メンデルスゾーン発見!

ようやく大学の前期講義が終了し、落ち着いたので、次なるプロジェクトに向けて準備に本腰を入れる。まずはとある研修の講義ノートを完成させ、これから1ヶ月間は妻にも協力してもらいながらパフォーマンスの自己鍛錬。気合いでがんばる!

週末から暑さが戻るという話だったが、そうでもない。相変わらず涼しいという感じ。過ごしやすくて良いのだが、それにしても7月だというのに・・・。

メンデルスゾーンの「厳格な変奏曲」や「スコッチ・シンフォニー」を聴いていて、心の奥底にまで響く哀愁感が何とも堪らない。若い頃、彼の作品を耳にしてこんなにも心が震えるような経験をしただろうか・・・。どちらかというと、その幸福感に満ちた音調と均整のとれた造形感覚に特徴を見出し、あくまで軽く聴いてきたのに・・・。

それはやっぱり、ファニーの作品を知り、彼らの生涯について学習したお蔭なのだろう。知識に左右されてはいけないが、音楽を聴くうえで背景を知っていることは僕にとって重要なポイント。モーツァルトの再来と言われた神童フェリックス・メンデルスゾーンはやっぱり天才。何せバッハ復興に一役どころか二役も三役も買っているし、何より「指揮者」という職業を確立したという意味で、リスト同様クラシック音楽の世界においてなくてはならない存在なのだから。

メンデルスゾーン・ディスカバリーズ
・交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」(1842年ロンドン稿、トーマス・シュミット=ベステ校訂版)
・「スコットランド」交響曲冒頭のスケッチ(1829年)(オーケストレーション:クリスティアン・ヴォス)
・ピアノ協奏曲第3番ホ短調(2006年マルチェロ・ブファリーニ補完版)
・序曲「ヘブリディーズ」諸島作品26(1830年ローマ稿、クリストファー・ホグウッド校訂版)
ロベルト・プロッセダ(ピアノ)
リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

興味深いのが「ヘブリディーズ諸島」の1830年稿。メンデルスゾーンの作品は基本的に洗練されているのだが、荒々しさと若々しさが感じ取れる作風であるところが面白い。ちょうどブルックナーの初期稿と完成稿の相違のように、彼の作品の多くが推敲に推敲を重ねた結果のものであることがわかる。生まれながらに何でもできた神童と理解されることが多いが、イチローなどと同様に99%の努力があってのものなのだろう。
しかし、こういう作品にファニーの意図はどれくらい反映されているのだろうか?興味は尽きない・・・。


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

そうそう、ご紹介のCDは私も聴きましたが抜群に面白いですね。シューマンのマーラー版といい、このところシャイーはいい仕事をしています。

一連のメンデルスゾーン再発見の件、「固定観念」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E8%A6%B3%E5%BF%B5
がどんなに危険かということを思い知らされます。

少なくとも私達現代人は、自分の持つ信念を、それはあくまでも「固定観念」のひとつだと自覚しておくことも必須だと思いました。

私も今月、それまで持ち続けた「固定観念」を、ある本によって打ち砕かれました。
SACD信仰や録音全般についての価値観という、「固定観念」を・・・。

『サウンド・クリエイターのための、最新版デジタル・オーディオの全知識』柿崎 景二 (著) 白夜書房
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%80%81%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%89%88%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%81%AE%E5%85%A8%E7%9F%A5%E8%AD%98-%E6%9F%BF%E5%B4%8E-%E6%99%AF%E4%BA%8C/dp/4861917166/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1311414012&sr=1-1
対談 大瀧詠一×柿崎景二 同書170~206ページより

大瀧 ・・・大体ね、ステレオという方式自体もそんなに好きじゃないんですね。圧倒的にモノが大好きなんです。グチャっと混ざっている感じね。そこに熱を感じるんですよ。分離がいいと、何か、寒いというか、熱気が薄いというかね。
 後は、流麗な音や豪華な音は、情報量は多いことは確かなんだけど、でもそれは僕には過ぎたるは及ばざるがごとしのように、聴こえてしまうんですね。余計な装飾が、肝のところをじゃましているような気がするんです。肝がすごくストレートに、直接的に伝わるのが僕にとって心地のいい音なんです。
 だから、3ポイント主義でもいいけれども、だったら、MP3が一番いいのではないかという気もしないのでもないんです、極論ですけどね。特徴の3ポイントを強力にプッシュ。でも、MP3のようにあそこまで強調されると、少し情報が抜けすぎですけど、方向的としてはあのようなもの、と言っても間違いではないです。あくまでも、大きく言ってしまえば、ですよ。DSD派の柿ちゃんには申し訳ないけど。
柿崎 いえいえ。
(中略)
大瀧 ねぇ。すべてがみんな偶然の出会いなんだけど、ついに出会ったんですね。しかもロンバケ30周年、自分でマスタリングをやるのはこれが最後のシリーズとなるのですが、満を持してこの時期に、待っていたように出てきてくれたんです、夢のオーディオ。35Hからの長い旅が、ここで完璧に終わりました。
 DSDでADして、そのデジタルアウトをSBMダイレクトでPCM音源に落としているわけですが、全然、僕にとってはダウングレードした感じはないわけです。むしろDSDの生の音よりも、僕の好みの音になっている。
オーディオがよくなると情報量も多くなって、濃密になる。映画でいうとシネラマですね。画面が広すぎて目が疲れる。情報量が多くても、目が疲れちゃねぇ。スタンダード画面では物足りなくなると、もう少し広げて。
柿崎 では、ビスタですね。
大瀧 ビスタなんだね。DSDをSBMダイレクトで間引いたものがビスタと。とすると、これはDSDのMP3なんですね。
柿崎 そうですね。情報を圧縮するという感じですね。
大瀧 そう。面白いね。今回は、だから、DSDのMP3をCD化したことになりますね。
柿崎 SACDに行かれないというのは、情報量が多すぎると。
大瀧 僕のサウンドの基本はロックンロールのフォーリズムなんですね。4人を70ミリで見せられても、4人は4人なんでね。でも、単に4人ならスタンダード画面でいいんですが、僕のサウンドは楽器の数が多いので、だからビスタだと。クラシックやオペラなどの、登場人物が多くて、音数の多いものなら、70ミリのシネラマ、つまりはDSDのように豊かな音がいいと思うけど、僕のサウンドはビスタで充分ですね。
柿崎 情報量を減らしたいのですね。(以下略)

この本で、大瀧さんはSACDというCDより上位フォーマットの必要性を否定されているわけです。このことは、私にとっては自分の発想に、コペルニクス的転回を促しました。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>、自分の持つ信念を、それはあくまでも「固定観念」のひとつだと自覚しておくことも必須だと思いました。

「固定観念」については、最近身の回りで様々な経験を通して怖いなぁと実感していたところですので、まさにグッドタイミングの話題です。我々は物事をフィルターを通してしか見れていないということを自覚することって重要ですね。こういう気付きを得られたのも、ひとえにメンデルスゾーンと雅之さんのお陰です。ありがとうございます。

ご紹介の書籍面白そうですね。大瀧詠一らしい発想のようですね。しかし、「ロンバケ」の30周年記念盤が出ているとは知りませんでした。僕が持っているのは初期盤と20周年記念盤です。聴き比べしなきゃですね!

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む