だいぶ前に購入し、1度か2度聴いたきり棚の奥に眠っていた音盤。
第2次世界大戦の際、ナチスから逃れてアメリカに亡命した音楽家は星の数ほどあるようだが、昨日バルトークの音楽を聴きながら、彼の地で祖国を想い作曲の筆を進める創作者の心持を想像すると、居ても立ってもいられなくなるような情感に襲われた。当時を生きた人からすればホロコーストを含め大戦自体がとんでもない出来事であることは間違いないのだろうが、歴史を長い目で俯瞰してみるとその事実があっての今であり、やっぱりどんなことも無駄にはならない、否、無駄にしてはいけない、「反省」という名のもとにどんな時も愛を持って生きてゆくことが大切なんだということをあらためて知った。
ノイマンが指揮したボフスラフ・マルチヌーの第3交響曲のラルゴを聴いて涙し、終楽章を耳にして「束の間の喜び」を感じる。何て素敵な音楽なのだろう。大戦の最中に書かれた作品らしく、慟哭の叫びあり、故国を想っての安堵のフィーリングも刻印される。バルトークとは違った、もちろんショスタコーヴィチの苦悩とも違う、真正面からの正直な「想念」が反映されるマルチヌーの音楽。いやこれは大変な労作を随分放ったらかしにしてしまっていたものだと反省・・・。
マルチヌー:
・交響曲第3番
・交響曲第6番「交響的幻想曲」
ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
早くも8月が終わろうとしている。怒涛のような1ヶ月だったが、慌てず騒がずひとつひとつ事を進めてゆくことで万事が安泰、なるようになってゆくことが身を持ってわかる。
“Every experience is a wonderful gift.(すべての体験は素晴らしい贈物である)”
マルチヌーが傑作を世に送り出すことができたのは、第2次大戦という悲劇があり、そしてナチス・ドイツという悪魔のような存在があったお蔭と考えられなくもない。もっとも当人にしてみれば思い出したくもないだろうおぞましい話なのだけれど・・・。
「災い転じて福来たる」、未だに落とした免許証は戻ってこないが、さて、この事実にも何か意味があるのだろうか?特に自動車を運転しなければならない状況にないので再発行についてはもう少し待ってみようと考えている。
第6交響曲も実に見事。第1楽章を聴いていて、どういうわけか坂本九の「上を向いて歩こう」を思い出した。希望の音楽なのかも・・・。