之さんのコメントも「そのつもり」(笑)で読んでおり、
ほぼ毎朝の細やかなプレゼントという意味合いで受け取らせていただいております。
ありがとうございます。

「ロード・オブ・ザ・リング」はだいぶ前にDVDセットを購入し、一度観たきりです。
ワーグナーとトールキンとの関係性を探りながら観るというのは壮大で興味深い計画ですね。
僕ももう一度じっくりと観てみようと思いました。

>特にクラシック音楽については、新鮮な感動を蘇らせるための強烈な渇望感を欲しているんです。

よくわかります。そういう意味では本当に「どうでも良く」なってきてますね。

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中井恵子

こんばんは。

何故かまたまた、来てしまいました。

少し前にドナルド・キーン氏のテレビでワーグナーのオペラの話があり、急に聴きたくなり探しておりました。
オペラはあまり興味がなかったのですが、グールドがピアノでマイスタージンガーを演奏したり、ジークフリート牧歌を指揮していたのでこれなら何とかわたくしのつたない耳でも聴くことができそうに思いたどり着いたらここに来ておりました(笑)
岡本様のご推薦?でチェリビダッケに決まりです!!
かさねがさね、お世話になりました。<感謝>

返信する
岡本 浩和

>中井恵子様
こんばんは。
ご訪問いつでも歓迎です。

チェリビダッケは、特に晩年のものは超ユックリズムですが、聴いてみていただいてご感想をぜひお聞かせください。お気に召さない場合はまた別のものを推薦させていただきます。
あ、というかこのブログで「ワーグナー」とタグ付されているものは基本的にすべておすすめなのですが・・・(笑)

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